第五話 迷宮での戦い
「多分死んでないとは思うけど、あいつらしばらくは動けないんじゃないかしら! かなりのでぶだったから、歩けなさそうだったわね!」
嬉しそうにベルが言う。正直魔神よりエルフの方が恐ろしい! マキシマムだとあんなに太るのか……
ゴゴゴゴゴゴッ!!
辺りの石像がゆっくりと動き始める。
「魔神の置き土産か。何体居るんだ? ベル! 分子分解頼む!」
僕は、ベルと手を繋ぐ。ベルが僕の手からごいごい魔力を吸う。
「らじゃー! 分子分解!!」
ベルの魔法が一番近くにいた石像の足下に命中する。大きな穴が空き、石像は地面に吸いこまれる。
「もう一発! 分子分解!」
次は天井に当たり、大量の塩が穴を埋める。ん、何まどるっこしい事してんだ?
「おい! 直接分解しろよ!」
「無理、ベルの分子分解は命が無いものにしか、通じないのかしら!」
「えっ!! どゆこと?」
僕はベルに問いかける。
「言ってなかったかしら? ベルが塩に出来るのは無生物だけよ!」
何じゃそりゃ! こけおどしか!
「じゃ、他に攻撃魔法は?」
「そんなものもってないかしら! エルフは平和を愛するのよ!」
ベルが胸を張る。お腹がプルンと揺れる。
ぺしん!
「うそつけー!」
ついつい、我慢できず、ベルの頭をはたく。いかん、遊んでる場合じゃない。石像、多分ゴーレムが僕達の方に埋め尽くすほど向かって来ている。動きが緩慢なのがせめてもの救いだ。
「ということは、僕達は攻撃手段なく……」
「沢山のゴーレムに囲まれてるかしら!」
僕の言葉にベルが被せる。
「じゃあ、とっとと穴掘って埋めるかしら!」
考える限り、それしか思いつかない。
「グラビティ・ゼロ!」
僕の声が通路にこだまする。僕は重力を操作し、ゴーレムの合間を走る。ゴーレムは歩くのは遅いが、戦闘になるとかなり素早い。出来るだけ距離を取る。
「分子分解!」
僕の背でベルが叫ぶ。魔神の千切れたマントを裂いて作った紐で、ベルは僕の背中にたすきがけでくくりつけてる。右手で魔法を放ち、左手で魔力を吸っている。直に僕の左おっぱいから……
「こら! 揉むなやベル! 振り落とすぞ」
僕は怒鳴る。
「じゃあ、がしがし魔力よこすのかしら。減ってきたから絞り出してんのよ。牛の乳搾りみたいかしら」
ベルも叫ぶ!
むかつくことに楽しそうだ。
こっちは神経すり減らしてるのに……
必要最低限のゴーレムを穴に落としながら出口へと向かう。地上に出たらこっちのもんだ。
けど、僕は立ち止まる。ゴーレム達が横1列の隊列を通路いっぱいに組んでる。その後ろにも密集している。
「かなり減らさないと、進めないな……」
「やるしかないかしら……」
ベルが神妙な顔をしながら、両手で僕の乳を生で揉む。
「ダブルで生乳揉むなや! こらぁ!」
「ダブルエナジーチャージよ! 遊んでるのじゃないかしら」
ゴーレムを穴に落として、ボロくて崩れて這い上がれない奴は放置、確認して元気な奴は埋める。それを延々と繰り返す。穴を掘った所には次は掘れないし、穴に自分たちも落ちないようにしないと。
延々と同じ事を繰り返していく。僕にはオートヒールがあるが、頭を潰されて無事な自信はないし、ベルはどこを殴られても一撃でリタイアだろう。一回のミスが命取りになる。
分子分解の魔法は、かなりのマナを消費する。今はもう僕のマナはほぼ尽きて、回復していくのをベルが絞りとって溜まったら魔法を打てる状態だ。がんがん頭が痛い。ベルも超魔法の連打で頭痛を訴えてる。
ゴーレムの攻撃を避けながら、1体、また1体と再起不能にしていく。
どれだけ時間が経ったのだろう。僕はずっと動き続けている。徐々にスタミナが削られていく。
地味な作業を延々と繰り返す。頭も体も痛い。ベルも話さなくなった。
けど、僕は諦めない!
最後の瞬間まで出来ることをして足掻き続けるのみ!
ついに足がもつれ、ゴーレムのパンチ受けてしまう。
壁!
やばい!
咄嗟に身を翻し、ベルを守り、したたかに壁に、衝突する。
「グゥッ!」
変な声が漏れる、
油断した。
骨も幾つかもっていかれた。
立ち上がれない!
「マリー! マリー!」
ベルが紐を取って僕を揺する。
ゆらっと、ゴーレム達が寄ってくる。
回復が間に合わない!
「ダメーーッ!!」
ベルが僕の前に立ち塞がる!
動け!
動け僕の体!
一番近づいたゴーレムが僕らに手を振り上げる!
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