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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王とレイドボス
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集い来る戦士たち


 ファイオリアの花畑という単語はプライマの街にある図書館で散見できる。

 創世神話の中でもとても有名な単語であり、絵であるからだ。

 創世神話の表紙や扉絵に描かれる花畑はほぼ2つ。

 片方がシャンブルの花畑、もう一つが現在プレイヤーたちの視界に広がっているファイオリアの花畑である。


 『エレイン』と表示されていたネームドモンスターの言った通り、足元に群生しているファイオリアの花弁を食す――使用する――と、プレイヤーのMPはたちまち全回復した。

 それはエリクシールを彷彿とさせる効果であり、一部の古参プレイヤーや検証班たちは確信する――普段から自分たちが使用している『課金ポーション』自体も、やはり創世神話に関連する証拠品なのであると。

 それは実は、予てから論されていた事でもあった。

 普段から運営がゲームに対してほぼノータッチ……つまり、外部から世界への干渉を滅多にしないこのイリュオンにおいて、唯一初期――βテストが終わった直後から実装されていた、『課金ポーション』という外部要素以外の何物でもないソレ。

 


 深読みだと呆れられようとも、わざわざ課金ポーションを買って成分や見た目を研究し尽くしてきたプレイヤーたちはごまんといる。

 それがようやく報われたのだ。


 攻略は戦闘組に任せ、自分たちは一刻も早く――一秒でも長く研究をしていたい、観光組とも攻略組とも違う研究・検証組の者達は、狂喜乱舞しながらファイオリアの花を摘み取った。

 その場で食べて見たり、ポーションをかけてみたり、スキルを当てて見たり。

 用心棒として雇われた攻略組がサンディーヴァの鳥たちに悪戦苦闘している間、それはもう血肉に群がるピラニアの如く形相で色々試した。


 結果、インベントリに入れる事は出来ないが例の薄めたエリクシールっぽい水、の中であれば枯れずに持って帰ることができると判明したのだ。

 掲示板でその情報がすぐさま全研究者に伝達され、イベント期間中だというのに全く関係の無いアールヴァルの地下水脈がにぎわった。


 相変わらず意味の解らないシステムで、イベントに参加したいと思った瞬間にはイベントフィールドに、一度離脱したいと思ったその時には元いた場所に戻ると言う、いつもはワープ結晶やポータルを使わなければできないワープ移動に酔ってしまう者も多々いたのだが、研究熱の方がはるかに勝る。

 中にはそのワープの仕組みを検証し始める者まで出てくるので、流石という他無いだろう。


 イベントとは全く関係の無い所で盛り上がる研究者たちの話であった。












 さて、イベントの中心部――レイドボスを相手にする者達に目線を向けよう。

 図らずして、図ったように課金王と関わりのあるメンバーが、揃いも揃ってエルフィンの大樹の根元へと辿り着いた。勿論それ以外のメンバーもいるし、むしろ課金王はコミュニティが狭い方なのでそれ以外のメンバーの方が多い。

 だというのに、その少人数である所の課金王クラスタは目立ちに目立つ。

 ど真ん中に居る超長身の白金プレートアーマーをはじめ、忍者コスの小学生の隣で槍をグルッグルと振り回す男が居たり、目が痛くなる程に真赤な装備の双剣使いと赤毛の青年が仲良さそうに話していたり、目を疑う程に美人な格闘家がカジュアルな服を着た小さな格闘家の頭を撫でていたり……他、様々な事が局所的に起こっている。


 無論この間もサンディーヴァの鳥たちの猛攻が来ているのだが、ここに集ったメンバーに今更130lv程度(・・)の敵にやられるような者はいない。 多かれ少なかれ130lv前後のレベルを持つプレイヤーが揃っているし、中には掲示板に名前が上がるような有名プレイヤーを抱えたPTもちらほらいるからだ。

 

「それで、課金王はどういう見立てッスかね。 このレイドボス、普通にあの2匹倒して終わりに思えないんスけど」

「同意見だ。 あの2匹を倒すのも骨が折れそうではあるが、わざわざ地下樹脈と霊峰の焼き増しの様な事をするとも思えん。 あるとすれば……コレ、ではないか?」


 シュリが課金王に問いかける。

 そして、課金王がコレと目線を向けたもの。


 それは、水晶の樹が絡み付き、普段の数倍大きくなった――エルフィンの大樹。

 水晶の樹はエルフィンの大樹の根元、つまり地面から生えていて、課金王や部隊長たちはソレがドコから伸びているのか容易に予想が出来た。


 地下樹脈では、水晶の樹――サンディーヴァの樹自体も敵MOBだった事を鑑みれば、この大きな大木がレイドボスになっていても不思議はない。


 不思議はないので。


「『ソードスラッシュ』!」

「おらよ!」

「『波濤斬り』!」

「『光晶拳』!」

「『コロナ・デブリ』」

「『チャージ・ショット』」

「てやぁ!」


 誰も、何の合図もすることなく――完全に一致したタイミングで、全方位からスキルが放たれた。

 それは、多少の誤差があれどもほぼ同時に着弾し――、


『――――……ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』


 プレイヤーたちの読み通り、エルフィンの大樹そのものにHPバーが現れたのだった。


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