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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王と仲間達
21/56

槍使いと忍者と精鋭達

6000文字!

「うわー……これがスクールカーストって奴っすか?」

「スクールじゃねーけどな。 まぁ似たようなもんだ」


 セインとシュリが12人を先導して進んでいくのだが、早くもパーティ内でさらに小さなパーティが出来始めていた。 つまり、仲のいい、もしくはよくなった者同士で集まっているのだ。


古『クレバー伊藤:ギルマスー挫けそうなんだけど』

古『サイバー太郎:女が……女性が欲しいでござるううう』

古『セイン:グッニャグニャがいるだろ。 マッカーサーも』

古『マッカダナー:マッカダナーだ!』

古『グッニャグニャ:あ、私今若い子達と話してるんでー』

古『サイバー太郎:身長の倍あるハンマー担いで嬉々と敵の群れに突っ込んでいく女はちょっと……』

古『クレバー伊藤:もっつぁららさんと会話したい』


 ギルドごとに固まるというわけではないが、やはり趣味の問題か、もしくは溢れ出る女性欲しいオーラか。 男性だけのまとまりが出来てしまうのは仕方のない事だった。


「ウチは元から男女比半々ッスから、こういう場にフレンドリーなのが多いッス」

「あー。 まぁウチは攻略組ばっかだからなぁ。 どうしても男の比率が高くなるわな。 確か、うちのマッカーサーはシュリと同年代で同性のはずだ」

「マッカダナーだ!」

「今のがマッカーサーな」


 最後尾辺りにいたのにも拘らず、セインの間違いを指摘するマッカダナー。 その名に恥じぬ、全身真赤の衣装・髪色の双剣使いだ。 最前線の攻略組ギルド『古城の砲門』の精鋭が1人である。


