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ズヴェーリ 英雄叙事詩   作者: 乘
序章
1/36

あの日

初めての投稿ですので文章が(つたな)い所も御座いますでしょうが、何卒ご贔屓(ひいき)にお願い申し上げます。


作品のストーリーは既に完成していますので、特別な事情がない限りは最後まで投稿致します。



作品内の登場人物に、実在の人物をモデルにしたキャラクターが登場します。

ですが、あくまで創作作品ですので、時代背景等は一切関係ありません。


ただモデルにした人物達の出身地にのみご注目下さい。

ズヴェーリ 英雄叙事詩


序章



ズヴェーリ(Зверы)

それはこの世界に住む“獣”全般を指す一般名称の事だ。

ズヴェーリとは、熊や虎、狼の事等ではない。

この世界に住むおぞましい見た目をした生き物の事である。

彼らは牙や羽、爪を持っていて、火を吹くのだ。

一見、害しかない存在に思えるが決してそうではなく、人々は古来よりズヴェーリ達と協力し、お互いに支え合いながら共に暮らしてきた。

そんな世界に住む一人の少年シュウジは、今日から二人の友人と共に夏休みを利用したちょっとした旅に出る。


シュウジ「今日で俺も10歳だ!。

この日が来る事をどれだけ待ち望んだ事か!。」

彼の名前はヤマベ・シュウジ。(山辺秀二)

10歳の誕生日を迎えた少年である。

両親から10歳になったら夏休みに旅に出る事を許されていた為、この日を夢に見る程待ち望んでいた。

色白で顔の堀が深く、黒目で黒髪、身長は142cm。


ユーリ「そうですねシュウジ。

これでやっと、皆でこのナチナ町から旅に出られますね。

今すぐにでも出発してしまいたいですよ。」

彼はユーリ・スタローナエヴィチ・スクリーチン。(Юрий Сторонаевич Сκрычин)

今年で14歳になる少年で、金髪で黒目。

高過ぎる鼻と眼鏡が印象的な博識の少年。

少々、根暗っぽさがあり年下のシュウジに敬語を使う不思議ちゃん。

身長は169cm。


アイナ「あら、二人だけでお話してるの?。

ズルいから私も入ーれて!。」

彼女はアイナ・エカチェリーナエヴナ・マミヤ。(Аина Екачеринаевна Мамия)

16歳の容姿端麗な美少女。

学校の成績はまずまずだが、バレエは得意。

白い素肌に赤い唇、堀が深く眉目秀麗(びもくしゅうれい)

身長は160cm。


ユーリ「シュウジはご両親に、ちゃんと挨拶をしてきたんですか?。

夏休みは残り1ヶ月ちょいもありますし、ちゃんと行ってきます位は言っておかないと心配されますからね。」


シュウジ「分ーってらい。

アイナ、アイナはちゃんと挨拶はしてきた?。」


アイナ「勿論よ。

私は何年も前から許可貰ってるから、置き手紙でね!。

…3人揃って州都の大都市、カイ市へ行く。

待ち遠し過ぎて、昨日は眠れない位だったわ…。」


シュウジ「そうだな。

あの日から、ずっと待ってた…。」


ユーリ「アイナ宅で、“闘獣”州王者決定戦を視た時からですね…。」


アイナ「あれから、ユーリはすっかりズヴェーリヲタクになっちゃったわね。

あのTV中継が、余程の衝撃的な経験だったのね。

あの時のユーリは、まるで覚醒(かくせい)した様だったわ。」


シュウジ「覚醒…それは的を得てるぞ!。」


ユーリ「そ…そうですか…?。

まぁ、衝撃的だったのは確かですけど…。」



3人は2年前に“闘獣”と呼ばれるズヴェーリ同士の格闘技を、TVの生中継で視聴した事があった。

ズヴェーリには、例えば犬や猫といった動物とは異なる大きな特徴がある。

それは、総じて高い知能を持つという事だ。

彼らは人間と共に暮らす中で、人間の言葉や表情をある程度は理解する事が可能になって、調教し互いに闘わせる“闘獣”という文化が世界中に存在していた。

それはこの場所、通称“北方の大国”カラハット州カラハット島でも例外ではない。

特にこのカラハット州は世界大会でも常に好成績を収める、言わば“闘獣”の強豪であった。

話は、シュウジ、ユーリ、アイナが“闘獣”州王者決定戦を視たとある日の夜に遡る。



回想


“闘獣”を家で視よう。

アイナに誘われた8歳のシュウジは、カラハット州という日夜雪が降り続ける雪国の大地で、アスファルトで舗装(ほそう)等は(ほとん)どされてない、林の中の田舎の車道を母親に車で運んで貰った。

