続 搭乗員待機室
私は待機中、落ち着いたのでようやく部下達と話すことができた。
「神鳥谷、初めての実戦で初撃墜おめでとう。P40の6機編隊と戦ったとき、私は先頭のヤツに付きっきりで見ていなかったんだが、どういう状況だったんだ?」
神鳥谷は落ち着いて答える。
「ありがとうございます。私は那須先輩の指示で加賀隊と合流し、P40の4機と向かい合いました。」
「ご存じの通り那須先輩は分離して小隊長を狙った1機を一撃で撃ち落としました。」
「うん、あれは上手くいったな。那須」
「まぁ、当然ですな。」
那須一飛曹はズズッとお茶を飲みながら落ち着き払った態度だ。
先程がむしゃらにカレーを食べていた男と同一人物とは思えない。
「カレー付いてるぞ、那須」
「えっどこですか!?」
「嘘だよ」
「・・・・・」
「4対4でこちらの優位戦となりましたが、敵機はかなり遠くから射撃を開始してきました。」
「私は、敵の練度は低く、我々を恐れていると思い、かえって冷静になることができました。」
「ほう、撃たれているなかでも落ち着いていたか。」
「はい、そして上から被せながらこちらも撃ち込んだところ、7.7ミリがパイロットに命中したのが見えて、ゆっくりと紙飛行機のように墜ちていきました。」
「やるな。」
「真珠湾上空の反航戦で少しコツを掴みました。」
「あとはお互いに反転して格闘戦になりましたが、零戦の方が優れていて内側に入れたので、たちまち後ろをとって共同で2機を撃墜、1機は急降下で離脱しました。」
「なるほど、やはり旋回性能は零戦が上だな。それにしても見事な実戦だった。今後とも頼むぞ。」
「ありがとうございます。エースの新海小隊長と那須先輩の特別小隊に入れていただいたおかげです。」
その後も話題は尽きることなく盛り上がっていると、ガチャッとドアが開き、淵田隊長が入って来た。
淵田隊長が颯爽と待機室に入ってくる。
気をつけ!
板谷少佐が号令をかけ、全員が起立する。
淵田隊長は周囲を見回し、私達を認めると軽く頷き、落ち着いた口調で話し出した。
「皆、揃ったようだな。」
「改めて第一次攻撃隊の皆、誠にご苦労だった。」
「戦功は抜群であり、戦艦4隻以上を撃沈又は大破、飛行場の敵機を100機近く破壊し、滑走路も破壊した。制空隊も空中戦で敵機10機を撃墜した。」
「やったぞ!」
「よっしゃ!」
ワッと盛り上がり!拍手に包まれる!
しかし淵田隊長は、改めて表情を引き締める。
「しかしだ。戦果と引き替えに還ってこない者もいるし、今も第二次攻撃隊が続々と帰投しているが、我々と異なり敵が待ち構えるなかでの強襲となったことで被害は大きいようだ。」
全員が静まり返る。
「今後については、まもなく帰投する第二次攻撃隊の報告を待ち、南雲司令官、草鹿参謀長、源田参謀等も交えて最終決定となる。」
淵田隊長はやる気だ。気迫を込めて皆に伝える!
「諸君!確実に言えることは、再び出撃するのは我々第一次攻撃隊だということだ!各員は出撃準備を整えよ!」
オーッ!やるぞ!
皆が拳を突き上げる!
「よし、私は軍議となるが、板谷少佐と新海少尉!」
「はい!」
「お前たちも軍議に参加せよ。以上!」




