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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王の探訪
30/56

課金王と忍者と初心者と亀

かーめかーめかーめ……ハッ。


 初めに立てた計画通り、そして読み通りシュネクレーヴェの亀が口に真白のブレスを収縮し始めた。

 それを目視したシュリとカナはゼーラーゴの湖へと飛び込み、10秒計って課金王も飛び込む。 


「ナニあれ。 亀? でっかい亀?」

「うむ。 神話によれば熱気を司るサンディーヴァと対を為す冷気のシュネクレーヴェ。 一匹一匹が山の様にでかい亀だそうな。 ゲームの仕様上なのか隠れているのかはわからぬが、他の山に攻撃しても出てこなかった辺りこの近くにいるのはあの一匹だけぞ」

「来るッスよ」


 しっかり15秒計っていたシュリの言葉の直後、湖底から見上げる空が具墨(くす)む。

 しかし、ゼーラーゴの水には一切浸食しない。 やはり凍らないようだ。


「おぉ……やはり、綺麗だな」

「うん。 ずっと見てたい」

「いやいや、早く割らねーと亀がまた休眠状態になっちゃうんじゃないッスか?」

「うむ。 頼むぞカナ。 叩き割ってくれ」


 陽光が氷の中を複雑に屈折し、虹色に揺蕩うゼーラーゴの湖へと入射する。

 岩々から漏れ出る気泡がそれをまた反射し、3人はまるでステンドグラスの中にいる様な感覚だった。


「よーし、行くよー!」


 湖壁に手をかけ、水面近くまで浮上する。 水よりも浮力が小さいため、泳いで浮き上がる事が出来ないのだ。


「……光晶拳! がいいかな……いや、光! 晶! 拳! のがいいかな……」

「速くするッス」

「光晶拳!」


 カナの真白に光る左拳が氷へと突き刺さる。

 セインの槍でも数㎝しか削れなかった氷。 それが、『なんでも殴れる』という性質を持ったその拳の着弾点を中心に罅が入る。


「もう一発!」


 壁を蹴り、勢いを付けて光晶拳を纏った右拳を叩き込む。

 罅が広がる。


「えぇー、硬すぎない……?」

「罅の広がりから見て、あと一発ぞ! スクショの準備は整っている!」

「あ、さっきからなんか弄ってると思ったらそんなんしてたんスね」


 虚空に指を滑らせて準備万端という様子で構える課金王。

 彼女の趣味は綺麗な景色を保存・観賞する事である。


「よーし……じゃあ、行くよ……!」


 左手を鉤手状にして光晶拳を発動させ、氷に叩き付けるカナ。 指が氷へと減り込む。

 その指だけで身体を支え、ぶらんと宙に――水中に浮くカナ。


「光! 晶! けえええええええええん!!」


 グッと指と肘に力を入れ、身体を――右拳を引き寄せる。

 当然、その拳には真白の光が宿っている。


 要は片手逆上がりと同じだ。 腕、胸筋、腹筋、背筋。 手先から順に力を入れ、その伝播を以て全力の一撃を叩き込む。


「おぉ……」

「先行くッスよ!」


 スクショを撮る課金王を尻目に、シュリがスピードポーションを飲んで駆けだす。


 課金王の視界に映るのは、まるで天が割れたかのような光景。

 赤毛の青年が、その拳を以て空を割っている。


 ひどく、幻想的な光景だった。





 氷はゼーラーゴの湖に入水した傍から溶けている。

 いや、昇華していると言った方が正しいだろうか。

 やはりこれも普通の氷ではないのか、存在そのものが消えてなくなっているかのように見えた。


 シュリは氷の裂け目、割れ目を狙って駆け抜ける。 氷を蹴り、苦無を滑らせて体のバランスを取る。

 足を滑らせるような愚は犯さない。 

 凄まじく加速した世界の中。 魚眼レンズのように視界の端の景色が歪み、遥か後方へと過ぎ去っていく。

 多量の情報量の中から必要な情報だけを絞り込み、踏み込むべき場所、次に飛び移るべき場所を捉えて押し進む。


 ブレスを吐き終った余韻なのか、それとも近づいてくるシュリを認識できないのか。

 一切の動きを見せないシュネクレーヴェの亀の脚をシュリは駆け登っていく。

 手には苦無。 どちらも麻痺毒を付与したモノで、それを体表に滑らせるようにして蓄積させていく。

 少しずつ、しかし確実に。


 それに遅れてカナも到着したようで、シュネクレーヴェの亀の脚を光晶拳を発動させた両手で掴みながら昇る。


 流石にシュネクレーヴェの亀も気が付いたようで、首を持ち上げて咆哮を上げた。


「うるさっ!?」

「うっせぇッス!」


 至近距離にいたシュリとカナはその声に耳を塞ぐ。

 咆哮を上げ終えて前へと向き直った亀の視界。

 そこに、ようやっと湖から出てきた課金王の姿が映った。


「む?」

「グォォォォオオオオオオオオオオオ!」

「な、歩くんスか!?」

「剛衝拳!」


 シュネクレーヴェの亀が課金王に向かって突進する。

 カナが足に剛衝拳を撃ち込むも、シュネクレーヴェの亀の足は止まらない。 


「良いだろう! ガーポとパワポがぶ飲みで止めてやる!」

「えぇ!? 避けないの!?」


 エセレンシュの水晶剣を地面へと突き刺し、ポーションを飲んで防御力と力を上げる課金王。 

 

「カナ! 出来るだけ上の方にいるッス! 課金王は一撃死はしないッスから!」

「あ、鎧の効果! 光晶拳!」


 カナはアールヴァルの鍾乳洞で聞いた課金王の鎧の効果を思い出した。

 HPがフルの状態ならば、どんな攻撃を受けても1残るという効果を。


 そして、課金王とシュネクレーヴェの亀が激突する。


シュネクレーヴェの亀って言葉がどんどんゲシュタルト崩壊する……

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