第二十四話 肥満の世界
「あーあ……せっかくのダイエットが台無しかしら」
僕の口から手を離し、ベルが口を尖らせる。振り返ると、馴染み深いぽっちゃりスタイルに戻ってる。太ったのにも関わらず、相変わらず緑のワンピースを着ている。どういう素材なんだ? けど、正直、超絶美少女よりこっちの方が安心する。
バシュッ!
なんか破裂音がする。
音のした方を見ると、モモさんが破裂してた。漆黒の鎧は全て弾き飛ばされて、ショーツも引きちぎれてる。なんとかブラジャーは生き残っている。鎧の下の和服がはだけ凄まじい姿になっている。二重あごに突き出したお腹、もはやどこからどう見ても力士にしか見えない。お股は手で隠している。
バシュッ!!
また新たな破裂音。
アナだ。下半身をまとったものはすべて弾け飛び、上半身は鎖かたびらが背中の継ぎ目から割れて、脱皮しかけたセミみたいになっている。それが食い込んで取れないみたいでこっちにでかいお尻を向けてジタバタしてる。
ブシュッ! ビリビリ!
破裂音のあとに破ける音、サリーが一番悲惨だった。服は背中がちぎれたブラジャーがなんとか胸の先だけを隠して、あとは、はぜて破れて、ほぼ全裸だ。顔を覆って女の子座りをしていてセイウチみたいな豊満な肉体を晒している。お腹のお肉でなんとか、お股は隠れている。
ほぼ裸の美少女たちが身の回りにいるのに全く興奮しない。なんて言うか失礼かもしれないが、動物を見ているようだ。
僕はというと、ブラジャーとショーツのみの下着姿だ。男の子になったときの為に伸縮性のいいのを買ってて良かった。もっとも、ほぼちぎれかけて虫の息ではあるが。
太って飛べなくなったワイバーンが地面をゴロゴロしている。見渡す限り生えてる木はずんぐりむっくりだ。なんか大きな実がなってたりもする。太った鳥が歩いている。岩肌に居るトカゲも太り過ぎて歩けなくなっている。太った兎がのそのそ歩いている。虫でさえパツパツになってて地面に転がっている。
ぽん! ぽん!
僕は腹鼓を打ち座る。
「満腹だー!」
今の気分が声になる。僕は満たされて何もしたくなくなり、ぐでーっと横になる。見渡す限り全てのものがぽっちゃりだ。美味しそう。
全ての生き物が満腹でぽっちゃりで争い事のない世界。
まさにピースフル・ワールド!
ベルの生み出した、この世の地獄だ!
「痛いー! 痛い! 誰か脱がしてくれ!」
アナはお尻を揺らしてジタバタを継続してる。悪いけど、ブタみたいだ。
「エルフ! 絶対コロス!」
力士もといモモさんは、右手でお股を隠して左手に剣を持つ。
本気でベルを殺る気だ。
「グスッ。グスッ……」
サリーはすすり泣いている。
今まで、ここまで収拾不可能な状態があっただろうか?
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