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魔法禁止の武闘大会が無事終わった。
私的には特に関係ないんだけど……出れるわけも無いし、役割も無いし。友人とキャッキャウフフと楽しく観戦するのみ。
けれども、フェリーナは、さすがヒロインと言うか……これも強制力……いや、当然の措置?と言うか何と言うかで、その大会に関わることになったのだ。
武闘大会。
剣術のみで闘う大会である。
もちろん刃先は潰れていて切れないようにはなっている。けれども、真剣勝負だ。毎年騎士団のお偉い様方も見に来る、大事な大会だ。相手がケガをしないように、なんて配慮はない。
つまり、ケガ人が出てもおかしくない大会なのである。
そして、そんな大会であるのになんの対策も無いなんてアホなことは無い。
救護班として、光魔法……ま、つまり治癒魔法がある程度使える生徒は、強制的に参加させられるのだ。もちろん、成績に加算されるし、カフェのタダ券も貰えるらしいので、理不尽ってことは無い。それに、出場者と接点を持てるかも知れない数少ないチャンスである。大体の生徒は、名誉あることだと喜ぶ話なのだ。
けれども、出来るだけ攻略対象と接触したくないフェリーナからすれば、最悪である。
何故なら、攻略対象であるシルヴァン、アルバート、隠しキャラであるディアレンが出場するためである。
うっかり知り合って、興味を持たれたらルート発生である。
問答無用で強制力がスタート!ってなったら、逃げるのは大変である。
乙女ゲー怖い。
そんでもってねぇ。
強制力関係無く、こんな美少女にケガ治して貰えたら、ねぇ?コロコロコロって、面白いようにときめくんじゃない??
そんなわけで、私たちは気に入られないように、乙女ゲーの知識を総動員して対策を練ったのだ。
「とりあえず、あざとさが必要じゃない?こう、媚び売る感じ?そういうの、嫌いでしょ?全員……」
「ぶりっ子ってことね!」
なんてわけで、ぶりっ子の練習をし。
可愛いから似合っちゃってイマイチ、嫌なぶりっ子さって言うのが分からなかったけど。
そして、冷静になって、これはダメね……となって、辞めた。
女子を敵にするのは、ダメ。一番ダメ。女子に気に入られるのが、円満に過ごすコツだ。
「それと、ツンデレ禁止よね!生意気な女は封印よ!イラッとしても我慢よ!我慢!」
これは、俺様何様なディアレン対策である。
少女漫画にありがちな“俺に口答えする珍しい女”にならないように注意だ。
「う……私、ディアレンって苦手なんだよ~。何度イラッとしたことか……」
フェリーナの呟きに私も大いに頷く。
「分かる。私も俺様得意じゃないし、たぶんディアレンルートやって無いわ。俺様って二次元だから許せるキャラでしょ?その二次元でも微妙なのに……現実で見たら、ねぇ??」
何様よってことよ。
いや、まぁお貴族様なんですけど。
ディアレンに至っては公爵家嫡男様なんですけど。
そう、俺様が許される立場なんですよ。
それに、貴族の子息にはわりとガチでいる。俺様って。それも、二次元で格好良いと言われるタイプじゃなくて、ガチで無いわーって感じのタイプが。
それに比べたら様になってる俺様何だけどね?
「あと、必要以上にビクつくのもナシよ」
「うわぁ。気を付けます……」
そんな理由で目を付けられたら、ねぇ?
遊ばれるに決まっている。嫌な方向に。怖い。
「アルバートは、うん。適当にあしらうしか無い」
「うう。一番ハードルが高い……」
「あ、でも、シルヴァンは、大丈夫そうだよね」
ほっとしたようにフェリーナが言うのに、私も頷く。
「よっぽど何かしでかさない限りは」
と言う具合に対策を立て。
ま、対策を立てたところで、人の心はどう動くかなんて分からないのだけれども。
それに加えて、一番の重要事項は、イベント対策である!
確か、決勝戦でアクシデントが発生し、余興で使われるはずの魔物が脱走し、決勝戦で戦っていた二人が大ケガをするのだ。
それで、それをヒロインが助けたことから親密度が上がるのだ。
うん、困る。
大ケガをした人を見捨てるわけにはいかないし、だけど、助けたら十中八九恋が始まってしまう!
とんでもない吊り橋効果である!
そんなわけで、その余興を潰す作戦に出ました。
そもそも、この余興、どこだかの貴族が勝手に推し進めたやつで、云々みたいな。何か陰謀的なのがあったような無いような。
それを、こっそりとソフィア様に伝わるようにお手紙を書き……匿名でね。怪しいけれど、捨て置かれることは無いはず。
捨て置かれたら、とても不本意だけれど、脱走が起きないように見張ろうと思っていたんだけど、きちんと調べてくれたおかげで、その催しが無くなりました!
やっほい!
ソフィア様有能!さすが!
もう、どうにかルーファス殿下とくっついて貰えるように協力しようと思いましたよ!
そうしたら、フェリーナも平和ですしね!
もちろん、強制力が働いて、魔物の乱入!なんて無きにしも非ずなので、気は抜けなかった。
私、転生チート無いからね!
私が蹴散らしてフラグ折るわ!なんて言えなかった。
出来て、最初の不意打ちの一撃の時に、シールド張るくらい。それで、あとは攻略対象チートで頑張れ☆ってするくらいよ。
うん。
まぁ、特にそんなイベントは起こらず、無事に終わったのだ!
そんなわけで、私はフェリーナの貰ったカフェのタダ券で奢ってもらっている。
表向きは何事も無かったけれど、フェリーナ的に何も無かったかは、分からないので報告も兼ねて。
「やっぱり、ショートケーキなのね?」
私の前にはチョコレートケーキ、フェリーナの前にはショートケーキ。
ゲームの世界でのヒロインも、ショートケーキが好きだった。
そうそう、エリオネル君に代わってもらったイベントの時も、王都のカフェで“ショートケーキ”を食べたい!って言うものだった。
さすがに、食べるケーキを限定するのは可哀想なので、そこは指定しなかったが。
そんなわけで、度々ヒロインがショートケーキを食べるシーンがあるのだ。
前世の記憶があるのなら、その辺の嗜好は引きずられそうだけれど……。
「そうなの。前はそうでも無かったんだけど、なんて言うか“ショートケーキ”って、憧れの象徴なの。女の子の、“ハイヒール”って言うのかな。だからね、これを食べるのがすごく、幸せだなぁって思うんだよね」
「なるほど」
そう言えば、エリオネル君も、そんなようなことを言っていた。学園のカフェでショートケーキを食べるのが夢だったって。それを聞いた時、ヒロインが過ぎない?と思ったのだ。
でも、それを聞くと、私はやっぱり恵まれた生まれなんだなぁ……って、反省する。
調子に乗ってチョコレートケーキとか頼んで、ごめんなさいって感じ。
「ふふ。贅沢品だけどね。平民でも手の届くケーキ屋さんってあるのよ。でもね、どうしてか“王都のカフェ”で“ショートケーキ”を食べるって言うのが、ポイントなの。そう言うの、あるでしょ??」
私の落ち込みを察してか、フェリーナはそう言ってフォローしてくれる。
優しい。
でも、そう言われると何となく分かる。
その場所に行くことに意味がある的なやつね。
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