散華
私は必死に操縦桿を握りしめる!
後方から、爆発の衝撃波が私を突き抜けていく。
特殊潜航艇の彼らは、散ったのだ。
私はその衝撃波のなかに、彼らの思いが含まれているのを感じた。
彼らはどれだけ前からこの機会を伺っていたのか。
生還の可能性が極めて少ない作戦だ、死を覚悟していたのだろう。
私だって覚悟はあるが、特殊潜航艇の環境の厳しさは想像を絶する。
彼らの放った魚雷はどうだ!?
海面は爆発の影響で激しくうねり、クラーケンが暴れているようで雷跡は見えない。
すると、クラーケンの鞭のような触手が敵艦の後部を激しく殴打した!
業業業!
津爆ゥ!
特殊潜航艇の放ったクラーケンの一撃は、敵艦の後部に命中し、推進力であるプロペラを粉砕!
バランスを喪失せしめた復元力を超えた一撃となって、一気に横転させた!
見事だ!
一艦で一隻を屠る、その勇姿確かに見届けたぞ!
もとより我々は、死を覚悟している。
そして、どうせ死ぬなら誇り高く死にたいと思っている。
だから、悲しいとか、虚しいとかの気持ちは持たない。
ただただ、敬意を示し、そしてその仲間たちに恥ずかしくないように自分もしなければと思うのだ。
おそらく、我が大日本帝国のつわ者は、海軍も陸軍も、このように考えていたのだ。
死ぬのは怖い。しかし、それ以上に、逃げることは出来ない。
送り出してくれた父と母、故郷のため、そして日本のため、天皇陛下のために、戦うのだ。