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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王と仲間達
24/56

槍使いと忍者と仲間達の死闘

視点がコロコロ変わります。


【セイン:迷った】


「アイツ……! さっきの応はなんだったんスか!」


 場面代わって、既に吹き抜けに辿り着いたシュリ。 課金ではない生産のパワーポーションを飲み干してロッククライミングを行っていた。

 現状見つかっている最高の素材と、見つかっている最高ランクの生産組に造ってもらったパワーポーション。 効果はstrに+52するというもの。 身内価格として大分値引いてくれたものの、1本お値段3Mという中々のものだ。


【セイン:12Mの回避槍が意味なくなったな】

【サイバー太郎:ばーかばーか!】

【クレバー伊藤:あとはまかせt】

【ryouhei831:ライポ尽きた。 後は当たって砕けるわww】


 パーティメンバーが次々に倒れていく。 感傷に浸るほどシュリは感情的ではないが、馬鹿(セイン)に付き合わせた事だけは申し訳なく思った。


 さて、シュリのロッククライミングであるが、これが中々に遅い。

 リアルのシュリにロッククライミングの経験が無い事もそうだが、元々のシュリのstrが低い事、そして掌をそこまで重要視していなかったことが起因している。 シュリは与り知らぬ事だが、セインとカナは拳を握る事に重きを置く生活をしていたが故に、課金王と来たロッククライミングでスイスイと昇っていけたのだ。


【†暗黒のガチタンク†:死ぬ前にワイド使う!】

【†暗黒のガチタンク†:3秒後!】


 吹き抜けは自然由来の物であり、ロッククライミング用に造られたでっぱりなどがあるわけではない。 シュリは何度か落ちそうになり、その度に苦無を刺すことで事なきを得ていた。

 そして気付く。

 あれ、刺して昇ればいいんじゃないッスか?


【†暗黒のガチタンク†:0!】


 ザクザクと両手の苦無で吹き抜けを刺しながら登って行くと、慣れ親しんだ回復効果が身を包んだ。 †暗黒のガチタンク†のワイドエリクシールだ。




★★★


「『ロックスクード』『ロックスクード』ッ! 『サンダースクード』!」


 ワイドエリクシールで全回復した山川斎藤重兵衛が、ここぞとばかりに攻勢に転ずる。

 沢山のサンディーヴァの鳥達を取り逃してしまったものの、3人のタンクをその全てが抜け切れるはずもなく。

 塊となっている鳥達に向けて、周囲の岩石から生成した鋭い盾を殺到させた。 最後の『サンダースクード』は、サンディーヴァの鳥の1匹が通り抜ける瞬間に掠め取った物だ。 敵の属性を掠め取ってスクード系に組み込むのは、実践においては山川斎藤重兵衛も初めてだったりする。


 とかく、これによって広間に残っていたサンディーヴァの鳥達がかなり削れた。


「『ワイドシールド』! 太郎! 最大火力準備してくれ!」

「りょ、了解! 『チャージショット』……!」


 †暗黒のガチタンク†が一歩前に出て、パーティメンバー1人の受けるダメージを全て肩代わりするスキル『ワイドシールド』を使う。 対象はサイバー太郎。 †暗黒のガチタンク†自身も片手剣・盾使いではあるが、サイバー太郎の方が自身より火力を出せると判断して彼に要請した。

 『チャージショット』は任意のMPをチャージする事が出来る遠距離武器のスキルだ。

 最大火力と言われたので、サイバー太郎の最大MP値――先程のワイドエリクシールで全快――を込める。


「ライフは限界……つか、これは盾が壊れるな――」

「チャージ完了! いつでもいけるぜ!」

「んなら頼んだ、『突進』!」


 サイバー太郎の完了を受けて、†暗黒のガチタンク†は『ワイドシールド』を解除して『突進』を行う。

 『突進』は文字通り突進するスキルだ。 飾り気などない。 ただ愚直に、盾によって前方を吹っ飛ばす。

 だが、凄まじい速さで動く鳥達の中に単身突っ込めば、見る間に全身を削られてしまう。


 それこそが†暗黒のガチタンク†の狙い。 ヘイトを一瞬でも自身に集める事で、サイバー太郎がスキルを使う隙を造った。


「『チャージショット』!」


 裂かれ、貫かれ、光の粒子となる†暗黒のガチタンク†に向かって、極光とも言える矢が放たれる。


 ――サイバー太郎の全MPを込めた『チャージショット』は、広間にいたサンディーヴァの鳥達を喰らい尽くした。


「や、やったか!?」

「ちょ、それ禁句! 『ロックスクード』!」


 スキルのエフェクトが消える前にフラグを建てるサイバー太郎に向かって、一迅の矢――否、サンディーヴァの鳥が1匹飛んできていた。 それを山川斎藤重兵衛が『ロックスクード』で仕留めたのだ。


