火の車の話
ある行商人が、寂れた宿場町に入った。
陽は傾いてきているとはいえ、
人気は乏しく活気は無く、寂寥としていた。
宿をとるも、そこの主人は窶れ、
幽鬼のような相を呈している。
行商は薄気味悪く思い、さっさと休んで翌朝、
早めに立とうと考えた。
その晩のこと。
行商は尿意を催し、目を覚ました。
すると、かんらからからと、宿の外から音がする。
そっと障子を開き、格子の隙間から外を覗く。
そこにあった光景を見て、行商はうっと息を呑んだ。
なんと、赤々と燃え立つ巨大な車輪が一輪、
火の粉を吹き上げて、街道を走って行くではないか。
行商は腰を抜かし、部屋の隅でガタガタ震えて朝を待った。
夜が明けるや、行商は尻に帆掛けて町から逃げ出した。
しかしその後、商いには失敗、有り金は盗まれると散々な目に遭い、
異土の乞食として生涯を終えたという。
エラい長いこと放置していたので、
機能自体もよく覚えてないのだ……。
また動き出すかもしれないし、また挫けて消えるかもしれない。