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フライングフォートレス

我々は散開していたので、二番機が先頭といっても私と三番機もかなり離れて追従する形となった。


目標とはかなり距離があり、数十キロ先だ。


しかし高度が高く、味方機の飛ぶ高度ではない。おそらく敵の偵察機だろう。


私は合図を兼ねて機銃の試射を行う。


鈍鈍!弾弾弾!


20ミリ機関砲を発射すると振動が私自身を突き抜ける。


アメリカ軍のように、思う存分撃ち続けられたら、最高に気持ち良いだろうと思うが、装弾数は二丁で120発だ。連射すると約7秒しかもたない。


日本人らしく、居合い切りで一撃必殺が正しい用法ということだ。


列機も試射で答える。


スロットル全開、更に高度を上げてゆく。


高度6500メートル!、7000メートル!


敵機より優位をとる!


敵機は未だこちらに気付いていない。方向も少し逸れているのでうまくいけば機動部隊は発見されないかもしれないが、先手必勝で墜とした方が確実だ。


敵影が大きい?!四発エンジン!B17、フライングフォートレスじゃないか!


まだ遠いが、圧倒的存在感だ。我が軍の一式陸上攻撃機より更に大きい。確かに、空飛ぶ要塞そのものに見えた。


これはスゴい、面白い奴に出会ったぞ!


私は自らを奮い立たせ叫ぶ!


九九式二〇粍機関砲の錆びにしてくれるわ!


B17が空を飛ぶ姿は実に堂々として、その偉容は空中要塞という名称に相応しい。


この要塞の任務は索敵であろうから、基本的に視野は下方を気にしているだろう。奇襲なら上方からの攻撃がベストだ。


我々は更に上空、太陽に身を隠すように近付いて行く。


近付くほどにその大きさがあらわになる。銃座もいたるところに配置され死角はない。


急降下で一気に接近し、20ミリをぶちこめばなんとかなるだろう。

無線を発信される前に撃墜するのがベストだ。


忍び寄る。忍び寄る。


B17の上面には、二丁の機銃が備わった球形の銃座がある。


我が軍にはない形状で、あの二丁が撃ち出したらかなりの脅威だと思う。


上面銃座がこちらを向かないことを祈り、見つめる。


気付くなよ。気付くなよ。


もうすぐベストな配置になる。


上面銃座が想像より機敏な動きでこちらを向いた!


気付きやがった!


すぐに二番機が自らの翼をひるがえし、一気に急降下を始めた!


B17のパイロットは咄嗟に左旋回を選択したようだ。グググッと翼が傾き始める。


機体の回転に伴い、上面銃座が射角から外れていき、代わりに側面銃座が見え始める。


こちらを向く側面銃座は一丁のみ、愚策だな!


動作も遅い!鈍重だ!


二番機は一気に肉薄してゆく!

側面銃座が激しく発砲する!

更に左旋回すると、球形の胴体下面銃座が現れる!

下面銃座も機敏な動きで照準を二番機に合わせ、二丁の機銃が連射を始める!


弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!

連射によって閃光が瞬く!


二番機は怯まず鷹のように突っ込む!


鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!


駆け抜けながら、必殺の20ミリを撃ち抜き下方に駆け抜ける!


B17の上部から破片がキラキラと飛び散る!


命中!やったか!?いや、奴はダメージを負ったが、動きに変化はなく悠然と左旋回を続けている。


ダメか!那須がしくじるとは!次は私の番だ!


翼をひるがえし急降下に入る!狙いは二番機と同じ主翼にぶちこんでやる!


急降下なら慣れたものだ、零戦の限界速度手前に調整しながら突っ込む!


改めて感じる!デカイ!デカすぎて距離感が難しい!


20ミリの射程は200メートル先で収束される。

しかし急降下中の零戦にとって、200メートルは約1秒間の距離だ。

つまり、1秒後には敵機と衝突するような距離感に肉薄して撃ち込まなければならない。


回避もしなければならないし、照準器に映る敵機がどのくらいの大きさならよいのか、突っ込みながらも私は逡巡した。


照準器に映る敵機はどんどん大きくなる!


今だ!私は20ミリと7.7ミリ弾を同時に発射する!


鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍鈍!


頑頑頑!

何発か命中した!


チャンスは2秒もない、すぐに角度を調整、駆け抜ける!


すぐに引き起こしながら、要塞を見る。


特に変化はない。


すぐに三番機も続くが、やはり結果は同じで、奴はダメージをものともせずに飛行していたのだ。


思わず呟いた。

「おいおい、マジかよ。」

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