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「だって、所詮、私平民なんですよ!平民でしかない学生上がりが、長男じゃないとは言え伯爵家の先生とすぐ結婚なんて上手い話、それこそゲームだからこそですよ!」
なるほど、フェリーナは大分堅実だ。そして、たぶん、とても策士だ。
と、色々考えていた頭に聞こえてきた言葉に思う。
もう何回目になるか分からない納得だけれども。
「うーん、確かに?」
そうかな?
どうなんだろうか。
その家の風潮にもよるしな。
ガチガチの貴族至上主義とか、魔法主義だと無理だろうけど、貴族の三男以下は自由だったりする家もあるしね。
でもま、子供を保護する法律もなく、年の差婚なんてざらにあるこの国だけど、先生と生徒って言うのはやっぱり、外聞は良くない。
元々の婚約者とかだったりすると、大分話が違うけどね??
そう言った点で考えると、確かに現実味がないっちゃない。
だけど、じゃぁ、どうするつもりなんだろう?
平民であることは、覆しようのない事実だし。
「じゃぁ、どうするの?思い出にするってこと??」
諦めた様な言い分では無かったと思うけど……と思いながら問う。
「いいえ!そりゃ、良い思い出が出来ればなぁとは思いますけどね!出来ればゲットしたいわけです。そのために、私はこの学園の先生を目指しているのです!!」
どん!
と、胸を張るように宣言するフェリーナ。
なるほど?
でも、それはそれで中々ハードルが高いような??
「平民でこの学園の先生は少なくないけど、女性ってなると余計に狭き門だと思うわ」
「忘れたんですか?私、この世界のヒロインなのよ!!努力は私の味方をするわ!それに、友情エンドを迎えた場合、成績によっては、宮廷魔術師になるみたいな感じだった気がするんだけど、宮廷魔術師になれるなら、学園の先生も夢じゃないかなって!」
こんなに、頼もしい“だって、ヒロインだもん”を聞くとは思わなかった。
ちょっと、かっこいいとさえ思ってしまった。
「たしかに……?」
お花畑ヒロインの、だってヒロインだから!の叫びとはわけが違う。
「なので、勝負は学園の先生になってからだと思っているのです!」
「それは、すごく長期的な戦いね……??」
逆光源氏計画的なもの感じてしまう。
いや、光源氏読んだことないけど。なんとなく。
そしてやっぱり、策士だ。
つまりは、学生のうちは可愛い気になる生徒で居て、立派な先生になって帰ってくる……。うん、ドラマでありそうなやーつ。
そして、フェリーナは、確実にヒロインの可愛さが分かっていての計画だ。
すごい。
「そうなのです。だから、学生のうちは真面目な一途な生徒で居たいのです……」
「確かにそれは、問題は起こせないわね……」
うん、何かあれば、先生なんて不可能だからね。
「でも、もし貴女が先生になる前に、バーナード先生に恋人か奥さんが出来てしまったらどうするの?」
ちょっと、残酷な質問になってしまったなと、言ってしまって後で気付いたけれど、もう遅い。
「それが、一番の心配です。恋人の場合はまだ希望があるので、先生になるのは諦めないと思います。結婚してしまったら、そうですね。前世の想いも含めて、ハッキリと告白して、この想いにケジメをつけようと思っています。それは、私が先生になる前でも後でも、なれなかった場合でも……」
しゅんとしながらもそう言う姿は、凛としていて、紛うことなき“ヒロイン”だった。
「……羨ましいです。ハッキリとした目標があって」
思わずポロリと気持ちが零れるくらいには、感動した。
そこまで想定しているなんて、本気も本気だ。
「そうですか?私は時々、前世の気持ちに引っ張られて、それで良いのかって思いますよ。それに、私は先生の好むタイプを知っているわけですし。少しずるです」
「前世も含めて貴女なわけだし、そうやって真っ直ぐに想えて、真っ直ぐに向かっていけるのは、格好良いと思います。……それに、そこはズルと言うよりは、やっぱりヒロインなわけだし」
「ズルって言えば、その容姿だってズルですよ。十分に。それに平民で、光魔法が使えて……印象に残らないわけがない。なんで、バーナードルートの選択を全部覚えてたって、ズルには、ならないでしょ。そもそも、その容姿で熱心に勉強を聞きにくれば、どんなこと言ったって可愛いですよ。十分に。なんで、些細なことですよ」
うん、その容姿で、調子に乗らないところが、十分に偉い!