そうしてアイナ宅の駐車場に停めて、車外に出たら防寒具を着用していても肌寒く凍えてしまう様な玄関前で待って、そうしてアイナ宅入っていった。


シュウジ「アイナ、来たよ!。」

シュウジはリビングに通して貰い、中に入るなり元気にそう言った。

そこには先に到着していたユーリの姿があった。

アイナは笑顔で迎えてくれたが、ユーリはそうではなかった。

当時のユーリはかなり口が悪かったのだ。

だから、少し遅れて到着したシュウジに悪態を吐いてきた。


ユーリ「やっと来ましたかシュウジ。

あんまり遅いから、元々少なかった観戦意欲が更に減ってしまいましたよ。

本当に、()えました。」


アイナはユーリのこの態度に激しく怒っていた。

まだ始まっていないのだから、そんなに冷たく言う必要はないのだと…。

しかし、この光景はいつものものだった。

ユーリがシュウジに悪態をついたりすると、アイナがユーリに怒る。

シュウジは、わざわざ喧嘩をするならば呼ばなければ良いのにと思った。

アイナの父が一言、そろそろ始まると言った。

すると、アイナの母はアイナに対して、シュウジを席に座らせて静かに視なさいと告げた。


シュウジ「ご、ごめんユーリ。

俺が、もっと速く来てれば良かったんだ…。」


アイナ「ほらシュウも謝ってるんだから、ユーリも悪態吐いた事を謝んなさいよ!。」


ユーリ「悪態も何も、最初から少なかったものが更に少なくなったと感想を述べたに過ぎませんからね…。」


アイナ「それだったら、述べる必要なんかないでしょ!。

いつも訳分かんない屁理屈言うの、止めなさいよね!。」


シュウジ「二人とも、始まったよ…。

座ろうよ。」


アイナ「うん。

…ユーリも隣に来なさいよ…。」


ユーリ「勿論。

そこはTV画面が良く視られる特等席ですから。」

本当は視たいんじゃんと、アイナは心の中で言った。


シュウジは、良く喧嘩をする二人をうるさいと思っていた。

そして、どうしてもっと早くに家を出なかったのだろうと後悔した。

しかし、それは無理だった。

よくある話だが彼は勉強が苦手で、小学校の宿題に時間が掛かってしまったのだった。


突然TV画面のリポーターは、意気揚々と“闘獣”州王者決定戦の開幕を知らせた。

しかし、全く空気の読めないその高揚した声は、普通なら画面の向こうの視聴者をも高揚させるものであるのだろうが今のアイナ宅では、全く木々のない所で吹く風の様に誰の心をも揺さぶる事なく吹き抜けていった。

