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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王の探訪
29/56

課金王と初心者と忍者

話が進みません。 ほとんど進んでません。 しかも短い!


「ごめん、シュリちゃん! 対人戦になるとどうも見境が無くなっちゃって……」

「ルールの元だったんだから構わないッスよ。 そもそもアタシは負けたんスし」


 決闘が終わってネクサリア・コロシアムロビー。

 白金色のフルプレートアーマの上から顎であろう場所を押さえ、ふむふむと頷いている課金王と、思いっきり小学生を殴ってしまったことを後悔するカナ、特に気にした様子の無いシュリがいた。

 ロビーでは戦闘シーンを振り返ったりどれほどのダメージが算出されていたのかを見る事が出来、先程のカナの一撃がどれだけ凄まじいモノなのを物語っていた。


「差支えなければ聴かせて欲しいんスけど、カナの剛衝拳、スキルレベルいくつなんスか?」

「剛衝拳はそんなに高くなってないよー? えーと……20だね。 光晶拳は33!」

「マジッスか……? ん? もしかして他にスキルは……」

「ないよー。 光晶拳はクールタイムがないから、ずっと使っちゃっててさー」


 参考程度だが、5年間ずっと忍者をやっているシュリの、先程使ったスキル『焼刃』のスキルレベルが31だ。 シュリは様々なスキルを使い分けているとはいえ、カナの凄まじさが窺い知れた。


「そんなんでよく今まで……。 さっきの動きでヤバイ人だとは思ったスけども」

「えぇ!? ヤバイって……」

「あ、悪い意味じゃないッス! えーと、理解できない、も違うッスね。 んー、パない人って……なんて言ったらいいんスかね……?」

「セインと余、どっちが近い?」

「あ、それは課金王ッス。 ぶっちゃけ同類?」

「との事だ。 よかったな、カナ」

「何がッ!?」


 


★★★★




「んじゃ、そろそろ行くッスか?」

「うむ。 カナよ、時間はまだ大丈夫か?」

「全然問題ないよ。 ご飯も食べたばっかだし、このまま深夜までいけるね!」

「深夜はアタシが無理ッスけどね」


 ネクサリアのコロシアムを出た3人。 多少の寄り道はあったが、彼女らの今日の目的はPVPではなく探索である。


「では飛ぶぞ。 ワープ結晶……目的地は、『ゼーラーゴの湖』」


 一行は光に包まれた。




☆☆☆☆




 課金王にとっては見慣れた、シュリにとっては何度か体験した、カナにとっては未知の体験である、ゼーラーゴの湖底に3人は出現した。

 カナは一瞬驚いて息を止めたが、すぐにそれが水ではない事に気づき――ついでに周りの2人も見て――恐る恐るゼーラーゴの水を肺に入れた。


「あー、説明してなかったッスねー」

「ナニコレ……水? ちょっと気持ちいいけど……」

「検証班によると、効果をかなり薄めたエリクシール、との事だ。 ここは調査されていないから効果の度合いがどうなっているのかは知らぬがな」

「へぇ……。 え? じゃあコレ持って帰れば……」

「容器に入れようとすると空気みたいになって消えるッス」

「ですよねー」


 最初に効果を知った時のシュリやセインと同じ反応をしたカナ。 落ち込み方はセインによく似ていた。


「では、攻略法を話すぞ。 と言っても、そこまで難しい話ではない」

「そうなんスか? 課金王ずっと研究してたみたいッスけど」

「あ、今回攻略を手伝ってほしいって言ったボスの話だね!」


 湖底はゆらゆらと虹色の光が差し込み、作戦会議をする3人を包み込む。

 

「うむ。 此度のボス、シュネクレーヴェの亀というのだがな、そいつは此方が攻撃を入れると覚醒する。 覚醒後、口にブレスを溜め、きっかり15秒でそれが放たれる。 そのブレスは地上では回避・防御ともに不可らしくてな、回避するには2通りの方法を使うしかない」

