表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/193

要塞堕つ

クソ!

今頃B17は攻撃を受けて緊急電を打っていることだろう。


機動部隊が発見されるのも時間の問題だ。


このまま生かしては帰さんぞ。


しかし、確実に20ミリを叩き込むには、敵機の後方200メートル以内に接近して撃ち込むしかないが、それでは敵機の後部銃座はもちろん、上面、下面の銃座も反撃してくるだろう。


例えるなら、B17は鈍重だが耐久力抜群で、パンチをあらゆる角度から絶え間なく打ち込んでくるヘビー級ボクサーである。


対する零戦は身軽で超接近型フィニッシュブローを持つが、すぐに弾切れするし打たれ弱いフライ級ボクサーである。


勝つには危険を承知で接近戦をする以外にないのだ!


やってやる!突撃だ!


二番機は機体を引き起こすと、その勢いのまま急上昇に転じ、旋回で速度を落とした敵機に喰らい付く!

鈍鈍鈍鈍鈍鈍!


栄エンジンが唸りをあげながら上方に駆け上がる!


命中弾はある!しかしダメージは薄い!


私と三番機も続くが同じ結果だ!


諦めずにもう一度やる!


そのとき、三番機が数発の7.7ミリを発砲して合図してくる!


なんだ!?

頭に血が昇っていた私は我に返る。


手信号で、「見ていてください」?何か策でも思い付いたのか?


残弾もあと一連射分くらいしかない。神鳥谷に任せてみよう。


三番機は我々より小さい旋回で追い越すと、敵機に接近する。


後部銃座は激しく撃ってくるが、射線を巧みにかわす。


コツは銃座を固定させずに、旋回させることだ。それで命中率は激減する。


三番機はグングン接近する。


オイ!もう必中だ!撃て!


まだ撃たない。まだ接近する。


神鳥谷!体当たりする気か!


そんなことは許さんぞ!


後方から見ていると、三番機は巧みな操縦でB17に接近する。


いや、肉薄だ。


しかし神鳥谷がやると、まるで朝の挨拶のように気軽に、空中で華麗なステップを踏みながら当然のように超接近する。


そして、左手に持っていた紳士傘の持ち手に隠された日本刀を一閃!


鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!

一撃必殺の20ミリ機関砲の咆哮!


馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚!!!


後部銃座が跡形もなく破壊され、主翼二番エンジンも炎上!


だがしぶとい!弾切れだ!


見ているとスローモーションのような攻撃であったが、実際は数秒間だ。


私は神鳥谷が何を見せたかったか理解していた。


気付いたのだ。私達は目測を誤り、200メートルの必中距離の気がしていたが、実際はもっと遠かったのだ。


命中していたのは7.7ミリが数発程度だったのを勘違いしていたのだ。


「わかったよ!あいつは照準器にこだわってはダメだ!直接見て撃ちゃあいいんだろう!」


次は二番機だ!逃げる敵機を追い詰め、超接近する!


ヘビー級ボクサーは足に来てやがる!


鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!

馬脚馬脚馬脚馬脚馬脚!弩馬津脚!


私もすぐ後ろに続く!トドメだ!


照準器からあり得ないほどにはみ出す!


鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!

弩馬津脚!弩馬津脚!弩馬津脚!


尾翼が砕け!主翼がへし折れる!


機内は阿鼻叫喚の地獄であろう。


すまないな。


空中において、あらゆる部品に解体されたB17は、機動部隊の航行する海上付近に落下していった。


要塞は墜ちたのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