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「そんな勘違い出来るほどの要素がないと思いますわ」


 笑ってしまった私に面食らってるアルバートに、我に返ると、んんと、咳払いをして気を取り直し、告げる。


 私を名前で呼ばない……そんな微妙な要素で浮かれろって言う方が無茶だ。

『恥ずかしくて私の名前呼べないのね!照れ屋さん♡』なんて、思うわけもないし、そんな人じゃないとも思う。恥ずかしげもなく色々、言ってのけるし。


「そう?……まぁ、そうかもね……」

「でしょう?ですので、私のことなどそれだけどうでも良いのですよ」


 分かってくれたことに安心して、私はにっこりそう言うと、食事に戻る。

 食べないと、時間が無くなってしまう。腹ぺこで午後の授業を受けるなんてごめんだ。


 正面を見れば、何故か微妙な顔をしたナタリーが。


 んん?

 どうしたと言うの?


 首を傾げれば、呆れたようにため息を吐かれてしまう。


 えええ?

 私が何をしたと言うの?!

 もしかして、この状況??

 私、悪くないわよ!

 私から声をかけたりなんかしてないんだから!

 どっちかと言うと、私が騙されている気分なのよ?何の罰ゲームなのかしら?と疑問に思うくらい。



 それ以上、アルバートからは、それについては追求が無く、当たり障りのない会話にシフトした。去ろうとしていたナタリーを引き留め、三人でランチを終える。

 謎だ。


 チャイムが鳴り、解散……となったところで、


「これは俺が片付けとくから、先教室戻ってなよ」


 と、アルバートはにっこりとそう告げる。


「いえ、そこまでしてもらうわけには……」


 と、断れば、


「君たちが女の子だってこと以上の理由は、無いけど?」


 なんて、返ってくる。


 強い。

 タラシ強い。

 フェリックもそうなんだけど、何なんだろうその気遣い。それくらい出来るよ?苦でも無いよ?


 ……これは、モテる。

 騙されても良いってなるな……。

 すげぇ。

 と、いつも思う。



「では、お言葉に甘えて!」


 と、ナタリーはあっさりと立ち上がり、『ミア行くよ!』と声をかけてくる。



「あの、では、すみ……ありがとうございます……」


 すみません、と言いかけてお礼を述べる。

『こういう時は、“ありがとう”の方が嬉しいんだけど?』と言うフェリックの言葉を思い出したから、ではなく……その方が正しいと思ったからである!



 私が立ち上がったのを確認すると、ナタリーは歩き出す。私はもう一度、軽く礼でもして去ろうと頭を下げる。


 その瞬間、人が近付く気配がして、動けなくなった。……考えるまでもない、間違いなくアルバートである。


「次に会った時、同じことを言えるか、楽しみにしてるよ」


 耳元で囁かれ、頭が真っ白になる。


 すぐに気配が離れ、「ほら、友人が呼んでるよ」なんて、何事も無かったように言われても困る。


 左の耳を咄嗟に抑え、何も言えずに俯きながら、逃げ去るしかなかった。


 頭は真っ白だけど、間違いなく顔は真っ赤だった。



 ──攻略対象、恐るべし!



 *****



 後から考えると、あのシチュエーションは、ゲームでのものとよく似ていた。

 配役がフェリックからアルバートになっているけれど。


 食堂で『隣、いいかな?』と、話しかけられ、「どうぞ」と答える。


 それから、『アルバートが、夢中の女の子が居るって言うから気になってねぇ』とか何とか言われて……。



 こいつら、行動パターン同じかよ!仲良しか!それでよく今までトラブルにならなかったなぁ……と思う。


 ……。


 それで。

 フェリックの場合は、『可愛いねー。俺も気になっちゃった!』とかなんとか言われちゃうんだよ。

 それで、絡まれるはめになるんだよ。


 困ったことにフェリックに良い態度を取ると、アルバートの好感度が下がってバッドエンドに向かうのよね。本当に迷惑だった。

 その上、良いタイミングで現れるから、こう……グラッと来るように出来てるのよ。ずるくない?ずるいわよね?

 そのくせ、隠しキャラでもないのよ?

 同じ役割の公爵子息は隠しキャラなのに!

 マジで意味不明なキャラなのよね。


 ……と言うか、このゲーム、隠しキャラのチョイスが謎だと思うのよ。

 シルヴァンの弟なんて、本編出てきた?!って感じだし、年上キャラ必要とは言え、教師のバーナードもこれと言って目立たないし。いや、優しくてキュンとくるシーンは、多々あるのよ?相談出来る頼りになる年上って感じで。ファンの人ごめんねって感じなんだけど、でも、ぶっちゃけコナーとかフェリックのが人気だと思うのよ。

 ……いや、フェリックが人気なのはあれだけど。違う方向だけども。

 そうなるとあれなのかな。攻略出来ないからこそだったりするんだったら、それで良かったと言うことなんだろうか。どうなんだろうか。

 二次元ならこう、ありっちゃありだけど、本人を知ってしまった今、その事実はあれだな。重いわ。こう、しまっておきたいわ。何でそんなことは、覚えているのか。辛いわ。

 どうせなら、他の便利知識を思い出したいわ。



 ……醤油の作り方とか。



 原料が大豆ってことしか覚えてない……というか知らないのね。きっと。醤油……作れれば、世界の食事情を牛耳れると思うのよね。いや、そんな大役いらないけど。



 ──あぁ、お米食べたい。



閲覧ありがとうございます。

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