TVの中では現王者のシャクシャインが登場し、次いで挑戦者のチェリミンスカヤが登場した。

両者は舞台の上手と下手から手を振りながら現れ、観客席からの盛大な歓声を浴びながら中央の舞台へ歩みを進めていく。

その間も歓声は止む事はなく、この世界に於ける“闘獣”の人気を物語っていた。

そんな、画面の中の観客達にユーリは冷めた目付きをしながらこう(つぶや)く。


ユーリ「ただの物理的な殴り合いに、わざわざ観戦する程の魅力があるとは思えませんがね…。」


彼のそんな言葉を無視するかの様に観客達は盛り上がり続け、そのまま王者と挑戦者は舞台上に上がり対峙した。

二人は小声で会話している様だが、内容までは聞こえない。

会場中が二人の言葉を聞き取ろうと、急に静かになる。

するとどうだろう、画面の前もいつの間にか静かになっていて、緊張感が漂いだしていた。

そのまま画面に惹き付けられ、いつしか舞台上の二人は一体何を話して居るのだろうか?。

そういう疑問が頭の中で膨らみだしたがそれは、この二人にしか知り得ないものなのである。

人々の注目を浴びながら、外には伝わらない会話をする。

これは、“闘獣”をしてこの舞台に登った者同士にしか分かち合えない体験なのかと思うと、胸を打たれた。


アナウンサーは、チェリミンスカヤがシャクシャインの背中を二回叩いて、二人が笑顔で離れ、そのままズヴェーリの調教師を意味するトゥリーニル(Тренер)の所定の位置に付いた事を実況した。

その言葉に誘導され身を引き締めたシュウジは、それと同時に画面の中で切り替わり映った観客席の映像を見た。

するとそこには、自分と同じ様に身を引き締める観客達が映っており、会場と画面の前が同じ景色を見ている事をようやく実感したのだった。

普段はトゥリーニルを支援する出資者が、二人のズヴェーリの首に、鎖を繋いでそれを引っ張って来た。

すると、シャクシャインの叫び声が響く。


シャクシャイン「行けトミカムイ、相手のズヴェーリを斬り刻め!!。」

彼はシャクシャイン。

“闘獣”カラハット州現王者の老人。

ズヴェーリのその圧倒的な戦闘能力と、上手く操るシャクシャインの技量により数十年間王者の座を防衛してきた。

その為、人は彼の事を絶対王者と呼ぶ。

白髪が特徴的な巨漢。

身長189cm 体重74kg。


チェリミンスカヤ「レタル、トミカムイと正面衝突しなさい!。

今日であの老獪に引導を渡して差し上げなさい!。」

彼女はナタリヤ・エフゲーニエヴナ・チェリミンスカヤ。(Наталья・Евгниевна・Челимьнская)

数十年間“闘獣”州王者であるシャクシャインと唯一肩を並べられる女性で、次期王者とも呼び声高い。

二足の草鞋(わらじ)を履く彼女は、“闘獣”のトゥリーニルとしてだけではなく10~20代向け雑誌のモデルでもあり、当年代女子からの支持が厚い。

長身の美人で30代。


アイナ「チェリミンスカヤさんだわ!。

マジで綺麗なんだけど!。

こんなに綺麗なのに王者と闘うなんて、ヤバくね!?。」

両者のズヴェーリが勢い良く衝突し、煙が立ち込める。

煙で画面の中が灰色一色になり、ユーリが激怒していた。


ユーリ「これじゃあ中継を視てる意味がありませんよ!。

皆無!。」

激しい煙の中に響く二人の怒号の様な声は、それだけでこちらが萎縮してしまう程に激しく、煙が消え去る頃には舞台上は血祭りになっていた。


シャクシャイン「どうしたトミカムイ。

息が上がっておるぞ…?。

(わし)は貴様をもっと我慢強いズヴェーリだと思っていたがな。」

シャクシャインの言葉を聞いたトミカムイは雄叫びを上げ、傷だらけの4本足を動かし、角の様に尖った頭部でレタルを突き、両手で覆い被さる様に反撃を仕掛けてきたレタルの中に入り込み、そのまま無防備なレタルの腹部を突き上げたのだった。


