それぞれの準備時間
幕間です
『もっつぁらら:シュリ、今日のレイド出る気あるのかしら?』
『手裏剣大好き:レイド??』
お母さんとお昼ご飯を食べた後にいつも通りイリュオンにインしたアタシは、自身が所属するギルド『ラジャネーレダロー』がマスター、もっつぁららさんの言葉に疑問を浮かべた。
5年目のアタシはそれなりにベテランとして扱われる事が多いけれど、実戦での知識量以外は並みな上に情報収集能力はかなり低い。 小学生用のセーフィティだと閲覧できない掲示板が幾つかあるのだ。
だからか、公式HPすらも見るのが億劫になっていて、こういう大切っぽいお知らせを見逃すことは多々ある。
『手裏剣大好き:レイドがあるんスか? 何時から?』
『もっつぁらら:公式見なさいよ……。 コピペするけど、』
『もっつぁらら:12:30~よりレイドボスが出現します。 クエスト名「群青色の雨、水晶色の花」。 レアドロップ品が数多く出現しますので、気を振るってご参加ください、だそうよ』
『手裏剣大好き:群青色って事はサンディーヴァ関連っぽいッスね。 課金王がなんかやらかして、トリガーになった感じかもしれないッス』
『もっつぁらら:陛下が? ……じゃあ出なきゃじゃない。 シュリも行くわよね?』
『手裏剣大好き:もちッス。 ってか12:30ってあと1時間ッスね。 ちょい装備耐久回復してくるッス』
『もっつぁらら:参加前にPT組むから、12:20頃にはギルド前集合ね』
『手裏剣大好き:あい~』
『セイン:よう、ギルマスのお帰りだぜ』
『セイン:あり? 誰もいねぇ』
『セイン:まぁいいや、レイド行く奴ギルド掲示板に表明出しとけよー。 ソロで参加するなら書かなくても良いけど』
『マッカダナー:あ、ツチノコいた』
『サイバー太郎:来たか! マッカーサーどこだ!!』
『マッカダナー:マッカダナーだ。 木の上』
『クレバー伊藤:それじゃわかんーよ!』
『サイバー太郎:いやわかる! マーキングアロー撃つぞ!』
『破壊王01:仕留めるのは任せろーバリバリ』
『マッカダナー:やれ!!』
『セイン:……相変わらず元気そうで何よりだよ。 グニャは?』
『ヤレナカッターマン:旅行で3日間居ないってさ』
『セイン:カッターサンクス。 京太郎は?』
『ヤレナカッターマン:出血毒対策が見つかったんで籠ってる』
『セイン:はやっ。 まだ2週間しか経ってねぇのに』
『サイバー太郎:よっしゃあああああああああナイス破壊!!』
『破壊王01:伊藤と真赤、早くダメ稼いで!』
『ヤレナカッターマン:みんなごぞって研究してたからなぁ』
『マッカダナー:その呼び方なら許す。 グニャがいないと火力が破壊頼り』
『クレバー伊藤:ってっめrちゃtt暇ったらやれよ!!』
『サイバー太郎:残り20%! デカくなるぞ退避しろ!』
『セイン:ツチノコ狩りとか懐かしいな』
『ヤレナカッターマン:今ツチノコの肝20Mするから結構稼げる』
『セイン:5年前は100Mしてたけど、去年あたりに見た時は5Mになってたな。 また上がったのか』
『ヤレナカッターマン:単純に流通量が減ったのと、サイレント実装なのかなんなのか味が付いたのが原因だろうね』
『セイン:味?』
『ヤレナカッターマン:食ってみたけど、鮟肝感あったわ。 しかも素材単品でstr上昇20%とかいう素敵仕様。 ダンジョンのおともにどうぞ、って感じだろな』
『セイン:20%はでけぇな。 しかし鮟肝か……限らず、魚介喰いたくて仕方ねえわ。 レイド終わったら寿司行くかなー』
『ヤレナカッターマン:南米行ってたんだったか? あ、そういやギルマス、俺らアールヴァルの地下水脈、クリアしたぜ』
『サイバー太郎:YEAAAAAAAAAAAAAAH』
『クレバー伊藤:ボス戦は楽しかったなアレ』
『マッカダナー:あれは良い』
『破壊王01:全員分揃ったぬ! これでレイド行けるぬ! ギルマスの分は無いのね!!』
『セイン:知ってた。 お前ら金興味ないもんな』
『ヤレナカッターマン:グッニャと京太郎もクリアした。 貢献度的には京太郎が一番かもしれん』
『セイン:アイツダンジョン行ったのか。 珍しい』
『ヤレナカッターマン:出血毒を解毒するポーションの作り方上がってるから、それ見れば納得するはず』
『マッカダナー:そう言えばギルマス、なんか大会行ってたらしいけど、優勝したのか?』
『セイン:おう。 伯の総合武術の大会な。 10年連続優勝だぞ』
