第二次攻撃隊
キラリ キラリ
本来であれば、空中において見えることのない太陽光の反射を捉えた。
あれは、味方だよな、敵ではないと思うが。
まだ距離は遠く、確実ではないので、翼を振って集合をかける。
我々は3機編隊の2小隊を作り、敵だった場合に備えて、太陽に隠れるように高度をとった。
私は視力に全神経を集中させる。
上空には、太陽光に圧倒された星星が、ホンの僅かにその存在を示している。
そして、遂に第二次攻撃隊数百機が、星星をわたる流星群のように、明らかに姿を現し始めた。
その姿は美しく、厳かで、勇壮。
もし、この場面に相応しい音楽をかけるのであれば、ワーグナーのワルキューレの騎行が相応しい。
攻撃を開始する前の極限まで張り詰めたこの瞬間こそ美しいと思い、そして、何機がそのまま星になってしまうのだろうと寂しく思った。
私達は翼を振りながら、隊長機である九七式艦上攻撃機に接近する。
第二次攻撃隊隊長は、嶋崎少佐である。口髭もあり厳つい顔つきであるが、それにも増して凄まじい気迫を放っている。
私は第一次攻撃隊の戦果と湾内の現状について手信号で報告する。
よくやった。あとは任せろ、帰投して次に備えろ。
了解。
私は手信号を送ると、お互いの気持ちが通じた気がして、視線を交差させて相互に敬礼する。
嶋崎隊長は敬礼を終え、右手を下げて視線を真珠湾に向けると、その眼差しから放たれる気迫とともに命じる!
全軍突撃せよ!
第二次攻撃隊は、素晴らしい反応を見せ、一瞬で各隊が翼を翻して各々目標に向けて戦闘加速を開始する!
私達は万感の想いを込めて敬礼を続け、その勇姿を忘れるまいと脳裏に焼き付けた。
第二次攻撃隊は飛行場攻撃班と艦隊攻撃班に別れてゆく。
艦隊攻撃班は湾内を漂う黒煙で標的を絞り難いなか、狙いを定めて攻撃位置をとる。
第二次攻撃隊の九七式艦上攻撃機は魚雷ではなく、800キロ爆弾を吊り下げている。
これを高度3000メートル付近を水平飛行して、爆弾を投下するのだ。
800キロ爆弾の直撃は戦艦の主砲と同等の威力であり、巡洋艦以下なら粉砕が可能だ。
しかし、水面下で爆発する魚雷と異なり、装甲の厚い戦艦を撃沈するには数発の直撃が必要であった。
攻撃隊が湾内に近付くにつれて、いたるところから凄まじい対空砲が撃ち上げられてくる。
我々のときはなかった対空砲火の濃密さだ。
遠くに見ると、重力が反転して、地上から上空に豪雨が昇っているように見えた。