レタルは血を吹き出し、ダミ声の様な苦痛の叫びを上げた。


ユーリ「うぎゃぁぁぁぁ!。

レダルン"ン"ン"ン"!!!。

急いで体勢を整えるんですよぉ!!。」


アイナ「うるさいユーリ!。

盛り上がってるのは分かるけど、少し位は静かにしなさいよ、バカ!。」


ユーリ「バ、バカですとぉ!。」


アイナ「あぁもう、バカうっさい!。」

ここは会場とは違う世界なのだとシュウジは思った。

先程画面に引き付けられてから覚えた感覚が徐々になくなっていくのが分かった。

また同時に、血流が良くなってしまっていて妙な心地よさから思考力が落ちていき、なんだか身がプルプルと震えて顔が赤くなっている感覚を覚えた…。

つまりは、自分が怒りを覚えている事を悟ったのだった。


チェリミンスカヤ「レタル、守りに入っていてはダメだわ!。

上からまとわりついて、場外に押し出しなさい!。」

まとわりつかれて上から一方的に噛み付かれたトミカムイは、背中から血が滴り落ちながら、またしても激しく叫び声を上げた。

近寄ったカメラは、無様(ぶざま)にも口を開け血の混じった(よだれ)を垂らしながら、白目を向いて今にもくたばってしまいそうなトミカムイを映し出した。


チェリミンスカヤ「レタル…貴方にトミカムイを倒すだけの技量はないわ…。

トミカムイは全長180cm程度体重300kgと体格の大きいズヴェーリ。

しかし、貴方は全長140cm程度体重80kgと比較してみれば圧倒的に小柄だわ。

だから…戦闘不能に追い込まなくても良いの…ただ、貴方の得意技である敵の行動の乗っ取って、場外に追い出してしまえば良いのよ!。」

“闘獣”の基本ルールは、2つと至極単純。

相手を戦闘不能にするか、場外に追い出すかだ。


チェリミンスカヤ「やりなさいレタル!、暴れさせて理性を奪うのよ!。

その内に狭い舞台上から出てしまう筈だわ!。」


シャクシャイン「トミカムイ、儂との訓練の日々を忘れたのか目を覚ますのじゃ!。」

目を覚ましたトミカムイは体を勢いに任せて仰向けにした。

押し潰される寸前に背中から離れたレタルを、シャクシャインは見逃さなかった。


シャクシャイン「トミカムイ、体を掴んで地面に叩きつけろ!。」

シャクシャインの指示通りに動いたトミカムイによって地面に叩き付けられそうになったレタルは、咄嗟(とっさ)にトミカムイの右腕に巻き付いた。

最後の気力を絞ったトミカムイは、自分の右腕ごとレタルに噛みついた。

自分の約1/3の体重を持ち上げるその怪力は、見るものを圧倒する鬼気迫るものがあった。

そのままトミカムイはレタルを戦闘不能に追い込もうと、痛みに耐えながらレタルごと自分の腕に牙を押し込んでいく。

しかし、ここでチェリミンスカヤは奇策に打ってでた。


チェリミンスカヤ「痛みに耐えなさいレタル!。

苦しいのは敵も同じよ!、だから…。

貴方も右腕に爪を立て、牙で噛み付くのよ!。」

舞台の上は、血を吹き出しながら敵の肉片を噛み千切らんとする、修羅となっていた。


ユーリ「これは痛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!。

やめれぇ!!!。」

この時、奇声を上げるユーリを見つめたシュウジとアイナのに目は、ユーリが覚醒している様に写ったのだった。

2匹のズヴェーリは互いに血の混じった涎を足らしながら、体に食い込む牙からは血が溢れだしていた。

数十秒間その様相(ようそう)から画面は状況は変わらず、そして根比べに敗れたトミカムイは倒れた。

トミカムイは戦闘不能となり、会場のチェリミンスカヤのファンは、喜び上がった。

しかし、アイナは違った。

初めて視る“闘獣”の(むご)たらしさに絶句していた。

それはシュウジも同じで、生まれて初めて視るズヴェーリの勇姿に恐れ(おのの)いてしまっていたのだ。

そして、幼い体にそれは刺激的過ぎて、シュウジはいつの間にか疲労からウトウトしだしていた。


アイナ「疲れてお腹すいちゃった。

ママァ、なんか食べたい…。」


ユーリ「アイナ、夜食は避けた方が良いですよ…。」


アイナ「何で?。

太るから?。」


ユーリ「バカになるからですよ。」


アイナ「いい加減にしなさいユーリ!。」