『へぇ……』




★★★


「……終わった、か……」


 洞窟の壁に背を凭れて座り込んでいるのはウィッパー。 彼の視界に映るライフバーは赤い。 自身の持っていたエリクシールと、†暗黒のガチタンク†の使ったワイドエリクシールを以てしてもこれだけ削られたのだ。

 タンク3人が頑張って根元を滅すのがもう少し遅ければ、ウィッパーは光の粒子となって消えていただろう。


 ライフ、MPともに僅か。 もう少し残っていれば上段の援護にいくつもりだったのだが、この体たらくでは足手まといになるだけだと判断し、こうして座り込んでいる。


 思い出すのはもっつぁららが目の前で消えた瞬間。

 

「……レベル上げしないとなぁ……」



★★★


【ryouhei831:ワイドサンクス】


 ワイドエリクシールで全快服、ライフポーションが底をついている事に変わりはない。

 前段が取りこぼした幾らかの鳥達を叩き斬ったものの、ryouhei831は回復することができずに残りの鳥達の凶嘴によって倒れた。

 

★★★


「はぁ……『独楽微塵』」


 クレバー伊藤が倒れた今、四段目を守るのはマッカダナーだけだ。

 いくらライフはMPが回復しようと、精神的疲労は回復しない。

 双剣使いはその装甲の紙懸かり故に、インファイトしながら回避を行わなければならない。 ヒット&アウェイが基本の忍者や、その大剣・両手剣でもって攻撃を防ぐことができる彼らよりも気を割かなければいけないのだ。 それでも格闘家よりはいいのだが。

 先程まではクレバー伊藤と並んで処理することで、ヘイトを半分ずつにできていたマッカダナーだったが、現在は1人。 数こそ減ったものの、その心労はマッカダナーに重くのしかかっていた。

 『独楽微塵』は文字通り自身が周り、周囲をみじん切りにするスキルだ。

 避けなければいけない状況に於いて、普通は使わないソレ。 使ってから気付く、その危うさ。 選択ミス。

 幾匹かの鳥達を巻き込むことはできたものの、マッカダナーはサンディーヴァの鳥達に貫かれて粒子となった。



★★★


【ウィッパー:恐らく次に魔法使い2人のトコにいく鳥達が最終波になると思う。 シュリちゃんのとこにいかせないように頑張ってくれ】


「MP回復はありがたいね。 『アイス・フォール』」

「うん。 これを凌ぎ切ればいい。 『クラウド・ボール』」


 ウィッパーからのチャットを受けて、2人は魔法を準備する。 『アイス・フォール』は氷弾を降らせるスキルで、『クラウド・ボール』は冷気と風の刃が混じったサッカーボール大の球を投げつけるスキルだ。


「…………――――ィィィィィイィィィィィィィイイイ」

「来た!」

「『クラウド・ボー』――ガッ!?」


 サンディーヴァの鳥達の泣き声をホワイトマジシャンボーイが確認し、ヘルウインドが『クラウド・ボール』を放とうとして――。


 腹に衝撃を感じ、吹っ飛ばされた。


「ヘル!? うわ!?」


 何事かとヘルウインドの方を向いたホワイトマジシャンボーイも、左肩に衝撃を感じて吹っ飛ぶ。

 最初のシュリと同じだ。

 少しだけ余裕ができていたことも相俟って、2人は完全に反応が遅れた。


 2人は魔法職。 ヘルウインドの『ジン・ヴァッセ』が多少サンディーヴァの鳥達を削ったものの、その勢いを殺す事は出来ず。

 2人は粒子となって――。


「エリクシールとエリクシール、っと! んで『旋風槍』!」


 ――消えなかった。


「ッ! 『ジン・ヴァッセ』! 『ジン・フォール』!」

「助かりました! 『フラッド・カノーネ』! 『アイス・フォール』!」


 エリクシールでライフを回復した2人は、即座に攻勢に移る。

 MPはすべて使い切る勢いだ。


「とっておきだ……魔法撃ったら下がりな! 『サンディーヴァの嘴』!」


 2人を助けた男は、その右手にナニカ――熱気の塊のような、実体のあやふやな槍を出現させる。

 

