第二十三話 極限魔法『平和な世界(ピースフルワールド)』
「クェーーッ! クェ! クェ!」
僕は宝の山もといワイバーンを見上げる。なんか、鶏の鳴き声を低くしたような鳴き声だ。多分上位種なので、1匹あたり大金貨1枚は下らないだろう。30匹位はいる。ありがたい。これで美味しいご飯を食べれる。
それらが、火とか氷とか雷とか吐いたりしている。僕らを祝っている花火にしか見えない。ワイバーンたちはどんどん近づいてくる。おおけっこうでかい。いい金になりそうだ。
僕は思いついたことを試してみる。
「アナ、体が軽くなったと感じる極限で飛べ!」
アナの背に触れる。
「グラビティ・ゼロ!」
アナを重力から解放する。
「今だ。飛べ! 発射!!」
アナは地面を蹴って飛び上がり、ワイバーンを1匹を四散させて、どっかに飛んで行った。まあ、アナだし死にはしないだろう。
「次! 牛男! 発射!!」
牛男も1匹を貫通しどっかに消えていった。
「次は私だな!」
モモさん! 君も飛ぶつもりなのか?
「モモさん! 発射!!」
さすがモモさん。剣と盾をうまく使い、ワイバーンで位置調整しながら倒し、5匹くらい墜落させて、地上に戻ってくる。
「死ぬかと思ったじゃないか! 楽しいな、もう一回!」
アナが戻ってくる。思った通り無傷だ。しかも楽しかつたのか?
「アナ発射! アゲイン!」
飛びたったアナは今度は槍を使って上手く数匹打ち落としてくる。
さすが脳筋。センス抜群だ。
「お金! お金!」
サリーは黙々とワイバーンを魔法で出した岩で墜落させて、地上におちてきたのを、また魔法の岩で潰していってる。えげつない。
「つまんないのかしら!」
ベルが拗ねたように呟く。
「とっておきの新技、披露するかしら」
ぶわさっと、ツインドリルを掻き上げて、ぺったんこの胸を張る。正直かわいい。
けど、そこはかとなく嫌な予感しかしない……
「ワイバーンたち! みんな地面に墜ちるのかしら!」
ベルは僕の背にのり、僕の封魔のロザリオを取り、左手で僕の口をふさぐ。
「マリー! お前の魔力全てもらうわよ!」
ベルにどんどん口から手で魔力を吸い取られる。
「合体魔法、グラトニー改め!」
ベルは力を溜めて、右手を上空に突き出す。
「平和な世界!!」
ベルの手から白色の巨大な光の帯がワイバーンに向かう。それがだんだん大きくなっていく。
母さんから聞いた事がある。全ての魔法の頂点に立つ魔法、世界の名前を冠する魔法について。世界の名前を冠する魔法は、世界を変革する力があると。
「なんて魔力してんのよ! 馬鹿じゃないかしら! 無理! 無理よー! 制御できないわ!」
ん、暴発したのか? 白い光が弾けあたり一面を包み込む。
ボテン!
ボテン!ボテン、ボテン!
なにか柔らかそうなものが落ちるような音が続く。
光が晴れて、眩んだ目が見えるようになる。
「…………ッ」
僕は息を呑む。
辺りを見渡すとここは地獄と化していた……
全てのものがぽっちゃりと肥え太った世界……
まさに争いのない平和な世界が顕現してた……
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