私ヒロインになったら、散々バカにしてたけど、第二王子ルートやるよね!シルヴァンルートもいいかな。
なんて、調子に乗る。
推しがいれば、絶対落ちるやろ!って、そんな作戦考えないわ!
と、思いながら言えば、フェリーナは、少し嬉しそうに苦笑した。
「そう、ですかね?」
なんて。
「そうそう。ヒロイン特権でしょ。逆ハーとか企まない限り、悪役令嬢的な逆断罪も起きようがないし、気にする必要ないよ」
もし、前世の知識があるから大丈夫って、タカくくってたら、こんなこと言わないし思わないけど、ちゃんとダメだった場合も考えてるなら、それはもう、ね。ズルとかじゃないって思うのは、贔屓かな?でもね、そう思っちゃうのよ。だって、ダメだった時なんて、普通、考えたくないもの。
そこまで覚悟できるなんて、滅多にないと思う。それで、ズルだなんだって責める気にはなれない。
「ありがとう……ございます」
そう言って笑うフェリーナは、やっぱり美少女で、ヒロイン特権すごいなって思うし、普通に羨ましい。私も美少女になりたかったー。いや、前世に比べたら十分すぎるほどに、可愛くは生まれたのだけれど。うん、両親に感謝。
でもね。現実は非情なのよ。
周りの顔面偏差値がおかしいのよ。とっても高いのよ。そうなると、多少可愛くなったくらいじゃ、モブなのだ。所詮。うん、理不尽。環境によって美醜感覚が変化するのは致し方ないことだ。
「あの、私……こんなことお願いしていいのか、分からないのですが……お友達になってもらうことは、可能ですか?」
普通に、転生者同士なのだから、前世の感覚で、『これから仲良くしましょ!』みたいな感じでも悪くないのに、ここでの身分を気にしたような態度なのは、フェリーナらしいと思えた。
たぶん、こういう人だ。
とても、気にしているのだ。
自分がヒロインであることを。そして、それを上手く利用する気もあるし、けれどそれに溺れないように、とても気を遣っているのだ。
うん、私より色々考えてて、なんか落ち込むわ。
私なんて、ゲームのキャラ見放題じゃん?!ひゃっほー!くらいしか考えてないのに。
やっぱり、ヒロインって、荷が重すぎる。
フェリーナは、たぶん、立派なヒロインだ。
間違いなく。
「もちろん!大丈夫よ!……あ、でも私の家ってホント権力とかと無縁だから、力ないからそう言うのを期待されると困るわ!」
にっこりと返した後に思い出したように、そう言えば、フェリーナは、苦笑する。
「そう言うつもりでは無いですよ。転生仲間を見つけられて、ただ嬉しいのです。そして、それだけじゃなく、仲良くしたいと思ってしまったのです!」
真剣な眼差しでフェリーナが言うものだから、言葉のチョイスを間違えたと言うか、余計なことを言ったと言うか……うん、失礼だった。
「……変なこと言ってごめんね。そんなつもりじゃなくて、いざと言う時なにも出来なさそうでごめんねって意味。私もね、貴女のその、ヒロイン計画、楽しみにしてる」
ちょっと、恥ずかしいけど、私はゆっくりと右手を差し出した。
こう言うのって、なれないと、何だかサマにならないな。
フェリーナは、嬉しそうにその右手をとってぶんぶんと振ってくれた。
「よろしくね!」
「よろしく!」
私はヒロイン様と友だちになってしまった。
なんと言うか、やっぱり当初の予定とはズレている気がする。
一番の要と関わってしまうなんて大誤算。
だけど、まぁ、悪くないなんて、その時は思えた。
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