 そしてそれを、力の限り。


 投擲した。







「……今のは……」

「『バクフウランス』……? いや、威力がおかしい……」


 身に迫っていたサンディーヴァの鳥達を一瞬で消し飛ばした、男の投擲。

 投擲された槍は地面に着弾すると、赤を通り越して白く染まった光と共に周囲を飲み込んだ。 効果的には『コールドヤリ』や『バクフウランス』と同じ。

 だが、今の熱量は……。


「ここのレアドロップの槍だよ。 『サンディーヴァの嘴』ってんだ。 本来投擲用じゃねーんだが、まぁあの状況なら仕方ないだろ」


 投げた張本人――セインが説明する。

 今回の依頼人の1人にして、『迷った』などとほざきやが……言っていた槍使い。

 自身ら『ラジャネーレダロー』のギルメンであるシュリと行動を共にすることが多い人物。

 恐らく……というか、確実に高価も高価、本当に希少なレアドロップ品を投げたにも拘らずスッキリとした顔のセインを見て、ホワイトマジシャンボーイもヘルウインドも何かを言う気が起きなくなった。



★★★


「うん、しょ……っと。 やっと昇れたッス……」


 パーティメンバーが全てのサンディーヴァの鳥達を処理し終えたと同時、シュリは吹き抜けの一番上……頂上へと辿り着いていた。


 一応下見に何度か上った事はあったが、しっかりと手順を踏んだ後と今では見晴らしも違ってくるという物。


「と、感傷に浸ってる場合じゃないッスね……」


 シュリはインベントリを操作し、あるものを取り出す。


「『エリクシール』……これを真上に投げりゃいいんスよね」


 セインから説明を受けた通りの手順だ。

 小学生には中々にエリクシールは高いので、セインから譲ってもらった代物。

 それをシュリは、正確な投擲技術によって自身の直上へと投げつけた。




★★★


『へぇ……正解を知っていたのかい。 懐かしいねぇ』


★★★


 シュリの手からエリクシールが離れた瞬間、洞窟の各場所で青い輝きが生まれた。

 広間に、洞窟に、吹き抜けに。


 倒したはずの、消し飛ばしたはずのサンディーヴァの鳥達が輝きと共に蘇ったのだ。

 パーティメンバーは即座に武器を取り、攻撃を行う。

 しかしその悉くがサンディーヴァの鳥達をすり抜け、不発に終わった。


 急加速するサンディーヴァの鳥達。

 せめてもガードしようと構えるメンバーさえもすり抜けて、サンディーヴァの鳥達は上へ上へと向かっていった。






「『気配察知』! ……マーカー表示は……白? 敵対じゃないんスか……?」


 自身の昇ってきた吹き抜け、そして山嶺の各所から溢れるようにして出てきたサンディーヴァの鳥達。

 シュリは『気配察知』を発動させて、少しでも身構えようとするが、その表示色は白。

 脅威度は赤から青で表示される。 白など、街のNPCくらいしか見たことが無い。 つまり、脅威度も何もないということ。


「ピュィィィィイィィィィィィイィイイイイイ」


 回る。


 青い鳥達は碧い光となって、碧い光は蒼い竜巻となって。


 シュリを――否、エリクシールを中心に、竜巻はその勢いを増して行いく。


 ふと、シュリの顔に影が落ちる。

 月が見えていたはずなのに。

 何事かと上を見上げれば。


 そこには、一匹のサンディーヴァの鳥がいた。


「『ヴィンティル』……コイツが……」


 表示される名前を確認すれば、しかりと創世神話に出てくる愛し子の名。


 脚でシュリが放り投げたエリクシールの瓶を掴み、無音のホバリングでシュリを見下ろしていた。


分かりづらいのは仕様です。

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