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 つらつらと、失礼なことを考えつつ、マダムキラーに(おのの)いてもいたのだけど、当のエリオネル君はやっぱりイマイチ分かってないのか、頭にハテナを三つほど浮かべながら、ケーキを口に運んでいる。


 ……やっぱり、エリオネル君は、奇跡のスルースキルを持ってるのかも知れないと、私は思わずため息を吐く。



「君にはそのままで居てほしくなるな……」


 と、ぼそりと呟き、ため息を吐くのはフェリックだ。

 多めの呆れと……後悔……?が混じるような態度。少しの期待、憧憬……?も見える気がする。

 何か、誰かと重ねているように見える。


 だから、らしくなく真剣なのかもしれない。

 意外なところを見たと思う。


 ゲームでは見られなかった一面に、何だか嬉しくなる。


 これぞ、転生特典と言うやつじゃなかろうか。

 例えヒロインじゃなくても、十分である。

 むしろ、バッドエンドの心配も、その通りにしないといけないみたいな強迫観念も無いし、……つまりは、モブってラクでいいわね。よ。

 バカにすることなかれ。


 まぁ、でも私がヒロインになっても、ガッツが無いからダメな気はする。ヒロインみたいな正直さとか、優しさとか、清廉さとか皆無だし。だからと言って、腹黒くあざとくも出来ないし。たちまちモブになる自信あるわ。

 悪役令嬢になっても同じかな。

 死亡フラグ回避!って、必死になれるか自信ないな。

 気高く完璧にとか無理そうだし、フラグ砕くのも自信ない。無自覚無双で溺愛とかも有り得ないだろうし。あれって、元々のコミュニケーション能力と頭の良さが必要よね。

 無いわよ。

 そんなの。

 てか、なんで転生者はレシピなく料理とかお菓子作れんの??お菓子って特にグラム大事じゃない??すごくない?

 それに、石鹸とか文房具とか。なんでそんなに、仕組みに詳しいの?!そう言う人に転生する権利が貰えるのね。きっと。前世頑張ったね特典的な。

 そう考えると、納得と思う。

 そうなると、なんで私が転生出来たのかは謎だけど、所詮モブ。神様の気まぐれだろう。便利な言葉ね、気まぐれ。

 それで、貴族の娘になれたのだから、ラッキーと思う。



「そう言えば、僕、この前とっっても美しい人に会ったんですよ!さすが、王都にあるクロライト学園です!あんなに美しい人が実在するなんて、とってもビックリしました!!」


 そう、嬉しそうに語るエリオネル君の言葉に、あら、誰だろう……?と思う。

 イケメンも多いこの学園だけれど、もちろん美人も多いのですよ。

 筆頭は、やはりソフィア様でしょうか。


「へぇ?それは、どんな人だったの~?」


 あれ、フェリックは、それはもしかして、狙ってます?

 どんな美女かって、期待してます??


「そうですね……。なんて言ったら良いのかよく分からないのですが、とっても高貴なオーラが溢れていて、とっても背が高くって……うーん、難しいですね……」


 背が高いご令嬢ですか。

 やはりソフィア様ですかね。

 あ、クラリーナ様も背が高くてとっても美人さんですよ。騎士を目指している方で、こう、男装の麗人のような雰囲気もある素敵なお方です。道を踏み外すご令嬢が後を断ちません。もちろん、ドレス姿も似合う、ずるいお方です。


「あ!()()の髪がサラサラで、それがさらに現実離れしていてビックリしました!」


 と、エリオネル君が言った瞬間、私とフェリックはピシリと固まってしまった。


 何と……?

 今、何て……??


「……エリオネル君……??そのお方とは、一体、どちらで、どのようにしてお会いになったのでしょうか??」


 思わず敬語にもなりますわよ。


 “美しい人”なんて言葉で、勝手に“美女”だと思ったのが悪いのだけれど、何故かそれは聞けずに、その時の状況を聞いてしまう。

 いや、そちらも気になるけれど。

 この子、何かしでかしてないわよね??


「……?どうしたんです?先輩??」


 突然、敬語で話されればそりゃ、困惑しますよね。エリオネル君に逆に心配されてしまいまった。


「いいえ、ちょっと、ビックリしただけよ。そんな美しい方とどのようにしてお会いになったのか、気になって動揺してしまったのです」

「ミア先輩も、やっぱりそう言うの、気になるんですね!」

「ええ、そりゃぁ、人並みに」


「ふふ。えーとですね。この前、中庭を通り掛かったら、木の下で何やら困っている人がいまして、どうしたのかなーって、声をかけまして」


 うん?

 どこかで聞いたような話ね?


「そしたら、木の上にハンカチが引っかかってしまったみたいで。自分で取ろうとしてたみたいなんですが、やはり外聞が悪いので悩んでいたので、僕がとってあげたんですよ!」


 エリオネル君は、楽しそうに話しているけど、私たちはそれどころじゃありません。

 フェリックは、「何やってんだ、あの方は……」と、頭を抱えております。


 それに、私もその話に言葉が出ません。

 だって、それって、まるっきりヒロインのようなんだもの。

 エリオネル君の役割は、完全にユリシリル。可愛い系の男の子が、男らしく木に登るなんて、言うギャップにくらっとくるシーンである。


 いやいやいや。

 なんで?

 ヒロインじゃ、ないでしょ?その人。どうなってんの??偶然?


「木に登るのが良くないって、偉い貴族の方は大変ですね!」



 これは、どう説明したものか……。

 その人は、()()そう言うのを気にしなければいけない立場なのだけど。


 うーん。


 いや、確かに木に登るなんてのは、男女問わずはしたない、と言うか多分、登れない人の方が多いだろう。

 登る必要が無いわけだし。

 ほら、例えば、そこの頭を抱えてる人とか。


「……何か失礼なこと考えてそうだけど、俺、木くらい登れるからね?そこらのお坊ちゃんたちと一緒にしないでくれる?」


 なんて、言われて驚く。

 え?登れるの?なんで?

 それに、馬鹿にしてるわけではなく。


 って、そうじゃなくて。

 それどころじゃないのよ。



「……他に何か話した?」


 ふぅと、ため息を吐いてフェリックは問う。

 確かに、それだけならなんの問題も無い。

 ……たぶん。


「……そう、ですね。とても感謝されたくらいでしょうか。僕よりも絶対、身分は高いのに綺麗な人は心も綺麗なんだなぁって、感動しました!」


 そ、そうね。

 立場的に、して貰って当然って感じでお礼すら言わない、なんてこともざらにあるわよね。……うん。


「あ、僕……名前も聞かなかったし、名乗りもしなかったんですけど、それってまずいですかね??」



「……」



 その言葉に、私とフェリックは黙ってしまった。


 どちらが正解だったかなんて、分からない。



 とりあえず、言えるのはこの学園に白金……プラチナブロンドの髪を持つ人間はただ一人だ。



 第二王子、ルーファス・ミスティア。



 確かに彼は、高貴なオーラを纏っていて、背が高くて、それは美しい人である。



 本来なら、気軽に話しかけて良い相手ではない。



 まぁ、学園内のことであるし、不可抗力ではあると思うのだけど。



 ──エリオネル君、何でこの国の王子様を知らないのよ??


 いくら田舎でも姿絵くらい出回っているでしょう?!


 それに、プラチナブロンド及びブロンドは王家の色だなんて、一般的とも言える常識だと思うのだけど……どうして知らないのよ?!



 大きな問題ではないけれど、……頭を抱えたくもなる。



閲覧ありがとうございます!

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