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ズヴェーリ 英雄叙事詩   作者: 乘
第3章 青山戦争編
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第17話 開戦準備

作中に登場するチャリオットとは、馬2頭に荷台を引かせ、その上に兵士が3人(馬の操縦・近接武器・長距離武器)が乗って戦う兵器の事です。

この世界ではズヴェーリという、調教次第では現代の重火器に匹敵する生物兵器が生息している為、武器は弓矢や剣といったものから進化しませんでした。

第17話


開戦準備



副知事のハリー・マクキッドは、カイ市と北、青山地区に面するワール市で、NIsのカクと会見に臨んだ。


そして同時に軍のダニエル・グリムス長官は、交渉の結果次第では即座にアレクサンドロフスクカラハットスキーへの攻撃を行う為に、当地より離れた青山地区のチロット市に対テロ特別部隊タスクフォース、ヤナ連隊を極秘に駐在させた。


チロット市は青山地区内で、最もシュシュ湖に近く、オキクルミを守れる位置にあった。

オキクルミは一匹のみしか残っていない絶滅危惧種であり、また在来種のズヴェーリでもあり先住民の神話にも登場する“カムイ”である。

“カムイ”は先住民の言葉で在来種のズヴェーリや、一部の動植物や自然を指す言葉で、その意味は神である。


先住民はこのカラハット州では保護されており、彼らの“カムイ”もその他の外来種のズヴェーリとは扱いが異なる。


万が一にも彼等に英雄とも呼ばれるオキクルミというカムイが死滅する事があれば、軍及び州自治体の権威が失墜(しっつい)するので、オキクルミを守れるシュシュ湖近くに軍を置いたのだった。



ヤナ「以上が作戦内容だ。

何か質問はあるか?。」


彼女はヤナ・アシエヴナ・スコブツェワ大佐。(Яна Асиевна Скобцева)

対テロ特別部隊タスクフォース、ヤナ連隊の連隊長。

薄緑の刈り上げ。

50代の堂々とした気品と教養溢れる男勝りな女性。

座右の銘は「彼を知り己を知れば百戦危うからず」であり、常に的の事を理解する事を信条としている。

その為、NIsの話す言葉も理解している。

身長166cm、体重54kg。


ラインホルト「ありません。」


彼はラインホルト・イライアス・マイヤー中佐。(Leinholt Elias Meier)

ヤナ連隊配属ラインホルト大隊の大隊長。

金髪碧眼、ゴツゴツした顔付き。

身長178cm、体重65kg。

40代後半。


ルーカス「シュシュ湖に背を向けてオキクルミを守る布陣をする理由は理解できます。

オキクルミは守らねばならぬ先住民の象徴です。


しかし、全軍をそこに配置するというのは避けるべきです。

神威の森にも兵士を配置すれば、いざという時に助けられます。 」


彼はビリー・バートン・ルーカス中佐。(Billy Burton lucas)

上と同配属のルーカス大隊の大隊長。

顔全体にうすら髭が生えていて、丸顔。

体格は182cm、体重79kg。


ヤナ「ルーカス中佐の進言は一理ある。

しかし此度(こたび)の進軍は、秘密裏である。

つまりは、余りにも兵を動かせば察知される可能性が高まるのだ。


つまり、不可能である為、それはしない。」



会議の末、ルーカスは配下中隊にも作戦報告をした。

その中にはドレイクの姿もあった。


ドレイク「作戦開始時には、我々が先鋒(せんぽう)ですか。」


ルーカス「君の所の作戦成功率は高いからな。

恨むなよ、昇進の可能性は高い方が良いだろう?。


ルーカスはドレイクに、ヤナの兵の運用は妥当(だとう)なのか問い掛けた。

ルーカスはやはり兵を別けて配置するべきと考えているらしい。

するとドレイクは、ヤナ連隊長の配置は妥当と言った。

この対テロタスクフォースの兵力は、1連隊である。

それはたかが数千人であり、NIsの兵力とその実力が図り知れない現状に於いては、その少ない兵力を更に別けるのは、悪戯(いたずら)に各個撃破の可能性を高めるだけであり危険だからという理由であった。


