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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王の探訪
34/56

課金王と忍者と初心者と魚

次話で章終わり!


【手裏剣大好き:やけに長い穴ッスねー】

【課金王:一応マッピングをしているが……大分深くまで来ているな】

【kana0729:変な気配を感じるよ きをつけて】

【手裏剣大好き:カナはチャット慣れてないんすか?】

【kana0729:足場が不安定過ぎて打ち辛いだk】

【手裏剣大好き:それだKっすか】



 激流ウォータースライダーのような穴の中を流れながらチャットをする三人。 課金王はマッピングをしながらなので、あまりチャットに参加してこない。



【手裏剣大好き:課金王、気配察知に一瞬赤アイコンが映ったッス。 一匹だけッスけど】

【課金王:単一のボスやもしれんな。 カナ、一応装備を確認しておけ】

【kana0729:え、この激流の中戦うの?】

【手裏剣大好き:カナが思ってるよりは浮力高くないッスから、ヘーキっすよ】

【課金王:(ひら)けたところにでるぞ!】



 先頭の課金王が注意を促す。 ついでにワイドエリクシールを飲む課金王。 全員のHPが完全に回復する。

 気付かぬ内に減っていたのだ。 ゼーラーゴの湖へ辿り着くまでに在った水流と同じように。 ここの水も少量のリジェネ効果があるようだが、少しだけ追いつかない微妙なダメージ量なのだろう。



――――『ゼーラーゴの晶水道(しょうすいどう)』に到達しました――――



「む……少し流れがゆるやかになったか」

「狭い所から広い所に出たからだねー。 って、うわぁ……すごいトコだね……」

「キレイっすけど、当たるだけでがっつりダメージ食らいそうな地形ッスねこれ」



 そこは水晶で形作られたトンネルだった。 いや、なりかけの水晶という表現が正しいのかもしれない。

 水の色を濃くしたような色合いの巨大な水晶のトンネルが、先が見えない程遠くまで続いている。 水の流れる方向にも、流れてきた方向にも。

 トンネルの幅はかなり広い。 ともすればシュネクレーヴェの亀がすっぽりと収まってしまうのではないかと言う程に。



「もしやこれは……創世神話の……」

「ッ! 課金王! 後ろ、赤アイコンッス!!」

「わ……コレ、レトロゲームで見た事あるよ! ダライ……」


 

 シュリに言われて振り向いた課金王とカナ。


 そこにいたのは、先程のシュネクレーヴェの亀よりも巨大な……鯨だった。



「『ヴァルフィン』……レベルは見えぬ、か……」

「流石にスクショ撮ってる場合じゃないと思うんスけど! これ倒せるんスか!?」

「パワーアップアイテムとか流れてこないかな! あぁ、ミサイルとかレーザー撃ちたい!」



 表示名を見て、即座にスクリーンショットを取ろうとする課金王。 彼女の目的はより美しくかっこいい物を撮りたいが5割、創世神話の真実が知りたい5割である。

 そして一人はしゃぐカナ。 明らかに世界にそぐわない兵器の名を陳列する。 もっとも、ネタ武器という括りの見た目だけであるならばミサイルやレーザー武器があったりするのだが。



「なるほど、ここはやはりゼーラーゴの湖と繋がっているのか。 ゼーラーゴの魚達というのも見てみたかったが……」

「考察は後にしないッスか! とりあえずバラけるッス!」

「こいつは倒して良い奴なの? さっきの亀みたいにダメだったー、とかないよね」

「わからぬ。 だがまぁ……倒すなり逃げ切るなりしなければ、潰されてしまいそうだ」

「へ?」



 おもむろに水晶剣を引き抜く課金王。

 先に離脱したシュリを除く2人のすぐそばまで、ヴァルフィンが迫っていたのだ。

 


「『撫で斬り』!」

「ちょ――!?」



 課金王は撫で斬りを発動させ……カナを吹っ飛ばす。

 そしてエリクシールを手に出現させる課金王。


 その身に、膨大な質量ともいえるヴァルフィンの体当たりが衝突し――なかった。



「何ッ!?」

「え、なんでこっち来るの!? っていうか小回り効き過ぎでしょ!」



 巨大な図体をものともしない様子で身体を捻り、カナを狙いに行くヴァルフィン。

 課金王やシュリには目もくれず、確実にカナを狙いに来ている。



「カナ! アタシの苦無を持つッス!」

「これ!? って、うわっ!」



 支える物が無い水中の身動きに慣れないカナを、シュリが引っ張る。 

 間一髪でヴァルフィンの体当たりの直撃を避ける事が出来た。


 しかし、再度ヴァルフィンはカナを狙いに行く。



「なんで私!? レベルが一番低いから!?」

「わかんねッスけど、カナだけを狙うとわかっていれば作戦も立てやすいッス。 走りは微妙な浮力が邪魔するッスから、蹴りか四足で行動するのをオススメするッス。 危なくなったら……ッ!」

