表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/49

15

「ミア、聞いたぞ?珍しいこともあるもんだな」


 朝一番。

 おはようの挨拶よりも先に、ジャックはそう言って自分の席に座った。

 何のことだろう?と、私は首を傾げる。心当たりが全くない。何かしただろうか。


「それは顔の良い男子とカフェに行ってたそうじゃないか?ようやくお前も積極的になったんだなぁって、俺はちょっと感動したよ」



「……」


 ぽかんとしてジャックを見つめるしかなかった。

 心当たりが……ん?顔の良い……もしかしてエリオネル君?それって昨日だよな。

 そんな噂になるなんて、みんなよっぽど暇何だな。彼が(``)誰かとカフェに居たと噂になるのは分かるけれど、それが私だと特定されるとは思ってもいなかった。

 ていうか、相変わらず耳が早い。見てたの?って感じ。あれ、私監視されてる?いや、まさか。そんな利点無い、よな??な?

 と、脳内会議しつつどうかしたものかと考える。


「ん?何だその顔?あれ?間違い?やっぱり人違いだったか??」


「いや、ほぼあってるけど、どうしてそんなこと知ってるのよ。……たまたま頼みごとをして引き受けてくれたから、そのお礼をしただけよ」


 私の微妙な顔を見て狼狽えるジャックに、誤魔化す必要も無いので事実を述べる。


「ふ~ん?頼みごとをねぇ?たまたま?」


 にやり、何か含みの笑みを向けるジャックには全力で気付かないふりをする。茶化されるのは面倒だ。

 こいつは私が話を聞くだけ見るだけで満足という気持ちを微塵も理解していない。

 誰か狙いにいけばいいのにとせっつくのだ。

 お前はお節介おばさんか!と言いたい。


「そう、偶然、ね」

「そう?偶然ね、偶然」


 はいはいと流すように返事をするジャック。全然信じていないと言うのが滲み出ていて腹が立つ。けれども、それにムキになるのもそれっぽい。

 なので、私に出来るのは『そうよ』と見て見ぬふりをするだけ。気にしてませんと言う風に。

 この話は適当に流すしかない。

 私が誰とカフェに行こうが、誰が気にするわけがないし。



 *****



 昼時。

 食堂にて。


 私は想定外すぎる光景に唖然としてしまった。持っていたトレイを落とさなかったのは奇跡に思えた。

 心臓がバクバクとした。

 驚きすぎて。

 いや、ちょっと大袈裟すぎるんだけど、コントロールの仕様が無いことなので、仕方ない。


 よろよろと、それ(``)から離れた、けれども見える位置に座る。

 一緒に行動していたナタリーが、私の突然の変化に心配して、声をかけながら付いてきてくれた。


「ミア?どうしたの?急に……。何かあったの??具合でも悪い……?」


 私の微妙な動きに、向かいの席に腰を落ち着けたナタリーは、心配そうにこちらを覗き込んでくる。

 あぁ、こんなことで動揺してどうする。大したことではないではないか。むしろ、何で気付かなかったのかと、自分に呆れる。


「いいえ。ちょっと、思わぬ光景を目にしてしビックリしただけ」


 首を振って真実を述べる。

 嘘を吐くと無限に吐かなければいけなくなるし、想像力と記憶力と度胸が必要で辛い。嘘を吐くには、高等技術が必要なのだ。

 よって私は基本的に正直に述べるようにしている。ただ、真正直である必要は、全く無いとも思っている。

 私は誠実でありたいとか、そんな高尚な意識があるわけではなく、完全に自分のためだ。ただ、それだけの心がけだ。


「……大丈夫?」

「ええ」


 変わらず心配してくれるナタリーに、もう大丈夫だと言うようににっこりと微笑んで、「さ、食べましょう!」と食事を促す。

 これ以上心配かけたくないし、探られたくもないからだ。

 本当に、大したことじゃない。

 何故、動揺したのかの説明もしづらい。




 だって、考えてなかった。

 ジャックの友人がゲームの登場人物だったなんて。


 だけど、考えてみれば疑問に思うべきだったのだ。



 “攻略対象たちと仲の良い友人”なんて。



 第二王子であるルーファスと友人になれるなんて、“普通”であるわけなかったのに。


 そして、今さら私は気付く。

 一昨日、ジャックが言っていたことを。



俺の友だち(`````)が無性にどこかに行かなきゃいけないって気持ちになるらしい……』



 その時気付きもしなかったし、それよりも攻略対象4人の方が気になって忘れてしまったけれど、その時にもしかして(`````)と思うべきだったのだ。

 ジャックの友人が攻略対象の可能性を含めて。


 私はご飯を口に運びながら、遠目にジャックの友人を見る。

 間違いない。



 この乙女ゲームのサポートキャラのコナーだ。



 なんと言うか、華やかさとかイケメン度、顔の整い具合は第二王子様が1番だし、他の攻略対象の方が良いけど、好みで言うと彼が1番だ。

 ちょっと地味目な感じと、一歩下がって第二王子含めみんなを支えてる感じが良かった。その上何でか手助けしてくれるし。

 

 っと、それはおいといて。


 それにしても、今までジャックの友人関係など気にかけたこともなかったから、気付かなかったにしても……。今さら感がすごい。

 何で今まで気付かなかったんだろう。二人が一緒に居るのを見たのも初めてだ。

 もしかして、その繋がりで攻略対象とも仲が良かったりするのだろうか?



 ……。



 それは、困る……けど、所詮、友だちの友だちだしな。それってほぼ他人。接点は無いに等しい……よね?


 万が一攻略キャラと友だちでも、どうということも無いだろう。

 殿下に私を紹介する機会なんて皆無だろうし、シルヴァンに女である私を紹介なんてのも無いだろう。アルバートも右に同じ。女癖が良くないと評判のやつに紹介なんて、そんな薄情なやつじゃないと信じてる。

 ユリシリルも、特に私と接点があっても商売的に特もないだろうし、大丈夫。

 そもそも今までそんなこと無いわけだし、心配してもムダだろう。


 なので、サポートキャラなら余計に、気にする必要は無いはずだ。

 ……大丈夫、よね?



 いやーうん。

 大丈夫でしょ。

 私、モブだし。

 目立たないんですよ。

 光魔法も闇魔法も使えないし、魔力量も普通。成績も中の上で、目を見張るものもないし、目を当てられないほどのこともない。至ってふつーの学園生徒なのです!


 なので、注目されることはまず無い。

 無いのだ!

 なので、やっぱり心配する必要は無いのだ!


 今までと変わらないはずだ。


 友だちの友だちがサポートキャラって言ったって、そんなに動揺することじゃなかった!



 うん。

 その繋がりでそれって、地味よ。

 とってもモブっぽい。

 盛り上がりに欠けるわ。


 うんうんと、自分の中で納得させる。



 ふふ。

 元気になったから、デザートにプリン追加で食べましょっと。



 なんて、能天気に考えるしかなかった。

 考えすぎても疲れるので。


閲覧ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