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ハワイの激震

オアフ島に日本軍の爆撃機が来襲し、主要施設を破壊しながらビラを散布した1時間後。


未だ破壊された要塞等から幾筋かの黒煙が上がるなか、2台の車が示し会わせたかのようにイオラニ宮殿に横付けした。


時間を惜しむようにドアが開き、降車したのは、キンメル太平洋艦隊司令長官以下の海軍の面々。

もう一方はショートハワイ方面陸軍司令長官以下の陸軍の面々であった。


入り口で出迎えたのはハワイ準州の知事、ジョセフ・ポインデクスターである。


降車するなりショート陸軍司令長官が怒鳴る!

「知事!話がある!」

パンッ!

手にしたビラを知事の目の前に広げる!その勢いでよくビラが破れないと感心する程だ。

キンメル太平洋艦隊司令長官も同じビラを手にしている。用件は同じようだ。

ショート司令長官と目で合図する。


ジョセフ知事も用件は理解していたようだ。


「わかっております。とりあえず中へどうぞ。」


知事の冷静や対応に二人の司令長官も落ち着きを取り戻し、3人を先頭に宮殿内に足を踏み入れた。


応接室の豪奢な長テーブルに全員腰掛けると、陸軍幕僚の一人が改めてビラを全員の卓上に配付した。


ショート司令長官は待ちきれないようにジョセフ知事を詰問する。


「このビラを見ていますな!日本軍の航空機が撒いたビラですぞ!それで確認したい!古き盟約!?ハワイ王国の解放!?あげくにあれだけの奇襲攻撃をしておいて、これは戦争ではないとか!!我々アメリカ軍こそ撤退しろとか!!ふざけるなジャップの黄色い猿どもが!」


話し出しながら興奮が増してゆき、ショート司令長官は椅子から立ち上がり、その怒声は宮殿内に響き渡った。


ジョセフ知事は少し間を空けて冷静に答え始める。

「お怒りはごもっともです。私自身もいちアメリカ国民として、このふざけた内容に怒りを覚えております。」


「聞きたいのは一点だ!古き盟約とはなんだ!このような何かが過去にあったという事実はあるのか!」


「聞いたこともありません。」


「ならば日本の奴等は嘘を言っているということで間違いないな!」


「はい、私自身はそう確信しておりますが、一つ気になる事があるので現在旧ハワイ王室関係者に確認していることがあります。」


「それはなんだ!」

全員が驚いた表情を見せる。


「はい、今から60年前の1881年、ハワイ王国第七代の王、カラカウア王の時代に遡りますが、カラカウア王自ら日本を訪問し、天皇との外交交渉をしたとの話しがあるのです。」


「詳しく話せ!」


「当時の話しとしては、カラカウア王は我がアメリカとの条約を締結しておきながら、一方で日本とハワイ両王家との婚姻関係を結び、同盟を結ぼうと画策したようです。」


「なに!婚姻だと!それでどうなったのだ!」


「伝え聞いたところによれば、婚姻と同盟は結ばれず、日本からの移民受け入れ程度のものになったとか。

しかし、当時の文献は残っていないのです。」


「ではこのビラの言う古き盟約について、日本には何か根拠となる資料がある可能性があるというのか!」


「99パーセント無く、日本の嘘であると確信しておりますが、念には念を入れて、旧ハワイ王室関係者に事実確認をしているのです。」


「わかった!しかし事態は急を要する!軍も同行し、場合によっては連行するぞ!」


「はい、決して強行手段は控えていただきたい。」


「万が一、万が一ハワイ王室がこの事実を隠していた場合、大統領演説で盛り上がった反日世論に少なからず悪影響を与える可能性がある!」


「クソ!ジャップめ!とんでもない策士が居やがるぞ!」


ドン!両手でテーブルを叩くと、置かれたばかりのコーヒーカップがカシャンと音をたてて僅かにコーヒーが弾けた。

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