「『ソードスラッシュ』!」



 一切の無駄な動きをすることなく、ヴァルフィンは執拗にカナを狙う。 課金王はその質量を逸らす事は無理だと判断し、2人にソードスラッシュを放つ事で離脱させた。 すぐさまワイドエリクシールを飲む課金王。

 一瞬、フルプレートに覆われた課金王とヴァルフィンの目が合う。



「助かったッス! 危なくなったらさっきみたいに引っ張りあげるッスから、名前呼んだら取り出してほしいッス! じゃ、囮役頑張るッスよ!」

「やっぱりそういう事だよねッ! 剛衝……は、無理そうだから離脱!」



 迫りくるヴァルフィンに剛衝拳を放とうとしたカナ。 しかし、ヴァルフィンの大口を開ける(さま)に即座に剛衝拳をキャンセル。 壁を蹴ってその場を離脱する。



「余の読み通りであれば、あと五分程でこの戦闘は終わる! 出来るだけ天井付近に居るのだ!」

「制限時間がわかってるならありがたいッス! ッ! カナ!」

「ひゃっ!?」



 名を呼ばれたら苦無を出す。

 反射的に行ったその行為は、先程よりも早いスピードで激突してきたヴァルフィンを避ける事に貢献した。



「あぁ……称号か」

「あ、『ヴィンティルに見初められた者』の事ッスか? そういえばヴィンティルとヴァルフィンは(つがい)だったッスね」

「のんびり考察してる場合じゃないって言ったのシュリちゃんだよね! この……『剛衝拳』! 『光晶拳』!」



 左手で剛衝拳を発動させた右拳を包むように掴み、そのまま光晶拳を発動させるカナ。

 そしてそれを、向かい来るヴァルフィンの直前の(・・・)の水に叩き込んだ。


 ガンッ! という水とは思えない――水ではないのだが――硬質な音が響く。



「……!」



 その攻撃で、初めてヴァルフィンが怯む。



「む……今、何をしたのだカナ」

「剛衝拳の鎧通し効果に剄を入れて、私とヴァルフィンの間の水に衝撃を通しただけだよ。 でも、衝撃そのものは通るみたいだね……。 CT(クールタイム)2分(ごと)なら攻撃できるかも!」

「なんかすごいコト言ってないッスか?」



 怯みこそしたヴァルフィンだが、然程ダメージは入っていない。

 再度向かい来るヴァルフィン。



「ッ! カナ、シュリ! 上だ!」

「上? あ、穴がある!」

「足元注意、ッスよ! 『インパルスラッシュ』!」



 上に意識が行ったカナを手助けするように、シュリが『インパルスラッシュ』を発動させる。

 『インパルスラッシュ』は小さな衝撃波を出すスキルで、衝撃波系スキルの効果範囲としては最小。 組み付かれた時などに離脱するためのスキルだ。 なお、インパルス ラッシュであってインパル スラッシュではない。 エフェクトから『ソードスラッシュ』といったスラッシュ系のスキルに間違われやすいのである。


 小さいとはいえ、それなりのレベルのシュリが放つ衝撃波。

 先と同じようにヴァルフィンはそれに怯み、身体を捻らせる。



「シュリちゃん、ありがと! さ、行くよ!」

「ぐぇっ!? え、襟元苦しいッス~!」



 課金王は先行して安全を確認し、殿(しんがり)を務める形になったシュリをカナが引っ張り上げた。


 ヴァルフィンは諦めたのか、それ以上追って来る事は無かった。






「課金王、この穴……どこに繋がってるんスかね」

「……あまり考えたくない距離なのだが……聞くか?」

「距離? 流されてたの5分ちょっとでしょ? そんな遠くまで来てる?」



 螺旋状に登る穴。 垂直ではないが、それなりに大きい角度でその穴は造られている。


 

「……光が見えた、な。 恐らくここは……」

「ん? あれ、なんで街の表示に……」



 穴に光が差し込む。

 水の流れも穴の上の方へと向かっていた。



「プライマだ」

「へ?」

「え?」



 ザバァと課金王たちの身体が水から浮上する。


 そこは、彼女らがよく慣れ親しんだはじまりの街だった。



イメージ的にはアイアンフォスルではなくグレートシングです。

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