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「……君は、王族の姿絵等、一度も見たことが無いのか……?」


 呆れたようにフェリックが問う。


「王族の……?そうですね。国王陛下は学校で姿絵を見せられましたけど、他の王族の方は見たことないです……女の子たちはきゃっきゃと集めてたりしたみたいですけど。さすがに……」


 なぜ、学校では王子たちを教えなかったのか!

 国王陛下さえ認識してれば十分だってことか!


 ……確かに田舎なら取り立てて知る必要は、無いのかもしれない。関わることがほぼないのだし。

 私も、この学園に通うことが無ければ、学んでいなかったかも知れない。


 ましてや、男子となれば好き好んで王子の姿絵を目にすることも無い。


 うん。


 エリオネル君のお兄さん、お姉さん、何故、この学園に第二王子が通っていることを教えなかったのですか。そして、その姿を、叩き込まなかったのですか。

 学年が違うからですか。

 確かにほぼ接点は無いでしょうが、万が一があるじゃないですか!


 無邪気に話しかけるヒロインの如くなってますよ!状況により、半端ない不敬です!

 相手が王女ならシャレになってないですからね!!


「……まぁ、そんなもんかもね。女の子は好きだけどね……」


 そうですね。

 姿絵に関しては、王族以外にも騎士団の騎士様とか近衛隊の騎士様とか……学園内で言えば、先生方や攻略対象たちとかその他イケメンで家柄の良い子息たちのものが密かに出回っています。


「エリオネル君……。プラチナブロンドは、王家の血を引く者に現れる髪色なのよ」


 いつまでも黙っているわけにはいきませんので、はっきりと教えてあげねばなりません。このままでは、偶然また会った時に、「この前の!」なんて言って、駆け寄る様が容易に浮かぶわ。



「……」


 私の言葉に、エリオネル君は固まって、一生懸命考えているようです。


「王家の血を引く……」


 なんて、呟いています。


 そう、王家の血を引く。

 ここが問題です。


 プラチナブロンドだからと言って、絶対に王族か?と問われると、否だからです。

 公爵家や侯爵家に王族が嫁入りしたり、婿入りしたりすることもあるわけで。そうなると、隔世遺伝でもプラチナブロンドが生まれる可能性は、無きにしも非ずなのです。

 どちらにせよ、身分が高ーい方と言うのは、間違い無いので、必要な知識ではあります。


「……では、あの方は……??」


 血の気が引いた顔でエリオネル君は、呟きます。

 困っていたから話しかけた。

 ただそれだけなのに、可哀想な話です。

 ですが、世の中理不尽なことだらけなのですよ。そんなもんです。



「たぶん、第二王子、ルーファス殿下よ」



「第二王子様……」


 ピシリ、エリオネル君は固まって絶句してしまいます。



 まぁ、無理もありません。


 王族なんて、雲の上の存在。

 知らなかったとは言え、気軽に話しかけてしまったのだから、そう言うの反応にもなる。


 乙女ゲームの中では、主人公が平民故に物怖じしないで王子並びに高位貴族に話しかけるなんてことがあったけど、本来なら平民の方が恐れ多いと距離を持つものだと思う。

 下位貴族も同じ。

 男爵令嬢だから、云々よくある話だけど、それは男爵令嬢だからと言うよりは、教養の問題。やっぱり普通は身分の違いを恐ろしい程に理解しているものだ。

 身分が下であればあるほど、罰を受ける可能性が高いのだから。

 だから、庶民故に無遠慮に高位の者に近付くなんてことは、ほとんどありえない。

 まぁ、たまに図太い人と言うのは、存在するけれど、それはその人の性格によるもので、身分は関係ないと思う。


 故に、エリオネル君はきちんと自分のしたことに気付いている。


 とんでもないことをしてしまったと、青ざめている。


 ……可哀想なことに。


 伯爵家の私にさえ恐縮していたのだから、王族なんて聞いたらそうなるわよね。


「エリオネル君、たぶん、大丈夫よ。それくらいのことで、お咎めがあるわけじゃ、無いわ。学園内のことだし。必要以上に接したわけでもないし……たぶん」


 たぶん、とつけてしまうのは、ルーファス殿下をよく知らないからだ。

 ゲーム内の彼なら、それくらい気にしないだろうし、むしろ、本気で感謝しているだろうから、大丈夫だろうけど、実際の王子の性格を、私は知らないのだ。

 猫被ってる可能性も否定出来ない。

 王族だもの、猫の一匹や二匹飼っているでしょう。


「……そうだね、そういう方面では大丈夫だよ。それよりも厄介なことが起きないといいけど」


 宥めながらもフェリックは、余計に不安になることを口にする。厄介なことって何?!


「ま、次会ったら自分からは話しかけない方が良いけど、向こうから話しかけられたら、開き直って会話した方が良いよ」


「開き直るなんて、無理です……」


 まぁ、知ってしまったら難しいわよね。

 うんうん。

 て言うか、向こうから話しかけられる可能性があるの?!何で?

 そんな迂闊な感じなの?第二王子って?



