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笑う親友

作者: 伊藤康弘

チャイムを鳴らすと待っていたのか哲夫はすぐにドアを開けてくれた。

なにか可笑しいことでもあったのか笑いながら、

「ま、入ってくれ」

招き入れられるオレ。

後ろでドアをロックする哲夫。

オレは尋ねる。

「なんだよ、急に呼び出して。学校にもしばらく来てないし」

哲夫が笑いをこらえながら答える。

「いいから、あがれよ」

と、言った途端に我慢できず再び笑い出す。

オレもつられて笑いながら、

「だからなんなんだよ? 皆心配してんだぞ」

「いいから、入って」

靴を脱いで家にあがるオレ。

「お邪魔しまーす!」

返事はない。

「あれ? 誰も居ないの?」

「それがさ…」

爆笑する哲夫。

「だから、なんなんだよ?」

哲夫に背中を押され進んでいくオレ。

笑いながら哲夫が言う。

「ここ、ここ見て」

居間のドアを開ける哲夫。

テレビがつけられそれをソファに座って観ている哲夫の両親の後姿。

オレは咄嗟に、

「あ、お久しぶりです!お邪魔しています!」

再び哲夫が爆笑する。

両親からの返事はない。

哲夫、笑いをこらえながら両親の背後に立ちスリッパを脱いで、

「見てて」

父親の頭にむかいスリッパをフルスイングする。

衝撃で倒れる液晶テレビ。

床に転がる父親の首。

オレは間抜けヅラ。

哲夫、母親の髪の毛を掴んで頭を持ち上げる。

母親の虚ろな表情をオレに向けると、

「これ、オレがやったの」

そしてまた爆笑。

足を滑らしてしりもちをつくオレ。

そのとき床が、いや部屋中が血まみれなのに気づく。

哲夫に間抜けな質問をする。

「…なんで?」

哲夫、母親の首を持ちながら、

「オレね、もう18日笑いがとまらないの、だから…」

母親の首を思いっきり窓に投げつける哲夫。

ガラスが割れて母親が消える。

「悲しいことがあればとまると思ったんだけど、とまらねーの」

哲夫、笑いながらテーブルに手を伸ばし血まみれの包丁を掴むと、

「で、お前ならどうだろうなと思ったの」

包丁を構えて近づいてくる哲夫。

オレは後ずさることしかできない。

哲夫の足が滑る。

前のめりに倒れる哲夫。

そして立ち上がると包丁が胸に刺さっている。

哲夫、笑いながら、

「いてえ、いてえけど笑える」

そして何度目かの爆笑。

オレは立ち上がると哲夫の胸に突き立つ包丁めがけて思いっきり蹴りをいれた。


静かになった部屋。

オレは考えている。

笑っていいのかどうかを。


(おわり)

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