ラ『ホワイトマジシャンボーイ:ガチタンちょっとこっち来てくれないか』

ラ『†暗黒のガチタンク†:いけるならいきてぇが、ちょっとタンク談義に花が咲いててな』

ラ『ryouhei831:タンク談義とはwww』

ラ『手裏剣大好き:白魔は年上のおねーさんに言い寄られてデレデレっすね』

ラ『もっつぁらら:私も年上なのだけれど』

ラ『†暗黒のガチタンク†:ギルマスは、な……』

ラ『もっつぁらら:喧嘩なら買うぞ?』 


「そっちの構成はどうなってる? ウチは双剣2人ハンマー1人盾1人だが」

「ウチのはえーっと、盾・片手剣と氷魔と風魔、軽業師と両手剣ッスね」

「山川が盾のみで俺が鞭だ。 よろしくな」

「あんたは有名だから知ってるけど、山川さん盾のみなのか。 珍しいな」

「山川だけでいいよーん。 正直俺にとっては盾プラス何かで戦うって発想が無かったんだけどねー」

「あぁ、タンク談義ってそういうのッスか」


 歩きながら、道を下りながら装備を確認していく。 どうしてもギルドチャットが盛んになるのは、気心が知れた仲だからか。


古『サイバー太郎:この山川って人やばい。 思い出したわ』

古『セイン:有名人だったか?』

古『サイバー太郎:盾のwiki充実させてる人。 盾の応用技術とかほとんどこの人が見つけて書いてる』

古『セイン:へぇ』 


【ヘルウインド:道中はモンスター湧かないの?】

【手裏剣大好き:行きはわかねーッス。 一番下に着いてからが本番ッスね】

【ヘルウインド:あり】


古『クレバー伊藤:ヘルウインドちゃんかわいいんだけど』

古『マッカダナー:通報』

古『グッニャグニャ:早い!』


 一瞬、天井を見るセイン。 月明かり。 ここが吹き抜けの場所だ。

 シュリもそれを確認する。 ここが逃走の目的地。 前回は闇雲に逃げたが、ここからの道をある程度マッピングする。


ラ『ryouhei831:しかし、12人に10Mずつ……最低でも5Mずつか? 60Mなんてどこに隠してんだよシュリwww』

ラ『もっつぁらら:ヒントはシュリの名前よ』

ラ『手裏剣大好き:ちょ、ギルマスなんで知ってるッスか!?』

ラ『ryouhei831:把握したwww』

ラ『もっつぁらら:誰が課金王とあなたを引き合わせたと思ってるのよ。 忘れてたの?』

ラ『手裏剣大好き:そうだったッスうううううう』


 分岐。 片方は平坦で、片方は降り。 ここだ。

 勿論2人は降りの方へ行き、ぞろぞろと後続もついていく。


【†暗黒のガチタンク†:雑魚が何レベつったっけ?】

【ホワイトマジシャンボーイ:220?】

【ウィッパー:は? え、それマジか?】

【山川斎藤重兵衛:わらえねーレベルじゃんか。 こないだの巨大うさぎちゃん90だったよねー】

【クレバー伊藤:レイドのうさぎちゃんか。 あれは大変だった……】

【サイバー太郎:一定時間ごとに来る全範囲攻撃がなー。 まぁこんな山の中なら巨大ボスはないだろ】

【セイン:巨大の方がまだマシだな。 今回の奴らはタンクいないと終わる】

【手裏剣大好き:あのカジキがかわいく見えるッス……】

【ウィッパー:カジキって『カジキ・ザ・グングニル』?】

【手裏剣大好き:そうッスよ】


 分岐を降る。

 1つ、2つ、3つ、4つ。

 マッピングしてみるとわかるのだが、この部分は螺旋を描いているように見える。


【もっつぁらら:でも閣下はクリアしたんでしょう? お1人だったのか、お仲間がいたのかは知らないけれど】


ラ『ryouhei831:ギルマスwww言葉遣いやめろwww』

ラ『ヘルウインド:? 何かおかしい?』

ラ『もっつぁらら:りょうへいあとで覚えてなさいよ。 ヘルちゃんはそのままでいてね』


【セイン:課金王の事でいいんだよな? まぁそうじゃないと連れてきてもらえないしな】

【ウィッパー:つか、もっつぁららさんも閣下スレ民かよ】

【マッカダナー:閣下万歳!】

【グッニャグニャ:早い!】

【もっつぁらら:たまに、だけどね】


ラ『もっつぁらら:コテハンは教えられないけどねぇ……』

ラ『†暗黒のガチタンク†:今なんで蹴った!?』

ラ『もっつぁらら:バラそうとしたからよ。 違う?』

ラ『†暗黒のガチタンク†:なんでわかった!?』


 7つ目の分岐。 反響音から、ここが最後だと察知する2人。

 そこで一度立ち止まる。


「ん、どうしたギルマス。 トイレか?」

「ちげーわ。 けど、行きたい奴いたらいっといてくれ。 そろそろ最深部に着く」


ラ『手裏剣大好き:いないッスか?』

ラ『†暗黒のガチタンク†:俺は大丈夫だ』

ラ『ホワイトマジシャンボーイ:あ、じゃあ行ってくる』

ラ『もっつぁらら:私は平気よ』

ラ『ryouhei831:白魔ってトイレ近いよな』

ラ『手裏剣大好き:若くして頻尿……?』

ラ『ヘルウインド:私も大丈夫』


古『セイン:そんな時間かけるつもりはねーが、結構激戦になると思うから行きたいんなら行っとけよー』

古『クレバー伊藤:デリカシーがないわよ!』

古『サイバー太郎:そうよそうよ! 女性だっているんだわさ!』

古『セイン:きめぇからやめろ。 グニャとマッカーサーは?』


古『クレバー伊藤:だから2人は一応女だと何度言ったら』

古『サイバー太郎:あれ、マッカーサーが反応しない』

古『セイン:トイレいってんじゃね?』


「俺は大丈夫だ」

「俺もー。 大丈夫―」


ラ『ホワイトマジシャンボーイ:頻尿なわけないだろ!』

ラ『†暗黒のガチタンク†:わかってるからそんな怒るなって』


古『グッニャグニャ:ただいまー』

古『マッカダナー:マッカダナーだ!』

古『クレバー伊藤:おせぇ』


「ラジャネーは全員戻ってきたッス」

「うちも大丈夫だ。 さて、と」


 インベントリを操作し、槍を取り出すセイン。 

 とてつもなく細い槍だ。 ともすればすぐに折れてしまいそうな槍。

 銘を『シン・デュン・ソッティーレ』というその槍は、攻撃力が1という武器としては壊滅的性能を誇る。 もっとも、この槍の真価は攻撃力ではない。


「お、ギルマスそれ回避槍じゃん。 そんなん持ってたんだ」

「買ったんだよ。 ここの攻略のためにな。 12Mもするとは思わなかった」

「たっけぇ!」


 回避槍の名の通り、この槍は付与効果として『回避:80%上昇』が付いている。 ステータスとしては表示されない回避率だが、しっかりと内部ステータスとして存在しているのだ。 ただ回避するだけでも回避はできるが、この値が高ければ高い程直撃以外でのダメージを負わなくなる。 勿論格闘家以外だ。


「最初に説明した通り、この下にいくと敵MOBがわんさか湧く。 何度か試したが、パーティメンバー全員いかないと湧かないみたいだ。 だから、踏み込んでイベントが始まって、カウントダウンに入ったら盾持ちは入口で盾構えてくれ。 他のみんなは段階的になって止めてくれると助かる」

