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昼食時、計らずも知ってしまったことは置いといて、それとは関係なく気付いたことがあった。
お昼を食べ終え、ナタリーとおしゃべりして、教室に戻ってきてからずっと考えている。
ちなみに言えば、授業中なのだけれど、ほぼ聞いていない。
ゲームの強制力についてだけど、たぶん、少なからずあるのだろう。そして、無視され続けるほど強くなる……感じだろうか。
とりあえず、その強制力を知った時、私は攻略対象の4人しか考えなかった。
放課後の最初の四択しか浮かばなかったから。
だけど、たぶんコナーにも起きている。
だとしたら他は?
隠しキャラなんて、二周目のない今は関係ないと無意識に思っていたから気にしなかったけれど、どうなのだろうか。
……面倒ね。
起きていたら面倒だわ。
秘密裏にそれに似た現象を起こさせるか、ヒロインとイベントを起こさせるか。
ヒロインとイベントを起こさせるとさらに面倒だ。
平民でしかない女が調子に乗っていると、学園が荒れる。面倒だ。
そもそも乙女ゲーってなんて面倒な話なんだ。
平民の女に振り回される身分の良い男たち。
実に滑稽。
……それが面白かったんだけど!
誰だってシンデレラ・ストーリー思い浮かべるわよ!そりゃぁ!
イケメンに甘い台詞を吐かれたい!甘やかされたい!乙女の純粋な願望だ。
でもなー、それこそ画面越しだから良いのであって現実で起こると微妙だ。それも外野から見ると馬鹿だ。
困った。
とりあえず、今日はユリシリルが本当に解放されたのかの確認と、昨日確認しなかったアルバートを見に行かなくてはと思う。
それから、コナー。
最初に会うのって、裏庭だっけ?
でもそれって初回放課後イベントをこなした後だった気がする。
それで、『誰々から話を伺ってて、話したいと思っていたんです』的な感じで話して、それから困った時に裏庭に行けば、大体居て、困っていることを相談すればヒントを教えてくれたりするんだよね。
って、ことはほぼ毎日コナーは裏庭に居るってことになる。
……謎だ。
よっぽどのお気に入りの場所だったのだろうか。やっぱりヒロインのこと好きだったんだろうか。何で隠しキャラじゃないのか。
もしかして、私が見落としていただけで、ヒロインが好き発言とかあったのだろうか。
あぁ、無性に確認したい!
是非ともコナーをゲームの強制力と言う理不尽な呪いから解き放ってあげたいけれど、無理そうだ。
一時的なものじゃないから。
一度ヒロインと話したところで、そこに通わなければいけなくなる。
……むしろあれか?
ゲームで果たされなかったコナーの無念を私が叶えるべき?ヒロインとくっつけるべき?
うーん。
それが自然発生的に起こったとしたら、影からこっそり眺め回したいけれど、それを自分で起こすのは微妙だ。きっかけを作るのは構わないけれど、それをし続けるのは疲れる。
どうやってヒロインを裏庭に連れていくか。
接点を持たずに。
人を介して行うべきだな。
……犯罪計画のようね。
……やっぱり悪役令嬢っぽい。もっと美人だったらそれっぽいんだけどなぁ……。
なんて、しょうもないことを考えていたら授業が終わった。後で内容を教えてもらわなければ。
*****
知ってしまったコナーのことはとりあえず、置いておくしかない。
解決策が分からない。
ごめんね!でも、好きだよ!地味に!
まずは、ゲームの強制力が解除されたのか、確認しないと。
隠しキャラ云々は、その後にする。
昨日、カフェにユリシリルがいなかったのは確認したけど、たまたまかも知れないので、今日も確認しないと。今日いなければ、作戦は成功と言えるかな?
それから、アルバートについても確認に行かなくては。それでアルバートがいなければ、すり替えは出来るというわけだから、シルヴァンの作戦を決行しよう。
第二王子様の場合はなー。
まず、木に登ってそれを発見させてから、中庭で話しかけられるイベントをするって感じかな。面倒だな。
結構ギャップのある可愛い子にしないと、話しかけられるって言うのが無くなるから……面倒だな。そもそも、木に登ってくれる女の子を見つけるのが大変。
……エリオネル君じゃダメ?中々ギャップあると思うんだけど。
田舎育ちって言ってたから、木ぐらい登れるでしょ。
あ、もう、中庭の木に登ってもらって、豪快に降りてもらえば、注目浴びるんじゃない?話しかけざるを得ないでしょ??
どうかな?
ダメ?
ダメならもう、放置だな。
関わらないがモットーなので、そこまで面倒を見るのは、面倒だ。
うん。面倒。
何でこんなにやる気出したのか、自分でも謎だわってくらいに一気に面倒になったわ。
シルヴァンに関しては、害があるから何とかしないといけないけど、第二王子に関しては、無視だ。ソフィア様に任せよう。
カフェに向かう。
ユリシリルはいない。
うん。
呪いは解呪されたみたい。
シチュエーションさえあってれば誰でも良いということが証明されたわけね。
第三講義室に向かう。
前のように、見つからないところからひっそりと顔を出す。
ふむ。
いない。
あの後どうなったのか、さっぱり分からないけど、たぶん大丈夫だろう。女の子を犠牲にするよりもずっと良かったと思う。
あとは、シルヴァンをどうにかしないと……それで、隠れキャラに何か起こってないか確認して、騒ぎになってなければ放置。とりあえず放置。様子見。
それで、私の平和は保たれる!
──私はすっかり油断していた。
自分の動きなんて、誰にも気付かれているわけがないと。
そもそも何かがあるなんて深く考えてもいなかった。
だから、向こうから接触がある可能性なんて、微塵も考えていなかった。
「犯人が現場に戻るって、本当なんだね」
そう、背後から呟かれた言葉に、私は凍りつくしか無かった。
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