「その可能性があるってこと?」


 未だ現実を受け入れきれていない、困っているエリオネル君に聞こえないように、こっそりフェリックに聞いてみる。


「ま、ね。あると思う。最近、殿下が“面白い子に会った”って、言ってたって、聞いたし。たぶん、それ、この子でしょ?」


 “面白い子”ね。

 それ、本来ならヒロインな気がするんだけど。

 この状況的には、エリオネル君よね。

 こんな短期間にそんなに面白い子と呼べる人間に会うことはないだろうし。


 エリオネル君は、とんでもない人を釣り上げたなぁ……って思う。


「まぁ、救いなのはその“面白い子”が、男の子だったってことだね。そのこと話してたやつ、かなり焦ってたからねー」


 ……そりゃ、そうね。

 “面白い子”から、どう転ぶかなんて分からないし、それがキッカケになんて、よくある話だ。早めに対処していかないと、とんでもないことになったら、困るだろう。

 彼は第二王子なわけだし。


 そうなると、ゲームでも裏でヒロインを探ってる人が居るのかな?

 それなのによく、ハピエンまでいけるよね。

 その前に、対処されちゃいそうだけど。

 まぁ、ゲームはゲームだしね。

 裏も何も無いか……。


「エリオネル君のことを思えば、ちっともよくないと思うけどね」

「まぁ、でも、女子よりはマシだろ。別に下位貴族だからって、話しちゃダメってわけじゃないし。ま、ある話じゃないけどね。幸いここは、“平等な”学園内なわけだし。その上、この子は相当量な魔力持ちで、将来有望。殿下に目を掛けられてもおかしくはない……」

「そんなにすごいの?エリオネル君の魔力量……」


 まぁ、ここに通うことになるほどだから、相当だとは思うけど、そんな理由に出来るほどとは。目で見て分かるものじゃないし、授業風景を見る機会なんてあるわけないし、こうしてカフェでケーキを食べてるだけじゃ、とてもじゃないけど、分からないことだ。


「そうだね。一昔前なら、爵位をひっくり返せるほどには、あると思うよ」

「それは、とんでもない量では?」

「そうだねー。だから、心配にもなるんでしょ。俺が。柄にもなく」


 柄にもなく、の部分を強調するので、私がそう思っていたことが、バレていることに気付く。ホント、何でバレるんだろう。

 読心術でも持っているんだろうか。

 心を読む魔法なんてあったかな。……禁術に近いと思うのだけど。



「ま、なるよーに、なるでしょ。困ったら“先輩”に頼れば良いと思うよ」


 フェリックは、エリオネル君を見て、にこり笑いながら私の肩を叩く。自分ではなく私を頼れと明らかに言っている。

 いやいやいや。

 王族関係で頼られても困りますよ??

 うちなんて、簡単に吹き飛びますわ!


「うう。……これからは、もっと気を付けますぅ……。ミア先輩、フェリック“先輩”!頼りにしてます!」


 エリオネル君は、反省しながらキラキラとした視線を私とフェリックに送っている。フェリックは、明らかに私のみを差し出したつもりだろうけど、エリオネル君は強かった。なんて言うか、そう言うの効かないタイプの子だった。

 やっぱり、無自覚なヒロインタイプの子だと思う。鈍感力も中々のものだしね。


 はっきり、その頼るべき“先輩”の中に、フェリックも認識されたのだ。ドンマイ!

 可愛い後輩が出来て良かったね!

 そう言うの、無縁そうだしね!

 ほら、モテる男も女も同性から好かれるものじゃないでしょ??


「君はまた、失礼なことを考えてそうだね」


 なんて言われたけど、本当に、なんで分かるの??


「なんで分かるの?!」


 怖いんだけど。


「いや、分かりやすすぎるからね。そう言うこと考えてる変な顔してるから」


「変な顔……は、元からです!」


 本当に失礼だ。

 と言うか、あれだ。女子に向かって変な顔って!言う??

 しかも、この、女タラシが!

 他の子には絶対言わない!

 扱いが雑すぎる。本当に失礼だ。


「ふふ、はは。いや、元からってことないだろ……ちゃんと可愛い顔してるから安心しなよ」


 私のやけくその言葉に笑いながら、フォローしてくるけど、あの、不意打ちは本当に止めて欲しい。失礼なこと言って、そんなこと言われるとただのフォローとは言え、何かドキッとしちゃうから。

 そう言うことサラッと言ってくるから、困る。失礼なことも普通に言ってくるから、イマイチよく、分からないのだ。ただ、あまりにも普通に言うので、まぁ、言い慣れた言葉なのだろうと思うけど。

 愚かにも私は聞き慣れないのだ。

 特に不意打ちは禁止だ。上手くハイハイって流せない。


「な!」

「はは。元からだったら、変な顔なんて言わないしね」


「……普通は、元からでも何でも変な顔なんて言いませんー」



「先輩たちは、仲良いんですね!」


 私たちがそんなことで言い合っていれば、エリオネル君がそんなことを言ってくる。

 仲良い?

 誰が?

 誰と誰が??どこが?

 未だ、イマイチ距離感の掴めないこの人が?


「ウソだ!」

「そう?」


 私の叫びと、フェリックの呑気な問い返しがハモる。


 そのことに、エリオネル君は楽しそうにくすくす笑い、「ほらね?」と言う。



 そんなわけない。

 と、思いたい。


 だって、そのうち元通りになるはずだから。


 いつも通り、何にも関わらず外から傍観して、うふふと、楽しむ日々に戻るって。そうなるしかないって、そう思って……。


 そうでしょ?


 だって、現状、そうとしか、考えられないし、そう思ってないと……。


 曖昧なままフェードアウトしないと……。


 不味いことになる。

 困ったことになる。


 私は考えるつもりは無いし、気付きたくもない。



 ……そうでしょ?



閲覧ありがとうございます!

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