決意
ハワイは太陽とともにある。
オアフ島を始めハワイを構成する数々の島は、古より太陽の恵みを受けて存在しているのだ。
夕刻、そんな太陽も役目を終え、間もなく西の空に沈もうとしている。
ここはオアフ島西部、海からも近い場所にある品の良い屋敷のバルコニーで、高齢女性と、その側には40代の女性が佇んでいる。
遠くに音の割れた緊急放送が聞こえてくる。もう何時間も聞こえている放送だ。
「知事から緊急に連絡します。本日の日本軍の爆撃に続き、今後更なる攻撃が予想されています。そのため、市民の皆さんは大至急避難をお願いします。
そのなかで、アメリカ軍の指示により、日系人の方については避難先を別にすることになりました。
まずは、日系人の方の避難が優先となります。繰り返します、日系人の方の避難が優先となります。
その他の人のためにも、日系人の方は速やかに地域のコミュニティセンター等に集合してください。
詳しくはアメリカ軍が巡回しますので必ず指示に従ってください。
以上、市民の皆さんは大至急避難をお願いします。
放送を聞いていた高齢女性が呟く。
「隣のイノウエさん、大丈夫かしらね。結局アメリカ軍にみんな連れていかれたみたいだけど。」
40代女性が静かに答える。
「はい、イノウエさんは娘もよくしてもらっていたので心配です。まさかこんなことになるなんて。」
「あの日本人の言うことは本当でしたね。そうすると今後は本当に日本軍がハワイを解放にやってくるのでしょう。」
「はい、未だに信じられませんが。」
「そのときは、わかっていますね?」
「はい、お母様。本当にそうなったら、お母様は私がしっかりサポートします。」
「頼んだわよ、私はもう年よ。でも、だからこそ憂いなく出来るというもの。でも、あなたには迷惑をかけてしまうわね。」
「いいんです。お母様の昔からの願いですから、それに、私が頑張ることも義務だと思います。それに、娘にはそれほど影響はないでしょうから。」
「そうね。私と貴女が頑張ればきっと大丈夫。」
二人は斜陽の陽射しを見つめながら、優しく微笑んだ。