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私が、フェリックから逃げている間に、何故かシルヴァンとルーファスの騒動は終わっていた。
フェリックが放課後まで現れる時があるので、バレてはかなわないと、何も出来ずにいたんだけれど。
たまたま誰かがそれっぽい行動を起こしたのか、人為的に起こしたのか……。
はたまた、自然とそのイベントが終わったのかは、分からなかった。
もしも、それが起きる期間というものがあって、一定期間過ぎれば自然と無くなるものだったとしたら、私は実に余計なことをしたと思うのだ。
結果的に関わりたくないキャラに二人も会ってしまった。
この調子で行くと、何だかとても嫌な予感がする。……ルーファスは王子様だし、シルヴァンは女性が苦手だから、大丈夫よね?とは思うのだけれど、分からない。普通に接点はありそうだったけど、どれ程仲が良いのかも、イマイチ分からないし。ユリシリルは……アルバートのように突撃して来そうで怖い。フェリックやアルバートに比べて、ラクなキャラではあるけど、わりと腹黒だしなぁ。
当初のモブライフを返してほしい……。
これ、わりと、転生主人公っぽくて辛い。
中途半端に首を突っ込むからこうなるんだよねぇ。自分は大丈夫って、思って、たんだけどなぁ……。
そうだよねぇ。何もしなければ、それこそ本当に関わらなければ、ただの一般人として生きられたのに。
でもなー。
そんなに非情にはなりきれないよねぇ。
だって、知ってしまっているんだもの。
この世界がどういうものか。
その時点で、“普通”であることは無理だったわけよね。
いつも同じ場所に居ることに対して、『え♡見放題じゃない♡』なんて無邪気に思うより、このままだと一体どうなるんだろうと言う恐怖の方が勝った。
実際、どうなっただろうか。
訓練場の使用禁止くらいあったかも知れないし、ルーファスの婚約者候補プラスその他令嬢たちで、バトルでも勃発していたかもしれない。
そのどれもが私には関係はなかった……と言うことに、気付いたけれど、見て見ぬふりってやっぱり辛いわ。偽善だけれど、辛いわ。
ヒロインが、無茶な行動に出て、虐められていたりしたら、接触したかも知れないくらいには、私の決意は緩い。
関わりたくないと言いたいだけの格好付けって感じね。
所詮、私も厨二病かな。
と言うか、あれよ。
人類みなそうだと思うのよね。
一軍様だってそういうとこ、あるでしょ。
うわぁー、痛いわー、その思考ってところ。
そういうものなのよ。
承認欲求の延長に、格好付ける願望が、斜に構える願望が、本能として備わっているのよ。そう、そういうことにしておきましょう。
そうなると、私の目標はどうなのかしら。
それなりに波風立てずに過ごす……かしら?
波風は……立ちそうだけれども。
…………はぁ。
それよりもだ。
人為的、と言う可能性があるのだよ。
私みたいに、偶然ではなくそれを終わらせた人間がいる可能性があるってことよね。
で、その人間は十中八九、私と同じ転生者だ。
そんな偶然があるの?!って感じだけど、私が居るのだから、自分以外には有り得ないなんてことも、ないと思う。
さて、その転生者。
私は、イベントを回避しまくっているヒロインが怪しいと思うのだけど、どうだろうか。
ヒロインが転生者か。
変なやつか、変になっちゃったやつじゃないといいなぁ。
攻略対象に片っ端から粉かけまくって、逆ハー目指すやつよりは、マシなように思うけど。
今のところそうじゃないってだけで、何か上手い策を練ってる最中で、とんでもない思考をしてるかも知れないしなぁ……。
怖い。
さて、接触すべきか否か。
それが問題である。
そして、それをどう切り出すか……が、問題だ。
違ったら変人じゃない?
また怪しい人物よね?!
それで、また付きまとわれたら困るわ……。
さて、どうしたものかしら。
*****
「と言うわけで、編入生のフェリーナ・ミルズさんについて教えて欲しいの」
「何が、“と言うわけで”なんだ?!」
私の向かいに座るジャックが、不満げに声を上げる。
むむ、マンガみたいにかくかくしかじかで、通じるわけじゃないのね。ま、そりゃそうね。
放課後。
ヒロインの情報が欲しかった私は、とりあえずジャックに聞きましょう……と、サロンに連行した。まぁ、よくあることなので、特に珍しいわけでもない。
「えぇー?流されてはくれないのね。ただ気になっただけよ。あれからどうなったのかなーって」
「“と言うわけで”だけで説明した気になるのは、どうかと思う」
「まぁ、いいじゃない。どうせ色々知ってるんでしょ??友だちが同じクラス何でしょう?それに、あんたが“可愛い女の子”の情報を集めないわけがない!!」
友だちと言いながら、ジャックとコナーが食堂に居た時のことが浮かぶ。しかしながら、言われたジャックは、その後の言葉の方に動揺して声を上げる。
「な、人聞き悪い言い方すんな!」
何か取り繕うとしているけれど、今さらである。紛れもない事実だし、別に悪いわけじゃないと思う。女子だって、素敵な男子生徒の情報集めに必死である。
「事実なんだからいいじゃない。別にそれを利用して近付いてるわけでもないんだし」
そんな度胸も無いだろうし。
とは、言わない。
「いや、バカにしてんだろ。あれだぞ。他のやつらと違うから。一般教養として、失礼のないように、必要な知識ってだけだから」
「あーはいはい」
どんな一般教養だ、と思いながら、適当に返事をする。まぁ、失礼のないように有力貴族の子息令嬢の名前を覚えるというのは、間違ってはいないので、言い訳としては最適である。
「うわ、ホント信じてないよなぁ……」
「どっちにしろ、あんたが“可愛い女の子”の情報をたくさん持ってるのは、事実でしょ?で?どうなの?あの子は……」
「わーたっよ。ところで、何でそんなにその子のことが気になるわけ?お前ってそんなにウワサ好きってわけでもないのに、その子のことは随分、気にかけてるじゃん?何かあんの?」
……。
こいつ、何でこんなに妙に鋭いのかしら。
この前と言い……。
また何か企んでるとか何とか掘り返されても堪らない。
「特にないけど、何となく珍しいから気になっただけよ」
「だから、それが珍しいんだって」
うーん。
何でこんなに……。
「そんなことより!話す気あるの?無いの?それとも知らない??」
半ばやけくそで、そう言えば、「はいはい」と両手を上げ降参のポーズをとるジャックであった。
閲覧ありがとうございます。
誤字報告ありがとうございました!
色々修正しました。
助かります(*^^*)




