課金王と雷命鳥
月刊じゃなかったはずなんや・・・
白金色のフルプレートアーマーが特徴的なプレイヤー課金王。
彼女の主目的はあくまで『美しい光景を手に収めたい』というもの。
だが、これに『美しい戦闘が見たい』が含まれるかと言えば、それは違う。
彼女はどこまでいってもプレイヤーであり、戦闘者だ。
ようは戦いたいのである。
【ぜったい☆ショタっ子:もしかしなくても大剣飛ばした?】
【課金王:む、何故わかったのだ。 これは余が開発した大剣砲だというのに……】
【ぜったい☆ショタっ子:だって大剣飛んできたし。 ついでに言うとそれつまり投槍の大剣ver.じゃん。 開発したって言える?】
【一円の為に生きる女:まだ敵さん死んでないっていうかダメージ一切喰らってないんですけど!! チャットしてるヒマないんですけど!!】
【後藤:してるじゃねぇか】
【一円の為に生きる女:今はね!?】
【課金王:使い捨てのユニークドロップだぞ? やはり王たる余でなければできない行為だろう!】
【ぜったい☆ショタっ子:まじで? もったいな……】
【部隊長:陛下のお考えをお前のような下賤な者が理解できるはずもないでしょう】
【ヘルウィンド:来る】
ヘルウィンドのそのチャットが打ち込まれた瞬間、課金王と部隊長以外……つまり中心に居たメンバーは一気に散開した。
直後、その場所に雷が落ちる。 轟雷といって差し支えない雷が、一点に収束して降り注いだのだ。
『冷たいわ。 冷たい。 懐かしいわ。 これは、亀達の吐息ね? 懐かしいわ!』
【課金王:……思わぬところで情報が手に入ったな。 アイスルトールはシュネクレーヴェノ亀達の吐息なのか】
【後藤:白魔法使いってのは属性耐性あげたりはできないのか?】
【ぜったい☆ショタっ子:無理無理。 そういうのは無魔の仕事だしー? 課金王がPTにいる状態で白魔にできる事は、棍棒で殴るかマナエクステンドするだけだね】
【部隊長:つまりお荷物です】
【一円の為に生きる女:よく見るとヴィンティルちゃんかわいいな……じゃなくて! チャットする暇があったら攻撃してください!】
【ぜったい☆ショタっ子:オマエモナー】
どのような状況であれ、ついついチャットに手が伸びてしまうのは所謂ところの慣れ、もしくは癖である。 VRゲームのみならず、未知を体験すればそれを誰かと共有したいと思うのは当然の事。
もっとも、単純にノリと勢いでチャットを使っている場合の方が多いのだが。
『ふふふ、ふふふ! そうね、そうね。 このままあなた達と遊ぶのもいいのだけれど……ゲームをしない? ゲーム、ゲーム。 ルールを決めて、ゲームをするの!』
「ゲーム?」
後藤が反応する。
『そう! お母様もあなた達とゲームをするでしょう? ……あら? お母様の匂いがするのは……あっちのピカピカと、ここの虹色だけなのね』
【ぜったい☆ショタっ子:ピカピカ(笑)】
【部隊長:素晴らしい。 魔物にさえも陛下の輝きがわかるとは】
【ぜったい☆ショタっ子:カラスがビーダマ拾うあれでしょ(笑)】
言わずもがな、ピカピカは課金王で虹色がヘルウィンドだろう。
「エレイン……あの霊峰にいたネームドモンスター」
「霊峰? あぁ、この前シュリちゃんが募集してた……」
『まぁいいわ。 ゲームのルールを教えてあげる。 といっても、簡単よ。この森に1つだけある大きな赤い木の実……これを私の元に持ってきてくれればいいの。 その間も勿論サンディーヴァの樹はあなた達を捉えようとするし、空を飛ぶ私に見つかったらビリビリが落ちてくるわ! どう? 素敵でしょう?』
【課金王:一円の為に生きる女、マーキングアローのレベルはいくつだ?】
【一円の為に生きる女:あんまり弓矢使わなくて……まだ5です】
【課金王:つまり、もって40分か……】
【部隊長:40分以内に果実を見つけ出し、マーキングの元に戻ればいい、という事ですね】
【後藤:だったらあの鳥、ここで足止めしようぜ。 弓使いの姉ちゃん最優先で生かしつつ、課金王とぜっショタ……あと部隊長か? 3人が果実ってのを探してくれりゃいい。 俺と魔法使いの嬢ちゃんで、あいつのヘイトを受ける。 弓使いの姉ちゃんは適当に援護してくれな】
【一円の為に生きる女:なんかこの人凄く頼もしいんですけど】
【ヘルウィンド:風に拘束系はいくつかあるからそれで対応する。 けど、魔法使いは基本的に紙】
【後藤:勿論俺が前衛だぜ】
今までソロしかやった事が無いというのが嘘のように、後藤は的確に指示を飛ばしていた。 それはソロでありながら、無職でありながらもそのプレイスタイルに惹かれる者がいたように……一種のカリスマと呼べるものなのかもしれない。
そしてそれは、課金王と通ずるものだ。
「『パワーポーション』! オールだ!!」
突然、課金王のいた場所に銀色の柱が立ち昇る。