ルーカスは、兵を別動隊として別ければ、いざという時に奇襲を行えると進言した。



ドレイク中隊も同様に配下の小隊に作戦を告げ、小隊も同様に配下の分隊に作戦を告げた。


ジェル「またうちの分隊が先鋒ですか、ジノヴィ小隊長。」


ジノヴィ「そうだ。

ドレイク中隊が先鋒なったのも、一重にお前達の存在が有ってだ。

チャリオット分隊、その機動力と攻撃力は凄まじく、その中でもジェル分隊はジェル軍曹の統率力の高さから、結束力が強く戦功が他と比べれば群を抜いている。」


彼はジノヴィ・グリゴリエヴィチ・コロバノフ小尉。(Зиновий Григориеви)

ジェルの直属の上官。

生真面目で少々老け顔。

身長180cm、体重67kg。

30代半ば。


ジノヴィ「命令違反がなければ、とっくに昇進しているものを。」


ジェル「あぁそうですか。」



ワール市で行われている交渉の全容は、マクキッド副知事のネクタイピンに刺さる小型マイクからヤナ連隊に流れていた。


マクキッド「では、こちらが全要求を飲み州から撤退しない限りは攻撃を辞さないと?。」


彼はハリー・マクキッド副知事。(Harry Mckidd)

不在の知事に変わって交渉を執り行う。

身長191cm、体重68kg。

年齢70代前半。



カク「そうです。

我々は再びカイ市に来なくては行けません。

勿論、武装した上でです。」


マクキッド「では、1週間以内に我々が如何(いか)なる処置を加えても、攻撃は行われると?。

であれば、我々も黙って手をこまねいてはいられません。

ご了承の程を…。」


ご了承の程を、それは交渉の決裂を意味していた。

この言葉を聞いたヤナ連隊長は、全軍に攻撃指令を出した。

全軍でチロット市を打って出て一気に北上、青山の中央にあるNIsの本拠地、アレクサンドロフスクカラハットスキー市を解放する作戦である。


ヤナ連隊は勇壮に青い草花生い茂る大地を、馬型のズヴェーリのウンマで駆け、北上を開始した。

道中にも危険はある。

それは、野生のズヴェーリである。

彼等はとても危険な存在であり、自分達の縄張りに侵入してきた生き物には容赦なく牙を向くのだ。

ズヴェーリを警戒しながらの進軍中、索敵部隊が前方より接近する群れを発見。

しかし野生のズヴェーリと思われたその群れは、NIsであった。


カク「ご了承の程を…それはつまり。

我々を攻撃するという意味ですかな?。

…もしそうであれば、もう我々の武士団と衝突しているかもしれませんね。

場所は、チロット市付近で。」


マクキッド「武士団…ですと?。」


カク「そうです、交戦状態に陥った時、我々は名を改めて戦うのだという決意表明をする事にしていました。

その名前が、カラハット武士団。

私や創業者のキノシタさんの祖国の、歴戦の兵士の名前を冠しています。

構成員の多くは、あなた方“北方系”が青山地区に連れてきた異人です。


しかし、財政破綻をしていた青山地区の人々を我が社に受け入れ職を与え、アレクサンドロフスクカラハットスキー市を中心に同地区内での影響力を強め、彼らの子供達の世代も我が社に入ってくる。

そうすれば、最早我々の子供達であり、それはつまり“北方系”でありながら“帝国”の遺児なのです。

彼らに武士(もののふ)の名前を与えるという事は、彼らに武器を与え信用しているという事です。

人種を越えて共に戦い、強大な敵を屈服させようと言う意思表示であるのです。

先の大戦で“帝国”の先祖達がした様に。」


マクキッド「我らのカラハット正規軍を止められる筈がありませんぞ?。

交戦状態に入ったとなれば、あなた方はもう後戻りできませんな。」



ジェル分隊は索敵部隊の報告を聞いてから、目視で武士達を確認した。

青い目をした色白で長脚という、明らかに同胞である武士達をである。


ヤナ連隊長は直ぐ様チロットへの退却を命じた。

的の数は1万という大軍であり、ヤナ連隊3千の3倍の兵力であったからである。


チロット市に籠ったヤナ連隊は、市街地に敵を入れない様に戦闘を行う事となる。



第17話 終

チロット市の存在は創作です。

チロットとは、アイヌ民族の言葉で「鳥の集う所」を意味します。



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