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女王と王女と大和

「スゴイ!ママ!!今日は波が高いのに、大和はヘッチャラよ!後ろの赤城はあんなに揺れて、赤城のパイロットは気持ち悪くならないかしら?」


「そうね!すごいわね!全然揺れない

わ!それに、なんて良い眺めなのかしら!それにしてもあなたは後ろの空母を気にし過ぎよ!!ずっとじゃないの!そんなに気になってるなら、ここから飛び込んで泳いで行きなさい!」


ここは戦艦大和の艦橋。

本来は戦うための厳かな空間であるが、今はハワイ女王とプリンセスを乗せて、真珠湾を出港してオアフ島の主要箇所を巡回し、今は北西に位置するカウアイ島、ニイハウ島に向けて航行中であった。

目的は国民に対し、ハワイ女王国独立と、大日本帝國とのポリネシア環太平洋連邦締結の正当性を示す観艦式的なもので、その戦闘力と共に、正当性を示すものであった。


艦隊がカエナ岬沖海戦を戦ったのは数日前のことで、大和は戦艦メリーランド等からの主砲を弾き返したものの、痕跡の修理は終えていない状態であったが、それすらも精強の証と捉え、戦艦大和、空母赤城、巡洋艦鬼怒、駆逐艦綾波、敷波、浦波、磯波のハワイ女王国太平洋艦隊は、ハワイ王国旗をはためかせ、堂々と、初めてポリネシアの海に乗り出したのである。


その美しい女王とプリンセスの側には、新たにハワイ女王国海軍大将かつ、ハワイ女王国太平洋艦隊司令長官となった宇垣纏と、同海軍少将で大和艦長の高柳儀八が礼装で控えていた。


「そうでしょう、この戦艦大和は、地球上で最大の大きさです。台風に突っ込んでもビクともしませんぞ!」


・・・さすがにそれは言いすぎでしょう・・・

高柳艦長はチラリと宇垣司令長官を見る。

宇垣司令長官は、真珠湾作戦のときに見せていた表情とは打って変わって、終始にこやかな表情を浮かべている。元々鉄仮面というあだ名を持つほど、仏頂面の男だったはずだが、高柳艦長も驚く変化であった。


高柳艦長も感じているのだが、ハワイ女王国の所属になると、大日本帝國海軍の重圧から解放され、考え方や運営方法が今までの形式に囚われたものから柔軟に変わったのだ。

海軍伝統の精神注入棒による殴打教育もほぼ無くなったと聞いている。


ハワイは、壮大な自然の力で、優しさで人を引き付ける。

そして、そのハワイを守るため、ハワイを守れば日本も守れるとならば、将兵は無駄な制裁を止めて、上下関係無く、皆が団結したのである。

そんな我々に優しさをもたらしたハワイという国は、それが最大の魅力なのではないかと感じるのである。


そして艦隊は順調に航海を続け、間もなくカウアイ島に到着する頃、艦橋に伝令が飛び込んできた!


「報告します!!只今赤城偵察機から無電が入りました!!」

「む?!?」

「待て」

宇垣司令長官は、チラリと女王とプリンセスを見て、このまま報告を受けるか考える。

「吉報かそれは?」

「吉報であります!!」


「ならば良かろう、報告せよ!!」


「ハッ!!0925時!ここより北北東に200キロ地点!!空母サラトガを発見!!!他は軽巡洋艦1隻と駆逐艦3隻!!サラトガの針路は南東!!速力は時速約10キロメートル!!です!!」


「伊6が魚雷2発を命中させ、更に追跡したが悪天候で見失った奴か、4日前だぞ。大本営はサラトガが沈んだ可能性が高いと判定したので、今回の巡視計画を実施したのだぞ。」


高柳艦長が応じる。

「そうですね、このまま見過ごす訳には行きません。ですが、女王陛下と王女が乗って居ますので・・・」

チラリと女性2人を見ると、王女が女王に翻訳して伝えているようだ。


女王は理解すると、司令長官に向き直って話す。

「Commander 宇垣。」

「はい。」

宇垣は嫌な予感がしたので、日本語で答えた。


バージニア・カホア・カアフマヌ・カイヒカプマハナ女王は、優しい笑みを浮かべながら、毅然とした態度で命令を発した。

「行きましょう、サラトガへ。ここから200キロなら、夕方には着くのでしょう?」


「・・・・」


「Commander 宇垣」

「はい。」

「あなたの所属は?大日本帝國?それとも、わたくしの国ですか?」


「貴方の、国です。陛下。しかし陛下が行ってどうされるおつもりですか?」


「独立宣言のとき、わたくしは言いました、ハワイ女王国の海域は、わたくしの許可なくして、このハワイ艦隊以外の立ち入りを禁ずると。アメリカ合衆国艦隊は、早急に残存艦隊をマウイ島ラハイナ泊地に移動せよと。」


「はい、私もその場で聞いておりました。」


「わたくしは許可を出しておりません。このようなことは最初が肝心です。アメリカ合衆国に、ルールを遵守させる必要があるのです。」


「はい、仰る通りです。」


「では、全艦で今から向かいましょう。そうそう、私達が着くまで、航空機からの攻撃は禁止してください。それでは、全艦面舵ですね?」


宇垣司令長官は後頭部に汗をかきながら頷く。


「全艦に連絡!!面舵90!!速力時速40キロメートル!!」

「全艦に連絡!!面舵90!!速力時速40キロメートル!!ヨウソロー!!」


こうして、ハワイ女王国太平洋艦隊は、毅然とした女王と、不安げな王女を乗せて、爆走を開始したのである。



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