搭乗員待機室
私達は搭乗員待機室を前に、お互いに服装をチェックする。
案の定、那須一飛曹の救命胴衣の紐がほどけているし、今に始まった話でもないが全体的にダランとしているので神鳥谷と二人で整えてやる。
那須にしても、それが当たり前のように私達に身を任せている。
身支度ヨシッ!救命胴衣に軽くパンチ!
私達は軽くノックして搭乗員待機室に入る。
第一次攻撃隊の皆はそれぞれ座り込んでリラックスしていたが一斉に振り向く。
待ってたよ!お疲れ様!無事で良かった!
皆が迎えてくれるなか、私達は笑顔で待機室の奥に進む。
赤城制空隊隊長の板谷茂少佐が立ち上がって迎えてくれる。
「待っていたよ!特別隊の新海少隊!見込んだ通り、かなり戦果を挙げたらしいな!」
私達3人は少佐の前に整列すると、肩をバンバン叩いて喜んでくれる。
「はい!新海少尉以下3名!帰還しました!」
「ご苦労さん!まぁ座ってくれ。淵田総隊長は少尉達のあとに風呂に行ったから、もうすぐ戻るだろう。それまでは待機だ。」
「そうですか、判りました。」
そして私達は状況報告を行った。
「うーむ、P40と格闘戦をやった結果は完勝だったようだが、先手を取った優位戦からの分離連携攻撃か、見事な攻撃だったな。」
「問題は敵の攻撃力か。12.7ミリ4丁で間違いあるまい。撃ちまくられると被弾は避けられない。防御力のない零戦はすぐ火を吹くぞ。先手をとられたらキツいな。第二次攻撃隊の制空隊が戻ったら、今の話と対応策をみんなに話してくれ。」
「淵田隊長が戻ったら次の作戦の説明になる。それまで休め。」
「了解!」
私達は制空隊の皆のところに行き、皆の歓迎を受けつつ腰を下ろした。
そして話を咲かせながら、帰ってこない零戦が居ることを知った。
覚悟はしていたが、仲間が居なくなるのは本当に寂しいと思った。
待機中、折を見て私は雷撃隊のところにケジメを付けに行った。
我々の掩護が至らず、雷撃隊の九七式艦上攻撃機一機がやられた事が気になっていたのだ。
既に板谷隊長が制空隊長として一言入れたとのことだが、私自身も一言詫びを入れたい気持ちがあったのだ。
雷撃隊のみんなのところに行き、みんなに頭を下げた。
「制空隊の新海です。直掩が至らず、敵機の攻撃を許してしまい申し訳ありません。」
「見ていたよ。あれは仕方ないし、それにしっかり仇を取ってくれたじゃないか。こちらこそ礼を言うよ。」
「わざわざありがとう。でもな、もうそんな詫びを言いに来ないでくれ。お互いに死力を尽くした。そこに詫びる必要はないんだ。これからもよろしく頼むよ。」
「はい。」
なんて清々しい連中だろう。いや、皆そうだ。我々は全員死を覚悟している。その死を軽々しく詫びてはいけない。自分自身がそうなったときに詫びればよいのだ。
私は心に刻み込んだ。