回避
中央に位置する空母レキシントン。
その周囲を守るのは重巡洋艦インディアナポリス、重巡洋艦シカゴ、重巡洋艦ポートランド、重巡洋艦アストリアの4隻の重巡洋艦である。
真珠湾の戦艦は足が遅く空母部隊には着いてこれないため、空母護衛艦としてこの4隻は最強の盾と言える。
その重巡4隻も次々と対空砲を撃ち出す!
弩権!!弩権!!弩権!!弩権!
鈍鈍鈍!鈍鈍鈍!鈍鈍鈍!鈍鈍鈍!
番番!番!番!番番!番番番!
撃ちあげられた砲弾は、音速の倍以上の速度で敵編隊に向け突き進む!起爆タイミングは内蔵の時限信管によって起爆秒数が設定されており、自動的に爆発し、大空に大量の破片を撒き散らすのだ。
激しい発射音が続き、もはや言葉を伝えることも、聞くことも困難だ。
訓練時はうるさいと思っていた射撃音が、今はとても頼もしい。
やがて空は対空砲弾の爆発の黒煙が一帯を覆い尽くし、敵編隊上空の視界が悪くなってしまったが、あの弾幕で敵機の大半は撃ち落とせたのではないかと思った。
「やったか!」「どうだ!」
艦橋の皆は同じ気持ちのようだ。
しかし、その期待は裏切られる。
気が付くと、敵の雷撃機が更に分離し、我が艦隊を回り込もうとしている。
「あの雷撃機!回り込むつもりだ!」
「挟撃する気か!撃ち墜とせ!」
一斉に回り込む雷撃機編隊を狙う!
馬脚!、馬脚!
無防備な側面を晒した雷撃機が空中分解する!
「ショットダウン!」「イエス!」
次の機体は炎上し、火まみれとなって海上に突入する!
「急降下爆撃!急降下爆撃!本艦の後方上空3000メートル!」
見張り員が叫ぶ!
煙が薄まった上空の空から、敵の急降下爆撃機が綺麗な一列縦隊を作っているのが見えた。
クソ!再び対空砲が向きを変える!
敵の編隊がジェットコースターのように連なって降下を始める!
対空砲が撃ち始める!
間に合うか!
番!番番!番!番番番!
クソ!敵機の後方で爆発している!起爆設定が遅いのだ!
あの機体、脚が出っ放しの旧型のくせに、意外と速い!
敵編隊は不気味な唸りを上げて急速接近してくる!
「ハード ア ポート!!」「ハード ア ポート!!」
急速左回頭を艦長が命じ、操舵員が復唱!舵を反時計回りに勢いよく回す!
クソ!舵はすぐには効かない、タイムラグがある!
敵機の空気を切り裂く唸り声がドップラー効果で甲高くなってくる!
対空砲は一層激しく撃ち続ける!
早く早く!早く効け!




