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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王の探訪
35/56

課金王と初心者と忍者と部隊長

章終わりです。

――――称号『抜け道を知る者』を取得しました――――



「なんか称号手に入った……スけど、なんであんなラスダンみたいなレベル帯のダンジョンがプライマの噴水に繋がってるんスかね」

「流れが急すぎて戻るのは無理そうだね……。 よいしょっと」



 とりあえず噴水から出るシュリとカナ。

 よく似た町、というわけでもない。 本当にプライマの街だ。

 噴水からプレイヤーが出てくるという事態に、何事かと幾人かのプレイヤーが彼女らを見ている。 見ているだけで話しかけてこないのは、課金王のネームバリューによるものだろう。



「『抜け道を知る者』……。 ふむ。 抜け道という単語……聞いたことがあるような」

「晶水道も聞き覚えあるッスね。 今度図書館行くッスか?」

「図書館ってどこにあるの?」



 思考に耽る余りか、噴水で立ち竦んだままの課金王。 浮上してきたはずの噴水の底はしっかりと踏みしめられる程に水流が強く、しかし押し出されることは無いと言う不思議な拮抗を生んでいる。

 この噴水は、プライマの街を十字に分けるような大通りの中心に鎮座している。 そんな注目を集めるど真ん中の噴水に浮かぶ、白金色のフルプレートアーマー。


 非常に異様な光景だった。



「ソレッス。 訓練所の横にある時計がついてる建物ッスよ」

「ほへー。 っていうか、ここが訓練所だったんだ」

「……あぁ、初心者だったッスね」



 東西南北に十字を描いて伸びる大通り。 その中心に訓練所と図書館があり、その真ん前に噴水がある。

 訓練所はその名の通り様々な訓練をする場所で、スキルの試し撃ちやダメージの検証などに使われる一方、地下訓練所というダンジョンとして日々プレイヤーたちが攻略を行う場所でもある。

 このダンジョンも訓練所であることに変わりは無く、層ごとに出てくる敵のレベルが違う。 地下1層なら10lv、地下2層なら25lv、地下3層なら40lvと層ごとに+15lvされて敵の強さが上がっていく仕組みだ。

 課金王や部隊長が調べ、BBSやWikiに上げた限りでは最下層のレベルはおよそ250程。 基本的にゲームの仕様として、自身のレベルが敵のレベルより上でないと敵のレベルが見えない仕様なので、およそという曖昧な修飾が付いている。

 それなりにいい装備がドロップするので、日々のようにここへ通うプレイヤーも少なくは無い。



「ふぁぁ……課金王、そろそろアタシは落ちるッス。 また誘ってくだしゃー」

「うむ。 今日は助かったぞ。 それではな」

「おやすみ、シュリちゃん」



 視界の端に映る時刻を見れば、18:55。 眠くなるにはまだ早い時間ではあるのだが、シュリにかかっているセーフティが疑似的な眠気を彼女に与えているのだ。 長時間ゲームをやらせないためのセーフティが。

 そうでなくともシュネクレーヴェの亀とヴァルフィンとの連戦。 どちらも気を張る戦闘故に、精神が摩耗していたのだろう。

 シュリは後ろ手を振りながらログアウトした。



「課金王、図書館っていうのは何があるの?」

「む。 その名の通り、図書があるぞ。 2区画あってな。 1区画は創世神話関連の本、歴史書、自伝のようなもの、絵本。 つまりこの世界の本だ。 もう1区画は企業の宣伝本。 つまり現実世界の本だな。 自社のみでほとんどやっているイリュオンでも、それなりに他企業の助けは必要と言うわけだ。 ネタ武器にもゴリゴリ君アイスバーの大剣や、ポリッツの細剣などがあるぞ」

「……なんか、世知辛いんだね」



 正式名称を『ゴリゴリ君ソーダ味』という大剣。 炎系のダンジョンや敵が居る時に使うと溶けるとか溶けないとか。

 『ポリッツうす塩味』という細剣は突きに特化した剣であり、斬撃を繰り出そうものなら根元からポキッと行ってしまう非常に脆い武器だ。 その分素材が簡単に手に入り、ネタ武器の中では量産に向くモノであるといえるだろう。 明確なレシピが存在しないので、量産と言っていいかどうか怪しいモノではあるのだが。



「んーっ……ごほん。 カナ、今日は助かった。 少し拍子抜けする結果やもしれぬが……余はかなり満足している」

「いやぁ、色々綺麗なものも見れたし、かっこいい事も出来たし……私も満足だよ」



 普段の様子からは考えられない程可愛い声で伸びをした課金王。 直ぐに咳払いをした辺り、相当油断していたのが伺える。

 直ぐにいつも通りの声を出せるのは経験のなせる業だろうか。


 さて、解散しようか。 そんなところで、何やら2人に近づいてくる人影があった。



「む」

「おぉ、陛下じゃありませんか! いつも通り神々しい御姿で……。 そして、こんにちは。 いや、こんばんはかな? 私は部隊長という名のプレイヤーだ。 よろしく、カナ君」

「はぁ……えっと、どうしてわた……俺の名前を……?」

「私は陛下の近辺の事なら、全てを把握しているのさ……というのは冗談で、とても簡潔に言うとセイン経由かな」

「なるほど。 ウチのセインがお世話になっています」

「いやぁ、お宅のセイン君には助けられてばかりで……」



 いやぁいやぁ、こちらこそこちらこそと続ける2人。 見た目的にはどちらも男だというのに、まるで奥様方の井戸端会議かと見まがうような光景になっていた。 当事者たるセインはいないというのに、見事な盛り上がり様である。



「部隊長」

「はい、なんでしょうか」

「少々検証したいことがあるのだが……時間はあるか?」

「……おお! 勿論ですとも! 無くても作ります!!」



 そう言うが早いか、ギルドチャットに高速で文字を打ち込み始めた部隊長。 彼は課金王近衛部隊というギルドのマスターなのだ。 



「カナは……」

「あー、私はちょっと図書館っての見てくるよ。 検証だと私じゃ力になれなそうだし……。 次何か在ったら誘ってね!」

「うむ。 礼を言うぞ、カナ」

「はーい」



 図書館へと歩いていくカナ。

 本来書物等を嫌う性質(たち)のカナであるが、その足取りはとても軽やかなものだった。


 部隊長がチャットをしている間にエリクシールを購入する課金王。 今回の戦闘で減った分の補充である。



「はい! 準備万端です、陛下!」

「うむ。 パーティ申請は……早いな」

「そりゃあ、陛下からの申請を見紛うはずがありませんよ」

「では、行くぞ……ワープ結晶。 目的地は『エルフィンの大樹』」



 尻尾が有ればブンブンと左右に振っていそうな部隊長と、それにどこか苦笑いをしているような雰囲気を纏う課金王はワープ結晶の白い光に包まれていった。


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