『クレバー伊藤:ギルマス人間やめてない?』
『破壊王01:この前オフで会った時筋肉触ったけど、鉄より硬そうだったわ』
『ヤレナカッターマン:ホモかな?』
『破壊王01:ノンケだよおおおおおおおおおおおォォン?』
『サイバー太郎:オフで会ったって、破壊お前どうやって天城入ったんだ? 皇平良だろ?』
『セイン:俺が出てったんだよ。 悪いねーエリートで』
『マッカダナー:破壊が皇平良という事実の方が驚愕』
『クレバー伊藤:レイドまであと1時間切ったな』
『逆縞京太郎:寝てた』
『セイン:おう、もちっと寝てても良いぞ』
『逆縞京太郎:うわギルマスだこれは夢だおやすみ』
『セイン:もう目覚めなくていいぞー』
『ミーミル:れいどだー』
『くじら:れいどだなー』
『織田ちゃん:復帰して早々レイドとか拙者ついているな?』
『ミーミル:ダチャーン復帰って程離れてないじゃん。 たった2週間だし。 なんか大会行ってたんだっけ?』
『織田ちゃん:南米にな。 伯総合武術大会で、惜しくも2位だった。 とはいえ1位とは圧倒的な実力差があったが……』
『くじらさん:やっぱ本場の奴らは強いもんなのか?』
『織田ちゃん:否、1位は日本人だった。 今日明日にニュースになるはずだから、拙者の顔と名前が拝めるぞ。 2位でギャン泣きしているのが拙者だ』
『ミーミル:あんま興味ないわー。 つかダチャーンってリアル戦闘出来るのに魔法使いなのなんで?』
『織田ちゃん:ゲームの中くらい武術から離れたいでござる』
『ミーミル:なーる』
『部隊長:織田、お帰りなさい』
『織田ちゃん:隊長ただいまで候つかまつり。 所でこの掲示板に貼ってある陛下の神々しいGIFは何』
『山川斎藤重兵衛:ダチャーンおかえりー。 それ、プライマの噴水から出現した余りにも神々しい陛下の御姿、って隊長が撮ってきた奴』
『織田ちゃん:確かに神々しいでござるが……』
『くじらさん:俺はレイド行く気ないから飯落ちー』
『ミーミル:あ、じゃあ同じくおつー』
『部隊長:お疲れ様です』
『山川斎藤重兵衛:乙ー。 僕はレイド行くけど、隊長とダチャーンは?』
『織田ちゃん:勿論いくでござりまする』
『部隊長:どうやら私が昨日攻略した場所に関係がありそうなので、勿論行きますよ。 ヒーラーは癪ですが、ぜっショタが努めます』
『織田ちゃん:あぁ、奥さんの』
『山川斎藤重兵衛:仲悪いように見せて仲良しだもんねー』
『部隊長:癪 で す が !』
『山川斎藤重兵衛:はいはい』
「あ、課金王……と、ぴーちゃん」
「あら、カナ。 カナもレイド参加待機かしら?」
「へ、レイド? ……知らないけど」
「どうやらサンディーヴァの鳥関連のレイドのようでな、とりあえず参加しようと待機しているのだ。 余とP.f.K.のPTに入るか?」
「あ、じゃあお願いしていい? 初レイドだから作法とかマナーとか怖いんだけど」
「初襲来のレイドだから、気にしなくていいわ。 格闘家はただ前に出て殲滅或るのみよ」
「おー、わかりやすい」
「……そういえばカナよ。 前にやったオルキディアの青篭手だが……」
「あ、そうだった! じゃじゃーん! 装備できるようになったよ!」
「うむ。 しかし、始めて2週間半でレベル79か……」
「計り知れないというか、懐かしいと言うかねぇ」
「懐かしいの?」
「うむ。 昔はそういう新規精鋭とでも言えばいいのか、ガツガツ行くプレイヤーも多かったのだがな。 今はほとんどがのんびりしている故、100lv近くなるとだらけはじめる者も多いのだ」
「私も課金王も今は208だから、段々と肩を並べられるプレイヤーが少なくなっていて悲しいのよ」
「208……ひゃー、遠いなぁ。 でもすぐ追いつくからね!」
「あぁ、待っている。 というより、カナならばすぐに抜かされそう故……こちらも一層引き離さねばならんだろう」
「えー、そこは待っててよー」
「200台のプレイヤーは余とP.f.K.を含めて6人。 自己申告者だけだがな」
「鳶職の彼と、侍の彼と、鍛冶師の彼と、音楽家の彼女ね」
「そこに私が入らないと……!」
「ふ、その頃には余はレベル300を超えているかもしれんな!」
「私を置いて行かないでね?」
「勿論だ」
「……ねぇ、2人ってどんな関係なの?」
「メイン垢とサブ垢の関係だな」
「私がサブで」
「余がメインだ」
「……? 同一人物って事?」
「そうだ」
「そうよ」
「……?? 今どうやって操作してんの?」
「秘密だ」
「秘密よ」




