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陸・海司令長官の会合

ハズバンド・エドワード・キンメル太平洋艦隊司令長官は59歳、ルーズベルト大統領の肝いりの人物で、少将から一気に大将に昇進し、司令長官に抜擢されたほどの人物である。


日本軍の攻撃さえなければ、更なる栄転も約束されていた自他共に認める勝利者であった。


今、キンメル司令長官は真珠湾にある太平洋艦隊司令部の会議室において、ウォルター・キャンベル・ショート、ハワイ方面陸軍司令長官と、お互いの参謀とともに長机に向かい合っていた。


その席に集った幹部達の表情は疲れからか冴えず、どこか暗い影が付きまとっている。


朝の濃いコーヒーを口にして、早速キンメル司令長官が口を開く。


「ショート陸軍司令長官、そして参謀の方々、早朝から海軍司令部までお越しいただきありがとうございます。」


「いえ、危急ですから、当然のことです。」


「昨日は陸軍戦闘機隊の応援派遣をいただきありがとうございます。お陰で空母エンタープライズは飛行甲板を破壊されましたが撃沈は免れ、現在は西海岸に向け航行中となっております。」


「うん、空母レキシントンを失った今、空母エンタープライズを失うことは絶対に避けなければならないですからな。陸軍としても当然です。」


「はい、わざわざお越しいただいたのは先程の第一報の通りです。昨夜の会議で恐れていたとおり、日本の空母艦隊は夜通し接近し、ここから南方300キロの地点を航行中のところを索敵機が発見いたしました。」


陸軍参謀達が驚きの声を上げる。

「南方300キロ!西ではなく南ですか?!しかも近い!」


「そうです。ここまで突っ込んでくるとは思いませんでした。」


ショート司令長官が海図に落とされた日本艦隊の位置とオアフ島、エンタープライズの位置を見て呟く。

「この位置関係は、日本軍はエンタープライズを狙っているということなのか?」


海軍参謀が答える。

「はい、他に考えられません。オアフ島を攻撃するのであれば、ここまで東に進出する必要はありません。」


「エンタープライズの位置はオアフ島南東250キロ、日本艦隊の東400キロ地点です。日本艦隊は早朝の索敵機でエンタープライズを発見捕捉し、攻撃隊を出して止めを刺そうとしているのに違いありません。」


「だとしても、日本艦隊は我々オアフ島からの攻撃を気にしていないのか?」


「はい、脅威とみていないようです。日本は奇襲攻撃でオアフ島の航空機の8割を地上破壊したのを確認しているでしょう。そして昨日の航空戦で空母艦載機は全滅していることも知っています。それに、オアフ島には日系人がいくらでも居ます。スパイによって情報は筒抜けでしょう。」


「クソ!ここは猿のスパイだらけか!」


「残存する稼働機の確認ですが、海軍の残存航空機はF4Fワイルドキャット戦闘機が3機、SBDドーントレス急降下爆撃機が20機、PBYカタリナ飛行艇が6機となります。」


「陸軍の稼働機は、P40トマホーク戦闘機が25機、P36ホーク戦闘機18機、B18ボロ爆撃機15機、B17フライングフォートレス爆撃機5機、A20ハボック攻撃機が5機です。」


ショート司令長官が息巻く

「よし、それだけあれば図に乗った猿の艦隊を全滅させることができるんじゃないのか、日本の空母は爆弾一発で沈む泥舟みたいなもんだろう。」


「はい、これは最大で最後のチャンスです。敵はエンタープライズに釣られて最後に油断したのです。我々は最大限に攻撃隊を編成し、直ちに出撃しなくてはなりません。ここで多くの敵空母を撃沈できれば、我々の被った汚名を返上することが可能となりましょう。」


「そうだな、議会では大統領の演説により、全議会議員、全国民が日本を叩き潰すことに満場一致で賛成だったそうだが、このまま何もしなければ全国民から非難され、責任を負わされるのはここにいる我々で間違いない。」

ショート司令長官は自らに忍び寄る運命が極めて悲惨なものとなることを理解していた。


ゴクリ、誰かがその未来を想像してたまりかねたように唾を飲み込む。


ショート司令長官は続ける。

「ここで座して死を待つより、この神が与えてくれたチャンスをものにして、なんとか起死回生を図ろうではないか!」


キンメル司令長官は少し血の気が戻ってきた表情で問う。


「海軍機は全部出して敵艦までの誘導も行い、帰りもエスコートします。陸軍機はどれだけ出しますか?」


ショート司令長官は答える

「全部出すよ!全部だ!」


それを聞いて、情報部長が意見具申する。

「オアフ島の防空に少しは必要ではないですか?」


「防空!?奴等を全部沈めれば全ての問題は解決する!布張りの旧式機が残っていれば良いわ!」


キンメル司令長官は告げる!

「作戦は決まった!全航空隊、準備出来次第出撃せよ!残った艦隊も直ちに出航せよ!」


「イエッサー!!」

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