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「女はいつだって、誰よりも綺麗でいたい生き物なの!だから、美人にだってそれなりに悩みはあるし、嫉妬だってするわよ。……たぶん」
不満そうな顔を向けるジャックに言ってやるが、私がそれを言うのがどうにも説得力が無さすぎたので、“たぶん”と付けなければいけなかったところが、大分格好悪い。
けれども、それこそ美人の気持ちは美人にしか分からないもので、私には分からないものなのだ。
「とにかく!乙女心は複雑なの!」
と、ゴリ押せば面倒そうに「はいはい」と、適当な返事をしてくるあたりに、ジャックがモテない理由が集結されていると思う。
それでも、「お前がそれを言うの?」と言わないあたりはまだ、デリカシーがあると褒めてやっても良い。
「誰よりも綺麗でいたい……ね、ミアがそんなこと言うなんてなぁ」
前言撤回。
やっぱりデリカシーが無い。
大丈夫かしら?
逆に心配になってくるわ。
……それともあれか、私ならいいってか?おら。
「一般的な意見だけど??文句あるなら訓練場にでも行きます??」
にこにこと笑顔で言ってやれば、「いや、大丈夫です。すみませんでした!」と、すんなりジャックは引き下がる。
それでよろしい。
別に、ジャックが弱いってわけじゃないし、私が鬼のように強いってわけじゃない。私はむしろ、弱い方だ。つまり、訓練場での喧嘩のつもりは無いと言うことだ。
「それにしても、やっぱり詳しいわよね。とっても」
とってもの部分に力を込めて言えば、ジャックは慌てて首を振る。別に責めてるわけじゃないから良いのに。潔く認めるべきだと思うの。気になってるって。
「いやいやいや。あれだよ。ウワサだよ。ウワサ。有名になっちゃってるからね。色々聞いちゃうわけよ」
「ふーん。彼女ってルーファス殿下とシルヴァン様とコナー様とソフィア様と同じクラスだったわよね?変わらず接点は無いの?」
ここに、コナーを入れるのはちょっと不自然だけど、他のキャラについても聴く予定があるから、考えるのは止めた。どちらにしよ、不自然だ。
「お前も結構、詳しいじゃん。んー、まぁ、気になるのも分かるけどね。特に無いと思うよ?彼らと何かあればすぐに、ウワサが広まるでしょ。あることないこと誇張して。無いことまで増やして」
その通りでしかないので、頷く。
けれども、気にはなるので、全員分聴くしかない。
「ユリシリル様と、アルバート様と第二王子の従兄弟様とランドルフ様の弟のオリヴァン様と、バーナード先生は?」
「多くない?」
私の勢いに飲まれ、ジャックは困惑している。けれども、何だかんだ答えてくれるだろうことは、知っている。たぶん、根は優しいんだと思う。流されやすいとも言う。非常にお世話になっていることは、否定出来ない。情報の信憑性も私は信頼しているし。
「随分、具体的ってところが気になるんだけどね。……まぁ、そのメンバーなら、先生以外とはほとんど接点が無いと言っていいと思うよ?」
ふーん、そうか。
でも、それなら変わらず注意するのは攻略対象で良いかな?
先生は、確か担任だったから、接点が無いのは無理だろうし。
納得。
じゃぁ、ヒロインの目的は、私と同じで攻略対象に関わらず普通に学園に通って、卒業すること?
「ここだけの話、彼女は随分、勉強熱心で、先生たちの元に通ってるみたいだよ?」
「1年で3年分詰め込んだとは言え無理があるから、それを補おうってことかしら?真面目ね……」
「お前って捻てるわりに考えが善だよな」
どういう意味だって、思わず睨んでしまう。
失礼にもほどがある。
「いや、褒めてんの。いくら真面目でもそこまで先生のところに通う必要なんてないと思うんだよね。俺は……」
それは、つまり?
「どういうこと?」
「教科書だってあるし、図書館で初級の本を読むことも出来る。よっぽどじゃなければ、一人でも学習、出来ると思うんだよね。そんで、よっぽどだったら、ここに編入なんて出来ない」
「確かに……」
考えすぎな気もするけれど。
「だから、何の目的もなければ、先生のところに行くのはたまにで良い。そう頻繁に通う必要は無い……」
「随分、深読みするのね」
「俺には不自然に見えたから、当然の考えだな」
「ジャックって、いかにも単純って顔してるのに、捻くれまくってるわね……」
思わず感心して言えば、ジトッとした目で見られてしまう。いやごめん。褒めてるんだよ?
でもだって、ジャックって、単純思考で鈍いヒーローと言うか、真に受けやすいクラスメイトその1って顔してるんだもの。
それなのに、そんな深読み聞かされたらビックリしちゃうでしょ。どっちかって言うと、その思考は寡黙で性格悪そうな、それか何考えてるか分からない系の人の役割でしょ?
まぁ、現実に役割なんてものは無いし、人は見かけによらないって、ことね。
そう言えば、ジャックはデリカシーは少々無いけど人の変化とかよく気が付くタイプだったかもね。
「まぁ、いいや。つまり、そういうことだな」
ふーん、そういうことね。
そういうこと。
彼女は先生たちに、わざわざ聞きに行ってるわけね。
……どういうこと?
何のため?
真面目アピール?
内申上げるため?
……まぁ、この世界内申なんてものは無いけど、コネはあるからね。
健気な自分を演出して、上手く攻略対象ゲット??
「ここまで言って分かってないって、すごいな」
色々考えていたら、ジャックに呆れた視線を向けられてしまう。
ええ?
いや、色々あるから悩むでしょ。
「先生とか成績優秀なやつに“勉強教えて”なんて頻繁に聞きに行くのなんて、目的は1つだろ?」
……つまり、あれか。
さすがにそこまで言われたら分かる。
確かに好きでもないのに、“頻繁”にはいかないかもね。
でもだからって、すぐにそれに繋げるのはなんて言うかね。嫌だなーって。
「でも、彼女は先生たちに聞きに行ってるわけでしょ?単純に勉強熱心なだけかも知れないわよ?」
「目的の先生だけに聞きに行っていたら、あまりにあからさまだろ?さすがに先生たちだって、バカじゃない。すぐにバレて距離を置かれるに決まってる。そうならないために、色んな先生の元に聞きに行ってるんだよ」
「……策士だわ」
ヒロイン、すごい。
めちゃくちゃ考えてる。
中身あれだわ。
お花畑じゃない。
でも、策士すぎて、怖いわね……。
会うかどうか、悩むわ……。
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