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コーナーポスト

空母加賀は、ミッドウェーの゙海において、自らを燃料としながら燃え続ける。


アメリカの450キロ爆弾は、空母加賀の右舷後方、左舷中央、前部エレベーターに命中し、格納庫内で大爆発を起こすと飛行甲板を縦に八つ裂きにした。


空母加賀の格納庫は、燃え盛る炎が全てを薙ぎ払い、そして航空燃料に引火すると、更に勢いを増して機体と整備員もろとも灼熱地獄と化したのだった。


一方、距離は数百km離れているが、空母サラトガも同様であった。


大日本帝國の250キロ爆弾は、一発は空母サラトガの飛行甲板前方エレベーターを吹き飛ばし、一発は中央エレベーターを突き破り、一発は後方甲板を突き破り、それぞれ格納庫下の装甲板で起爆して大爆発を起こし、航空燃料に引火して灼熱地獄と化した。


更に左右両舷喫水線下に魚雷が命中し、大穴が開いて海水がなだれ込み、その速度を大きく低下させていた。


幸いであったのは、日米の両艦とも、艦橋に被害が無かったことである。

加賀艦橋には南雲司令官、源田実航空参謀、岡田次作艦長等は衝撃で打撲を負ったが、必死に消化班を編成指揮していた。


サラトガ艦橋には、オーブリー・フィッチ指揮官も同様に、ダメージコントロール班に矢継ぎ早に指示を与えていた。


加賀とサラトガのダメージを判定するならば、まさに五分五分といったところだ。

加賀の受けた450キロ爆弾3発の破壊力は凄まじく、上部構造に留まらないダメージを受け、炎は吹き荒れて鎮火は遠い。


サラトガとて、250キロ爆弾3発の直撃を受け炎上中だが、消火設備は整っている。更に魚雷2発は大きいが、左右均等に直撃を受けたことで、速度は落ちたが、かえって傾かずにバランスがとれているという状況であった。

さらに言えば、アメリカ陣営の方が、ダメージコントロールが上手く、回復が早いのだ。


なかなか進展しない消化活動、伝声管から聞こえる応答は悲痛な回答が続く。

岡田艦長は後方に控える南雲司令官に振り返ると、意を決して進言する。

「南雲司令官、航空燃料への延焼が止まりません・・・・このままでは・・・先に司令官と参謀だけでも、退避をご検討ください。」


「・・・まだだ、この加賀を失う訳にはいかん。艦長!鎮火さえすれば、曳航できるのではないか?」


「はい、しかし日本まで4000キロあり遠すぎます。曳航は、難しいでしょう。」


それを聞いた源田参謀が提案する!

「司令官!間もなく、ミッドウェー島の上陸作戦が開始されます!!占領は確実です!であれば本艦をミッドウェー環礁に乗り上げて、応急修理を試みましょう!!資機材はハワイの赤城にでも待ってこさせましょう!!」


「ミッドウェー島か、うむ、本艦を横付けすれば、上陸部隊の前線基地的にも良いかもしれん。

よし!艦長!頑張ろう!消火が全てだ!皆が辛いが、これに耐えて、再起を図るぞ!」


「了解しました!最善を尽くします!!艦長から各員に告げる!!本艦はミッドウェー島に向かい応急修理を行う!!各員は消火!消火!消火に全力を注げ!!!!」


一方、オーブリー・フィッチ指揮官は冷静であった。

ダメージコントロール班の迅速な対処により、格納庫内の炎上も鎮火の目処がついてきた。

魚雷の跡も浸水が落ち着くと、時速約20キロ程度であるが航行可能であった。


指揮官は眼下の破壊された飛行甲板を見つめながら呟く。


「攻撃隊は敵空母1隻を大破させたようだが、これでは、結局痛み分けではないか。ジャップの攻撃、あんな連携攻撃はうちに出来るか?とんでもない奴等じゃないか。レキシントンとエンタープライズがやられた理由がよくわかった。」


「とにかく、この艦は敵空母に打撃を与えた殊勲艦となったのだ、現在のアメリカの希望とも言える。絶対に生還しなければならん。」


シスターサラは、加賀との激しい打撃戦で満身創痍となったが、受けたダメージを確実に回復させ、ラウンド終了の鐘が鳴るとその右手を突き上げて、コーナーポストに戻ってゆくのだった。

対する加賀もコーナーポストに戻ろうとしていたが、その足取りは覚束なく、一度座ったら、立ち上がれないのではないかと思う程の様相であった。


ミッドウェー海戦は、双方ノックアウトには至らなかったが、激しい乱打戦により戦闘能力を失って、その幕を下ろしたのであった。


後世においても、本海戦自体は、日米の引き分けであるとの判定が通説となるのであった。



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