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 ヒロインについて、疑問は湧くがどうしようもない。

 とりあえず、現状確認。

 ということで。



 カフェが見えるところに着いた。


 確か、この辺で入ろうかどうしようか、どうすればいいんだろうって、悩んでいるところにユリシリルが来るんだったか。

 最初の選択肢で選んでても選んでなくてもほぼ変わらない。好感度が違うから反応の仕方が違うって感じだった。


 と、問題のユリシリルだけど、カフェから少し離れたところに居る。

 何の用があるんだろうってくらいの何も無い壁にもたれかかって立ってる。

 たまに、女の子に話しかけられて、のらりくらりと交わして、でもそこに居る。オブジェのごとく。


 いかん。

 このままでは、可愛いイケメンのオブジェが出来てしまう。



 ふむ。

 これって、“可愛い子”が“カフェの前”で“困ってる”じゃ、ダメなんだろうか?


 ユリシリルなら、ヒロインじゃなくても困っていたら助けてくれそうではある。実際、面識があってもなくても同じだし。


 とりあえず、ヒロインが動くのを待つのは厳しいし、試してみるのは悪く無さそう。

 だって、1ヶ月も接触なしだよ?

 自然とそうなる確率もうゼロじゃない?

 しかも、友人を得た今なら彼女は1人でカフェに入るか悩む必要が無い。


 それに、カフェの前で待ち構えて、ユリシリルに声を掛ける……は、誰かがやっていてもおかしくないけど、声をかけて貰えるまで待つ……なんて、誰かがしたとは思えないから、代理が不可能かもまだ分からないし。



 さらには、お(あつら)え向きにカフェに行きたそうに遠目に見ている子が居るのよ。


 しかも可愛い。


 だからこそ、思いついたとも言える。


 たぶん新入生だから、カフェに入ったことが無くても不自然ではないから、初々しい感じと困った感じが出そうなのも良い。


 この学園は、学年ごとにネクタイやリボンの色が違うのだ。毎年変えなければいけない形ではなく、入学した年に決まってそのままと言う形だ。

 橙は今年の新入生の色だったはず。



 よし、試してみるしかない。


 私は気合を入れて、その子の元に向かう。

 こういうの、だいぶ苦手なんだけど、ノリだ。ノリ。頑張れ、私。


「もしかして、カフェに行きたかったりする?」

「え?」


 突然話しかけられて、その子は当然驚いたように私を見る。


「カフェ。ずっと見てたでしょ?……違った?」


「う……えと。違わない、こともない……です」


 私に驚きつつもリボンの色から上級生だと読み取ったのか、恐る恐る答えてくれる。

 この時点で理不尽を突きつけるタイプの貴族じゃないことが分かったので、少し 安心する。でも、怖いのでこの子の家柄のことは考えないことにする。

 上級生と下級生。

 ……名乗らなければ、それでいける。


「あのね。あなたにお願いがあって」

「……?」


 怪訝な顔で首を傾げられてしまう。

 まぁ、急に話しかけられて、お願いと言われればみんなそうなる。


「カフェの前で“入ろうか入らないか迷ってる”みたいにうろうろして欲しいの」

「え……」


 困惑の声が漏れる。そりゃぁ、そう。意味不明だし、それが嫌だから少し離れたところから見ていたのだろう。


「そうしたらね。もしかしたら、声をかけてくれる人が居るかもしれないの」

「?」

「そうしたら、『入学したばかりで、不慣れで恥ずかしいけれど、どうしてもカフェに入りたくて』と、そう告げてほしいの」

「?!!」

「たぶん、一緒に入ろうか?と言ってくれるから、『いいんですか?!是非!嬉しいです!』と無邪気に(````)喜んでほしいのよ」


「何でそんなに、指示が細かいんです……?」


 警戒心と言うよりは困惑を(あらわ)に、私を見る。

 それは、出来るだけ“ヒロイン”に合わせたいからよ。あんまり台詞覚えてないけど、こんなんだったと思うのよ。


「ちょっと色々あるのよ。もし、引き受けてくれたら、そこのカフェで好きなだけケーキ奢ってあげるわ」



「……本当に?!」


 不審を顕にしていた顔が一気に輝く。

 う。可愛い。

 じゃなくて、私が言うのも何だけど、チョロくて心配になるわね。大丈夫かしら。


「ええ。結果がどうあれお礼はするわ」


 私は奢られるのが好きだけど、ケチってわけじゃないし、それくらいのお小遣いは貰える。それなりに贅沢は出来る伯爵令嬢なのだ!


「じゃぁ、やります!」


 あぁ、素直で心配になるわ。


「ええ、お願いします。30分ほどで何も無かったらお終いと言うことで。ダメだったら今日奢る。もし、成功したら、明日奢るわ」


「30分も?!」

「とっても申し訳ないけどよろしくお願いします」


「うー。分かりました……」


 そう言って、“彼は”カフェに向かった。



 とっても可愛い子は“彼”だったけど仕方ない。

 あんなチョ……いいえ素直な子は早々、見つかるまい。

 大丈夫、ユリシリルなら困っていたら男でも女でも助けてあげる……はずだ。アルバートは無理だろうけど。


 それに、男子なら、後々面倒なことにはならない、はずだ。

 素直にヒロインのような可愛い女の子を用意してうっかり恋に落ちたら微妙だ。それはそれで良いのかもしれないけど、とても複雑だ。

 こんな実験じゃなく、私の関係ないところで恋には落ちて欲しい。


 彼は、想像以上に可愛くて純粋で、チョロ……いえ、素直な子だったけれど、“恋”には落ちない……はずだ。



 ……たぶん。


 あれ、面倒なことを引き起こしたかしら?

 いや、大丈夫よね?

 そんな簡単にラララとラブソングは流れないわよね??ね?

 だってここ、乙女ゲームよね?

 そうよね?




閲覧ありがとうございます。

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