「1つは上空への回避ッスよね。 アタシとセインがやったみたいな」

「うむ。 そして、もう1つはこの湖へ飛び込む事だ」


 ゼーラーゴの湖底を指さす課金王。 ちなみにフルプレートアーマーの中にはゼーラーゴの水は入り込んでいない。 だというのに回復効果があるのはゲームであるという所か。


「あー、そういう事ッスか。 確かにこの湖温かいスもんね」

「えーと? 色々質問していい?」

「うむ。 なんでも聞くがいい」

「そのブレスってどういうのなの? 風とか炎なら、殴れると思うけど」


 光晶拳を発動させた拳を見せるカナ。 両手に発動させ、バッテンを作ったり構えを取ったりしている。


「着弾と同時に周囲一帯を凍りつかせるものだ。 状態異常ではないようでな、エリクシールでの解除ができなかった。 着弾前のブレスに光晶拳は試したことが無かったが……今回は安全策で頼むぞ」

「ん、おっけー。 次の質問ね。 その攻撃は湖の上を凍らせたりしないの?」

「するぞ。 周囲一帯とは、このゼーラーゴの湖がある盆地全土の事だ。 だが、この湖の水だけは凍らない。 恐らくこちらが正規の安置なのだろう」

「ふむふむ。 最後。 避けた後、どうやって倒すの?」


 そう、湖の中に逃げたとして、湖を蓋するように氷のブレスが来てしまえば閉じ込められてしまう。 勿論課金王もソレは想定済みの様で、カナの肩にポンと手を置いた。


「そのためにカナに来てもらったのだ。 着弾前ではなく、着弾後のブレス……巨大と言える氷を叩き割ってもらうためにな」

「あー。 なるほど、光晶拳ってそういう使い方するんスね。 なんでも殴れるってのは伊達じゃないと。 氷が割れた後はどうするんスか?」

「総攻撃だ。 身体を駆け上りさえすれば、ブレスは吐いてこない。 たまに高速で身体を回転させることが或るようだが、各自しがみ付けば問題ないだろう」


 サラっととんでもない事を言う課金王。 だが、シュリもカナも突っ込まない。 何故なら彼女らはそれができるからだ。


「んじゃ、一応カナには苦無渡しておくッス。 どうしても避けられない攻撃とか来たら引っ張るッスから」

「引っ張る……? ん、よくわかんないけどわかった。 でも避けられない攻撃が来ても問題ないと思うよ。 殴り返すから」

「シュリはいつも通りスピードポーションで良いか? カナは……パワーポーションとスピードポーション、どちらか選んでくれ」

「あ、じゃあパワーポーションで! 速さは補えるし……握力の方が大切だからね」


 準備を整え、一行はゼーラーゴの湖底から畔に出た。


 1つだけ異彩を放つ、近距離の巨大な山。 気付いてしまえば異質でしかないソレ。


「さて……2人は畔の近くにいてくれ。 余が全力の一撃を足に叩き込む。 最近見つけた最高火力でな!」

「了解ッス」

「課金王が本気で戦うのって見たことないなぁ。 そこまで付き合い長いわけじゃないんだけど」


 シュネクレーヴェの亀であろう山の直前に立つ課金王。

 課金王は背中に担いだ水晶剣を片手で構え、もう片方の手でインベントリを操作する。

 

「行くぞ!」


 課金王が指をスライドさせる。

 すると、課金王の眼前に計10つの赤いポーションが出現した。 全てほぼ同時に、だ。


 課金王は器用にもその10のポーションを全て大剣で薙ぎ割ると、その回転力を殺さずにスキルを発動させる。


「『撫で斬り』!」


 課金王の担いだ水晶剣――エセレンシュの水晶剣が、真白の光を放つ。 その光は極大と、極光と呼べる程に大きく広がり、シュネクレーヴェの亀に決して浅くない傷をつけた。


「グゥゥゥォォォォォオォォオォォォオオオオオオオオオオオオ!」


 巨大な亀が、目を覚ます。


更新再開デース

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