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帰投

私の両翼に列機が並び、我々3機は翼を並べてお互いの姿と機体の状況を確認する。


二人とも怪我は無く、満面の笑みでガッツポーズだ。私もガッツポーズで答える。


しかし、機体の状況は3機とも被弾しており、特に三番機の損傷が酷い。風防も一部割れており、至る所に弾痕が認められた。


「おいおい、笑ってる場合じゃないぞ。早く帰投しろ!」


私は心配になり、無邪気に笑う神鳥谷に向けて、手信号と共に大声で怒鳴る。


理解したのか、了解の合図とともに、母艦に向けて高度を下げ始める。


私達も続いて帰投方向だ。近くに来ていた先任に整備補給で帰投する旨を伝えると拍手で了解してくれた。


先任も歴戦のベテランだ。空戦の様子を見て、その困難さを理解しているようだ。


私達も母艦に向けて降下し、悠然と航行する機動部隊直上に差し掛かると、全艦艇の甲板員、そして各艦橋の艦長達が私達に向けて手を降ったり、或いは拍手で労ってくれていた。


艦隊の皆は私達の戦いを固唾を飲んで見届けたのだろう。


私は少しの恥ずかしさと、それ以上に誇らしい気持ちになったが、きちんと撃墜して直掩任務を完遂できたことに安堵したのだった。


そして、皆が見守るなか、我が母艦、空母赤城に無事に着艦した。


私達3機は次々に着艦すると、甲板指揮所まで降りてきていた草鹿参謀長と源田参謀の元に駆け寄った。


「敬礼!」

「報告します!第四小隊、新海 空少尉!」

「同じく、那須 與一郎一等飛行兵曹!」

「同じく、神鳥谷 仗一等飛行兵!」

「以上小隊3名!直掩任務中、敵機B17一機を発見、直ちに交戦し、これを撃墜致しました!」


草鹿参謀長が答える。

「うむ、ご苦労だった!」

「我々も見ていたが、至近距離に肉薄した攻撃は見事。体当たりするかと思う程だった。素晴らしい度胸と技量を見せてもらい、我々全員の士気が高まったよ。」


参謀長は惜しみ無い賛辞を送ってくれた。

次いで隣の源田参謀は表情を引き締めて話し出す。


「しかし、やむを得ないことだが、敵に我が艦隊の存在がバレてしまったのは間違いない。」

「我が方は、2段階の索敵線を張ったが、敵空母はもちろん敵艦すら発見に至らず、既に帰投方向となっている。」


「日没まであと2時間30分、この残り時間では、敵としても攻撃隊を発進させても帰りが日没となり帰投できなくなるので攻撃の可能性は低いと思われるが、念のため直掩隊を増やし、艦隊進路を変えることとなった。」

「諸君の機体は損傷の修復と整備に時間がかかりそうだが。敵機来襲の場合は再度出てもらう。それまで体を休ませよ。」


「それと、B17と交戦した状況はどうか。我が軍の初撃墜だと思うので、今後の参考とするので聞かせて欲しい。」


源田参謀は空のエキスパートなので、興味深々の様子だ。


私達は源田参謀に身ぶり手振りを交えながらB17との交戦状況を細かく説明した。


「なるほど、損傷から見ても神鳥谷君は紙一重であったな。あそこまで接近するのは諸君等熟練兵しかできん。しかも爆撃編隊を組まれたら対空銃座の数は倍以上になり、一層困難になる。厳しい戦いだな。」


源田参謀は、遠くを見つめて言う。


その眼には、高高度を飛ぶ重爆撃機の大編隊を思い描き、その対抗策を考えている様子であった。


「ご苦労であった!司令も喜んでいたよ。今日も油断は出来んが、明日は間違いなく死闘になる。明日のために休んでくれ。」


「了解しました!」

私達は踵を打ち付けて敬礼する!


そして一度愛機に戻り、整備士と状況を話し合い、再び待機することとなった。

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