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姉というものは妹に命令をする生き物だと思っていましたが実は違うようです。規格外の姉に命令をされ続けた妹が婚約者もとられて復讐を決意しました

作者: 実穂

「ほら、早くお茶を入れてよ!」


「ぬるい! もっと熱く!」


 私は生まれた時からこのふんぞり返る姉の奴隷でした。

 姉は姉であることが命令する権利というのです。

 私はそれを実は10歳まで信じていました…。


「何よその目、早く入れ直しなさいよ!」


「自分で入れてください。妹は小間使いじゃないですわ!」


「妹は姉の命令を聞く生き物よ!」


 私はお友達のユーリのところに遊びに行ったとき、ユーリのお姉さまを見てうちの姉は普通じゃないことを知ったのですわ。

 まず妹に命令をしない、クッキーを焼いて食べさせてくれる。勉強を教えてくれる。

 しかも優しい…。ありえない…でもこれが普通だとユーリが言うのです。


「…お姉さまは普通じゃないですわ。姉というものは妹をかわいがって…」


「サル、煩い」


「え?」


「あのね、あんたが生まれたせいで私は親の愛情が半分になったのよ。それにねえプレゼントも半分になったのよ!」


「いやあの…」


「予算的に厳しいのはわかるけど、グレードが下がったのよ。あんたのせいよ!」


 うちは確かに伯爵といっても貧乏でした。しかし…娘のプレゼントくらいケチ…。


「ケチられてるのよ!」


 私はそっとお母さまに聞いてみましたが、いえ平等に上げているし、グレードなんて落ちてないわよときょとんと聞いてきます。

 お姉さまの暴君ぶりは私が生まれる前からだとその時聞きました。


「最初の子だからって甘やかしすぎたみたいで…」


 いやそういわれても、姉のあの暴君ぶりの犠牲者は私ですわ。

 姉の荷物持ち、姉が買い物に行くからついてこいと言えばすぐ支度をしてついていかないとあの毒舌にさらされるのですわ。


 お母さま曰く、お嫁にいったら大丈夫よとのことでしたが…。

 お父様はお姉さまの暴君ぶりにおろおろするばかりです。


 私はこれと離れるまで最低あと3年はかかるのかと絶望しました。

 しかし…。



「シーリアのほうが先に婚約が決まるなんて嘘よ!」


「いや本当だ…」


 3年後に13になったばかりの私のほうが先に婚約が決まり姉が荒れました。姉はこの時16歳。


 姉が高望み過ぎて、婚約者が見つからないようです。


「ふつう逆でしょ!」


「いや…」


 私は姉が蹴った縁談を受けただけなんですけど、相手が伯爵の次男だからいやだってお姉さまが言うももんで…。


 私は早く家を出たかったのですわよ。それに伯爵の次男であるリードは魔法学園で一緒のお友達で彼ならまあ嫌いじゃないですしいいかなと。


 私は悔しがる姉を見て、これでやっと暴君から離れられると思ったのですが…。




「え? リードとの婚約が白紙?」


「いやすまないやはり妹から先というのは少しと…」


 私は父から婚約が解消されたことを告げられました。あの暴君が抗議をしたそうです。

 妹が先なんて絶対に変だと…。


 いやあの。


 そしてあの姉がリードの婚約者になったのです。いや年下はいやだって言っていたのでは?


「あんなのでも魔法の天才で神童らしいから将来性にかけたのよ!」


 リードはごめんと私に謝ってきました。でもあの暴君と婚約なんて嫌だと私に泣きついたのです。

 どうもリードの実家が決めたことのようでした。


「リード、あなた私の姉と添い遂げたい?」


「いやだよおあの人怖いもん」


「なら…」


 私は姉の暴君っぷりをリードにいろいろ愚痴ってましたからこうなりますわよ。

 手を貸してとリードに頼んで、ある装置を作ってもらいましたの。



「早くしなさいよ。ほら!」


 私は今日も姉の命令に従っています。でもこんなことをしていられるののもいまのうちですわ。

 

「婚約のあいさつに行くんだからね! あんた黙ってるのよ!」


 私は両親と姉と四人でリードの実家に向かいました。ええ婚約式を内々に執り行うということでした。

 


「…ごきげんよう、本日はよいお天気でよかったですわ」


 優雅に笑う姉、姉はとても外面がいいのです。高望みさえしなければ婚約者だって決まっていたと思いますわ。


 私はにこりと笑う姉とかたかたと震えるリードを見ました。


「ではここに…」


 私はリードに合図をします。リードが魔法の呪文を唱えると、私が懐から出した装置から暴君の命令する声が聞こえてきました。


『とろいわねあんた、早くしなさいよ。ほらそこ片づけておきなさいよサル!』


『お姉さまあの…』


『お茶くらい言われなくても入れてきなさいよ! サル』


『私にはシーリアエルランドという名前が…』


『あんたなんてサルで十分よ!』


 私たちにとっては日常ですが、リードの家族にとっては非日常のようです。映像とともに姉の暴言が映し出され…ふうっとリードのお母さまが倒れてしまいました。

 大騒ぎですわ。

 あ、お姉さまが私にとびかかって…リードが庇ってくれました。


 うふふ大成功でしたわ。


 ええ、こんな暴君と婚約なんてさせられないと…リードとの縁談は白紙。

 かわいそうな妹である私とリードの婚約が決まりました。

 私が涙ながらにリードのお母さまにあの暴君の話をしたら同情されてしまいました…。


 あ、婚約破棄された姉はさすがにまずいと父が行儀見習いと称して修道院に送りました。

 いやああの姉の凄まじい性格が社交界に知れ渡ったからですわ。


 ああ平和ですわ。あの暴君から解放された日常は平和ですわ。

 姉の食べこぼしを掃除しなくていいですし、姉の買い物の荷物持ちもしなくていいですし。

 姉の…。

 私はにこりと笑ってリードと今日もお茶をするのでした。

読了いただきありがとうございます!

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