銀色……否、ガラス色のそれは。
「フハハハハハハハハ!! 『ソードスラッシュ』!」
課金王がインベントリに溜め込んでいた――先程の会話中にも購入していた、4桁を越えるパワーポーションの山。 柱。
いつもはかっこよくないから、という理由で使わない音声でのアイテム呼び出しだが、この方法のみ……指定するアイテム全てを選択する『オール』が使える事がわかったのだ。
全てを同時に取り出したことでアイテムが重複し、その位置情報エラーでパワーポーションが空高くまで跳ね上がる。
そしてそれを巻き込むように、ぶった斬るように――この場で唯一、ネタ装備でない課金王のスキルが繰り出される。
基本のスキル『ソードスラッシュ』。
使用者のSTRに威力を依存する、という単純なスキルであるそれは、一時的にとはいえレイドボスをも超えた課金王のSTRによって、極大の光を発する。
いつぞやの勇者のつるぎシリーズをも超える白金色の斬撃は、横なぎに、扇型にその斬線をなぞった。
『わぁ』
それが収まったのち、最初に声を発したのはヴィンティルだった。
空を飛ぶ彼女だからこそ、その感嘆符が出てきたのだろう。
ギリギリ剣戦の範囲外にいたメンバーはただ極大の光が一瞬林の向こうを通過したようにしか見えなかったのだから。
『エセレンシュの水晶剣ね? 確かにそれにはサンディーヴァの樹は勝てないわ! うふふ! すごいのね、あのぴかぴか!』
課金王の視界。
彼女の目の前に、水晶で形作られた森は消失していた。
文字通りぶった斬って、倒したのだ。
彼女を要とした扇形に、サンディーヴァの樹達を。
【課金王:果実のドロップは無いか……】
葉を隠すなら森。
ならば、森を消してしまえば葉が出てくるだろうという発想である。
『決めたわ! あなた達はゲームをしていていいから、私はあのぴかぴかと遊ぶ!』
「ちょ、まっ」
【後藤:あー……作戦変更で】
【一円の為に生きる女:まさかヘイト管理もさせてもらえないとは】
【ぜったい☆ショタっ子:ぶっちゃけ課金王がヘイト全部持ってった、って事じゃない? それより木の実探そうよ】
【部隊長:陛下の活躍を見られないのは心苦しいのですが……そうですね。 一刻も早く大きくて赤い実とやらを見つけてしまいましょう】
【ヘルウィンド:……陛下かっこいい】
人間がどのような方針を決めようとも、裁定するのは強大な存在である。
イリュオンにおいてはよくある事だったりする。
『うふふふ! 近付いたらわかったわ! あなた、山で会ったわね!』
「む……あぁ、霊峰での事か。 なるほど、称号を持っていると反応が変わる……いや、覚えていてくれるのか?」
ワイドエリクシールを割る課金王。
彼女も、PTメンバーも全回復する。
『覚えているわ! 兄弟たち姉妹たちを正面から倒しきって、主様の証を山の頂に掲げた最初の人間ですもの! それに、ヴァルフィンの匂い……ハイトゥの気配、エセレンシュの剣。 オルキディア、バティ、アールヴァルにエルフィン……すごいわ! あなた、あなたなら主様を見つけられるかも!』
「主様……それは創世神話の龍の事か?」
スピードポーション、ガードポーションを左手に出現させる。
パワーポーションの追加を買う余裕は無いらしい。
『リュウ……? 主様は主様よ。 私は主様の祝福を受けて、殻を破ったの。 でも、時が過ぎて主様の所へは行けなくなってしまったわ。 あなたなら、いけるかもしれない……』
「勿論、行ける……いや、行くとも。 余はこの世界を完全踏破するつもりだ。 時間はある。 財力もある。 そして、余が行くと確固たる信念を持っている。 なら、行けるはずだ」
耐久ポーションを飲み、更に各種ポーションを出現させていく。
『あぁ……ハイトゥを思い出すわ。 ねぇ、私と踊ってくれる?』
「女同士、骨肉の舞うダンスを披露しようじゃないか」
ザリ、と砕けた生命の樹を踏みしばり、課金王が大剣を構える。
ヂヂヂと音を立ててヴィンティルの翼が雷鳴をかき鳴らす。 次第にヴィティルの身体は群青色から勝色へと変わっていく。
『主の地で生まれた最初の命――主様に与えられし名前はヴィンティル! さぁ、名乗りなさい!』
「ほぉ……良いシチュエーションを作ってくれるじゃないか! ふっふっふ……よかろう!!」
折角構えた体勢を解除し、腰に手をあて仁王立ちになる課金王。
そして堂々と言う。
「イリュオンが観光者――余の名は、課金王である!!」
名乗りは大切なものなのだ。
優先順位はSSよりも高い。
それほどに大切な――それは、声高々に言わなければならない。
『カキンオウね! 覚えたわ!』
「発音が違う! 課金→オ↑ウ↓ではなく課金王→だ!!」
どうでもいいことを叫びながら、課金王はポーションを握り割った。
まるで打ち切りの様な流れですが普通に続きます。




