イオラニ宮殿
淵田隊長の九七式艦上攻撃機と私の零式艦上戦闘機は、ビラを撒きながら堂々と飛行してゆく。
地上では人々が恐る恐るという風に我々を見上げ、指差ししている者も多い。
まず最初の目的地はハワイ王宮のイオラニ宮殿付近だ。海岸から数キロメートルなので、あっという間に到達する。
イオラニ宮殿は、1893年にハワイ王国が廃されてアメリカに併合されるまでは、ハワイ王室の住居及びハワイ王国の議事堂、そして王室の幽閉施設としても使われた経緯をもつ。
そして現在ではハワイ準州行政府としてアメリカ政治の中枢を担っている建造物である。
上空から見てもイオラニ宮殿の西洋建築様式は荘厳で美しいと思う。
しかし、その薔薇のように美しい西洋文化は、その鋭利な棘で裸のハワイを傷付け、最終的に王家を廃されることとなろうとは夢にも思わなかったであろう。
そして我々日本も、ハワイと同じ道を歩もうとしているのか。
いや、そうはいくか!我々は薔薇の棘など全て叩き折る!
イオラニ宮殿を眼下に私は叫ぶ。
そして宮殿前の大通りに沿って更に直進し、中心街が終わるまでビラ撒きを続けた。
その後ビラ撒きを停止し、北に針路を変えてオアフ島を縦断して一気に北部の町に向かう。
ちょうどそのころ、要塞とみられる方角から凄まじい輝きが見えた!
危輝羅璃!!
一瞬後!
数珠珠数珠珠珠珠!!堂堂ゥ!
大爆発だ!40.6ミリ砲台と、弾薬庫の爆発!!
攻撃は成功だ!
風防に衝撃波が到達してビリビリと震える。
我が軍の辞書に仕損じの言葉はない!!
誇らしくなり、高らかに宣誓した!




