表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/193

別れ

少女は走る!


ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ!


戦場からはすっかり離れ、そこは小川に沿った道。

川のせせらぎが心地良く、家屋が点在しており、庭からは馬や猫が見詰めてくる。


ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ


美しい少女は、その表情に汗を浮かべて、溌剌と、心の底から楽しそうに笑顔で振り返る!


「ここだっちゃ!!」


新海は、振り返った少女の笑顔と、美しい黒髪から飛び散る汗がキラキラと輝いて見えて、何がココなのかもわからずに見とれてしまう程だった。


少女ノアは、反応の悪い新海に少し違和感を感じてほんの少し首を傾けたが、気を取り直して大きめのジェスチャーで家屋を指差す!


示した家は2階建の洋風建築で、今まで通り過ぎた家屋のなかでは作りに重厚感と気品を感じる。

2階のバルコニーには、洗濯物が風になびいており、家人は在宅の様子だ。


「この家が、伯母さんの家かい?」


「そうだっちゃ!デイジー伯母さんだっちゃよ!!」


ノアは、まさにえっへんという感じで胸を張ると、やたらと大げさに胸が揺れる!


「居るかな!伯母さん!」

ノアは敷地内に入ろうとする。


「あっ、ちょっと待ってノア!」

「ん?」


ノアは怪訝な様子で立ち止まる。


「あのさ・・・・ノア、私はここで、戻るよ・・・戻らないといけない。」


「えっ!?戻る?」


「そう、危険な戦いに巻き込んですまなかった。私は兵士だ。そして、日本軍はまだ戦っているんだ。私も戻らなくてはいけない。」


「巻き込むなんて言わないで!最初に言ったっちゃ!私がお願いしたっちゃよ!!」


「そ、そうか、そうだったね。ゴメン。」


「わかれば良いっちゃ!・・・それで、ソラ?行っちゃうの?伯母さん家で少し休んでからでいいんじゃないかな?」

ノアは少し目を潤ませて聞いてくる。


新海もその目を見ると決意が揺らぐが、兵士としての理性が、このままではいけないと告げる。


「いや、今回の戦いの行方は、我々にとって極めて重要な戦いだ。ここに敗れれば、我々日本が、そしてハワイの未来が、全て閉ざされてしまうだろう。」

新海は、はっきりとした、決意を込めた強い眼差しでノアの瞳を見詰めながらゆっくりと話す。


「そして、君のファンになったヨコハマラグーンの二人も心配だからね。」

新海は、ノアを安心させるように微笑む。

「そう・・・わかったっちゃ。ソラはエースのなかのエース、行かない訳ないっちゃね・・・・気を付けてね・・・」

「私も!ラグーンに行くから!」


「うん、ノアは戦いが終わったら来てくれ!キチンと掃除して、ビーフジャーキーも仕入れておくよ。」


「必ずっちゃよ!!」

ノアは一粒の涙を浮かべている。

「ああ、必ずだ。」

新海は微笑む。


ノアは新海に歩み寄ると、その眼を閉じて身を任せてくる。

新海は両手を少し広げて受け止めると、その姿は一つになり、ハワイの景色に溶け込むのであった。




・・・・・ちょうど、デイジーカートライトは、洗濯物を取り込もうとバルコニーに出たところで、その二人を遠くに発見する。


「お熱いこと。あれはノアじゃないかしら?お相手はパイロット?日系人かしら?でも少し変ねぇ。ノアだったら、接吻なんて、王家に連なる者としての礼儀作法をキチンと教えなくてはいけませんね!」


結果的に、ノアと新海に燃え上がった熱は、その伯母のデイジーカートライトまで燃え上がらせることとなったのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