その後
その後
戦後処理を行っていたマクキッド副首相は、極秘に先住民会の幹部達を、戦犯として裁いていた。
シャクシャインは処刑されたが、長老は権威として処刑されず、権力のみを没収される形となった。
トラゾウは王者と成ったが、全財産を没収され、夢と希望を失った彼は、不調が長く続いた。
ヤスノスケは、キムンカムイを故意にテロリストに引き渡した罪で、職を解かれてしまった。
一方で、戦争で功を上げたドレイク独立大隊は、軍内で表彰され、主だって活躍した面々は昇進となった。
晴れて1等兵となったアナトリーは日差しが照らす大地を、マフラーを巻いて穏やかな表情で歩いた。
彼が向かった先は、軍事裁判所である。
そこでは戦争に加担した一般人として、ユーリが裁かれていた。
無垢な少年シュウジを、大量殺人犯へと導いた先住民会。
それらを繋ぎ会わせた罪で、彼は長期間の少年院への収監が決定した。
そこではポンヤウンペや神話、そういったものが全て供述されていた。
不服そうに、ユーリは泣き喚いて弁論した。
ユーリ「僕は夢を見ただけだったんです!。
でもそれが、血筋というどうしようもない生まれの不幸で、諦めさせられた…。
自分の夢を叶える為に、シュウジや先住民会に必死にしがみついたんです…!。
その仕打ちに少年院だなんて、あなた達それでも人間ですかぁ!!。」
ユーリの心の叫び。
それにアナトリーは、内心こう思った。
アナトリー「生まれに翻弄されたのは、俺も同じだ。
だが俺はそれに諦めず、努力をした。
俺は自分で選択した道を進んで、手に入れたかったものを手に入れたんだ。
仲間が居る、“居場所”だ…。
生まれなんか関係ねぇ。
仲間が居る居場所を手に入れる。
そういう夢を叶えられた俺と、叶えられなかったお前の違いは1つだ。
最後まで努力し続けたか…誰かに甘えたか。
それだけだ…。」
アナトリーはこれからもジェル達と共に、戦場へ行く事になる。
しかし、そこには不安はなかった。
何故なら、勇気があったからだ。
居場所である仲間達と共に生きる彼は、それを失わない様に必死になれる人間となっていた。
何故なら彼は、勇気を出せる大人へと、成長していたからだ。
ズヴェーリ 英雄叙事詩 終