眠りに落ちる前には、こんな二人の不毛(ふもう)な喧嘩が聞こえていた

目が覚めると、そこは布団が敷かれたアイナ宅の子供部屋であった。


アイナ「ごめんねシュウ。

起こしちゃった?。」

アイナの心配そうな表情とは異なり、ユーリは嬉しそうであった。


ユーリ「シュウジ、僕の夢の話を聞いて頂きたいですな!。」


シュウジ「んん、まぁ良いけど?。」


ユーリ「良くぞそう言ってくれましたシュウジ君…。

良いですか、僕の夢は…。」


シュウジ「トゥリーニルに成りたいんでしょ?。」

一度眠りすぐに目を覚ました事で、妙に頭が冴えていたシュウジは、これで間違いないと思い言った。

そのまま、少しの間が空いた…。

ユーリは表情を変えずに居たが、明らかに目が泳いでいた。

言おうとした事を先に言われて調子が狂い、気持ちが悪いのだろうか。

それとも、これから告げようとした夢という大それた表現をした

ものを、すぐに察せられてしまって恥ずかしいという事なのだろうか。

後者であれば、きっと屈辱的(くつじょくてき)であろう。

そうシュウジは思った。

もし後者であれば、その恥ずかしさを悟られまいとせめてもの苦し紛れに平気な振りをしているのだと、推理できる。

シュウジは妙に冴えた頭で、ここまで考え抜いたのだった。

ユーリは一言だけ、違うと言った。

じゃあ何ととっちめるシュウジに、ユーリは答えた。


ユーリ「僕の夢は、トゥリーニルを支える人間になる事なのです!。

なので具体的には、出資者として情報提供も兼ねた支持者になりたいのです!。」


シュウジ「はえ…?。」

シュウジはまさかの言葉に、ポカーンとした。

何故、トゥリーニルではなくそんな裏方なのだろうと思ったが、変わり者のユーリだからなのだろうと思った。

そうしていると、冴え渡っていた頭は働かなくなっていって、再びシュウジは睡魔に襲われてしまった。


シュウジ「ユーリって変なやつだな…。

ホワァ。」


ユーリ「良いですか、シュウジ。

トゥリーニルは、誰でも始められるものです。

州予選の様な権威ある大会等に出場するのは、もちろん氷山の一角ですがね。


でも、僕の目指す立ち位置には誰でも成れる訳ではないのですよ。

“闘獣”の出資者になるには“獣王”にならなくてはなりません。

僕には…激しい闘いの中で臨機応変に指示するなんて自信がありませんから…。

だから、僕は側で“獣王”を育てる人間に成りたいんです!。」


シュウジ「へえそうなんだ。

“獣王”に成らなくちゃなんだね。」

ユーリに対して彼の言った言葉を繰り越す事でちゃんと聞いているよとの表現をしつつ、めんどくさいから話を終わらせて眠りに就こうとした。

眠ろうとする体に対してシュウジの頭の中では、反芻(はんすう)する自分の言葉に意識が向かっていった。

すると突然…彼は目を開けて布団から飛び上がった。

“獣王”という、幼い少年にはカッコ良すぎるその言葉の響きに興奮して、目を覚ましたのであった。

そして彼はユーリに、“獣王”とは何なのかを質問攻めにした。

ユーリに()れば“獣王”とは、ズヴェーリに関係する大会や研究等で、人類に多大なる感動を与えたり貢献をした者にのみ与えられる、名誉ある特別な称号との事であった。

アイナに依れば、チェリミンスカヤはモデルとしての人気を持つ人間が、“闘獣”をしたことによりそれの人気を高めたとして、“獣王”の称号を得ているのだそう。

シュウジの中に、中継で視たズヴェーリの勇姿が(よみがえ)ってきた。

確かに覚えた感動や恐怖といった衝撃が、彼の中で憧れと化していった、

そしてこの日以来“獣王”という存在が、彼の心を支配していったのだった。



現実


シュウジはその日以来、心に固く誓っていた。

“俺は獣王になる”。

その為に今日の旅を2年も待ち望んでいて、ズヴェーリとの特訓の日々を積んでいたのだから。

彼の目的は、“獣王”になる為に旅をしながら、この夏休みの期間に行われる州王者への挑戦者を決める予選に参加する事である。

彼らはこれから子供だけで旅に出る。

彼らの夢を叶える為に…。



序章 終

※1部、文言を付け足しましたが物語自体は変わっていません。

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