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乙女ゲームの世界に転生しました。
⇒ 攻略対象に近付く
前世知識で富を得る
知識チートで目指せ逆ハー!
悪役令嬢を救いたい!
…………。
⇒ 関わりたくない
……。
そう、私は関わりたくない。
乙女ゲームの世界に転生していると気付き、様々整理し、出した決断が、それだ。
出来るだけ、関わらず変な正義感も出さず、自分的に平和に穏便に生きる、と。
ここが乙女ゲームの世界で、自分が転生していると言うことに気付いたのは、学園での入学式でのことだった。
この世界では12歳から、学園に通うようになる。
魔法の素質のある者は魔法学園へ、無いものは普通の学園へ。それから、貴族の通う学園と、庶民の通う学校とに分けられる。
一応は、伯爵家の令嬢である私は、『王立クロライト魔法学園』に、入学した。
普通の学園に比べ魔法学園の数は多くはないが、数カ所存在している。その中でも1番の規模と実力を誇る全寮制の学園である。
貴族向けではあるが、もちろん貴族のみではなく裕福な家柄の子女や、その実力を認められた者たちが編入することも少なくない。
その学園の入学式。
新しい生活にそれなりに、ドキドキワクワクしながら臨んでいた。偉い人の話って何でこんなに、長いのかしらと思いながら。ぼんやりと。
その頃には、ドキドキワクワクよりも、早く終わらないかななんて、令嬢らしからぬ感想を抱いたものだ。
そんなぼんやりとしていた中、辺りが少しざわつき始めた。
およそ、入学式とは思えない少し高いざわめきである。黄色い声とまでは言わないが、それに近い雰囲気はある。叫び出さないのは、仮にも良家のご令嬢たちだからだろうか。
そう言えば、新入生の挨拶がどうのって言ってたっけと、ぼんやりと思う。
ざわめきが和らいで、聞こえてくる、男子生徒と思われる澄んだ低い声。
漏れるため息。
どことなく甘い雰囲気が漂っている気がする。
一体、何が。
さすがに、気になったので目を開け、ゆっくりと顔を上げる。
壇上で、凛としてしっかりとマイクに向かう美少年が居た。
その姿を見た瞬間、妙に納得する。
『あぁ、そりゃあ、ざわめくな』と。
少なからず見とれたし、ため息も出た。
それはそれは、美しかった。
知らず吐息が漏れるほどには。
……と、妙な既視感を覚えたのだ。
見たことがある、と。
遠く壇上に立つ美少年を、私は見たことがある……と。
でも、こんなに美しい人を見たら、さすがに忘れないのでは? と思う。それくらいインパクトがあった。では、記憶にないくらい小さな時だろうか……と、思っていたら、少年が名前を告げて、挨拶を締めくくった。
少年の名前が妙に耳に残る。
私は、知っている。
頭の中で彼の名前を繰り返す。
私は、知っている。知っている、はずだ。うんと、昔に。
昔? 昔っていつ?
式の間中、私はずっと考えていた。
式が終わった後、退場のざわめきで聞こえた“第二王子”と言う言葉がまた、妙に耳に残った。
周りのやり取りから、彼がこの国の第二王子だと推測出来た。
そうか、彼は王子様だったのかと、ぼんやりと思う。そう言えば、あのプラチナブロンドの髪の色は王族に多い色だったなと思い出す。
彼がこの国の王子様だったなら、この既視感はそれが理由だろうか。
そう判断しながらも、何だか違うなともやもやとしながら、入学式の会場である講堂を後にした。
その後は特に予定はないので、まっすぐに寮に戻りぼんやりと考え込む。
正直、どうやって寮に戻ったのか覚えていない。入学式のたった3日前に来たと言うのに、無事に辿り着けた自分の順応性の高さに驚く。
壇上で話す、第二王子を思い出す。
だけど、何か違和感がある。既視感があるけれど、これじゃないと言う感覚があった。それが、すんなり思い出せそうにない原因のような気がする。何だろう。
何か……。
そうだ。
知っている時よりも、少しだけ幼いんだ。
私は彼を知っている。
見たことがある。
正確には、見たことしかない。
それでも私は彼をよく知っていた。
それに気づいた時、頭の中を色々なことが駆け巡った。
この世界に纏わることも自分自身に関することも、色々と。
そうして、そのまま倒れる……と言うこともなく、熱を出して寝込む……ということも無く、私は前世をぼんやりと思い出したのだ。
ただし、そう、ぼんやりと……だ。
私には前世があって、どうやらこことは全然違う文化の場所で、何やかんやあって死んだのだろう……と言うことだけだ。
前世の自分の名前も家族も、その世界の細かい部分もイマイチ思い出せない。
ただ、その世界には、“ゲーム”という物があって、私はそれで遊んでいて、ここはその“ゲームの世界”ととても似ている、ということだけがはっきりと分かったのだ。
そのゲームについて、分かる限りのことを書き出す。
何か自分自身に問題があっては困るからだ。
そもそも、自分がこの世界でどんな立ち位置なのかによって動きが変わる……気がする。出来るだけ穏便に、平和に生きたい。
死にたくないし、没落もごめんだし、国外追放も困るし、出来れば修道院も御遠慮願いたい。年上すぎるやつとの結婚も嫌すぎる。
前世の知識を多少思い出したときに、こういう“転生物”の小説を読んだことがあったし、流行ってたなぁと言うことも同時に思い出したからこその行動である。
忘れる前に書き出し、今後の行動について考えなくては。
……と、意気込んだものの。
思い出せたのは精々、攻略対象キャラについて少々と、悪役令嬢キャラとヒロインについての基礎知識くらいだ。
一応、全員分クリアはしているし、何となくどんなエンドかは覚えているが、細々した会話まで覚えているわけもない。イベントについても、そこまで詳細に覚えているとは言い難い。
まぁ、そんなもんである。
そこまでどハマったわけでも、ガチ恋するタイプだったわけでもなく、ごく普通にプレイし楽しんだ程度で詳細まで覚えていたら、天才である。
そうしたら、きっと前世ですごい人間になっていただろう。たぶん、そんなことは無い。だったら、もう少し詳細に思い出せるだろうし、その知識で一攫千金を狙えそうだ。もちろん、そんなこともない。
ごく普通の、一般的な人間だったのだろう。
どんまい。
さて、思い出したはいいが、私は一体誰か?
そう、私は鏡を見て自分の姿を確認する。
そうして、確信したのだ。
紛うことなき、モブである……と。
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