「アタシたちは全力で逃げるッス。 舐めてかかると一瞬で死にかねないッスから、全力で頼むッスよ」


 誰かがごくり、と唾を飲み込む。

 恐怖ではない。 どちらかといえば、楽しみなのだ。


 課金王と共に行動する事の多いセインとシュリは、いわば攻略組としても最前線の位置にいる。 PVPなどでの実力がどうかはわからないが、ダンジョンの攻略者としては最高位の位置づけなのだ。

 その2人が、全力で逃げるほどの相手。


 楽しみでないはずがない。 また、それを自分たちで止める事が出来るかもしれないというのは、なんとも甘美な事だ。


「んじゃ、いくぞー」

「応!」













古『サイバー太郎:おいなんだこれ! 気配察知がやばい事になってる!! 全部囲まれてるぞ!!!』

古『セイン:まだ大丈夫だ。 イベント中にカウントが始まるから、10の時点で盾を展開してくれ』

古『サイバー太郎:『サンディーヴァの鳥達』……こいつらが220の雑魚敵か!』



 大広間。 坂から出てきたセイン達を囲う様に、蒼い嵐が渦巻いている。

 気配察知スキルを持つ者だけが、その異様さに怯えている。


 そこに、不思議なあの声が響き渡った。


『おや、今回は随分大所帯じゃないか。 今日はどれだけ持つか楽しみだねぇ』


 男とも、女とも取れない声。 どこか鳥の囀りを連想させる声だ。

 弾かれるようにして上を見上げたのはサイバー太郎。 その目に、蒼い服の女性が映る。


「『エレイン』……ネームドかよ!」

「俺と全く同じのリアクションありがとう。 だがこいつは襲ってこねえ。 次だ」


『クッ、お待ちかねの様だし、それじゃあ始めようか。 十を数えたら、ウチの奴らが襲いに行くよ』


『十』


「盾持ち! 頼んだぞ!」

「任せろ! 『シールドビルド』!」

「『ロックスクード』! 行かせないよー!」

「『ライフアップ』、『ガードアップ』! 更にガードポーションに課金ガードポーション! ガチタンクの意地を見せてやる!」


 サイバー太郎の発動した『シールドビルド』は、白魔法使いやボウガン使い用の小さい盾で発動するスキルだ。 効果は単純で、次に盾で受け止めた攻撃のダメージを4分の1にするというもの。 シンプルな効果故に強力なスキルだ。


 山川斎藤重兵衛の発動した『ロックスクード』は、盾使いという限定職種のみに許されるスキルの1つで、周囲の地形にあった『○○スクード』として発動する。 効果も地形によって左右され、この岩と土ばかりの場所で発動した『ロックスクード』は、雷系の攻撃の無効・盾のその場固定という効果を持っている。


 †暗黒のガチタンク†の発動した『ライフアップ』『ガードアップ』文字通り体力と防御力をアップするものだ。 その増加量は課金ライフポーションや課金ガードポーションに負けるものの、各ポーションと重複が可能なので使われやすい。 今回彼が使ったものは、生産で作る事が出来るガードポーションと課金アイテムのガードポーションの2つだ。


『九』


「2段目は私とウィッパーさんでどうですか?」

「迷ってる暇はなさそうだし、それでいい。 『アイスウィップ』!」

「『ファイアー・ジャグリング』」


 タンクたちの後ろに陣取るのは、もっつぁららとウィッパーだ。

 もっつぁららは『ファイアー・ジャグリング』を発動する。 炎の球を掌の上でジャグリングするスキルで、任意の方向・数を飛ばすことができる。

 ウィッパーの『アイスウィップ』は読んで字の如く。 鞭に触れると凍りつく付与効果を発生させる。


『八』


「りょうへいさん! 3段目頼みます! こぼれ球は俺とマッカーサーで処理します!」

「あー、呼び捨てでいいよ。 おーけーおーけー。 両手剣使いの意地を見せてあげよう」

「マッカダナーだ! ツッコムのめんどくさいから戦闘中は間違えるな!」


 3段目を担当するのはryouhei831だ。 彼は両手剣を逆さに構え、時を待つ。

 その少し後方に構えるのはクレバー伊藤とマッカダナー。 双剣使いの2人は、こぼれてくるであろう敵の処理に努める。


『七』


「ちょーっと隙間あけておいてねー! 巻き込まれたくなかったら!」


 そこから少し離れて、グッニャグニャが巨大なハンマーを構えて仁王立ちしている。

 彼女の広範囲攻撃はフレンドリーファイアを切っていても危ないのだ。 主に足場の問題で。


『六』


「ヘル。 最初はなにを使う? 僕は『グラース・カノン』で行こうと思うんだが」

「とりあえず『ジン・ヴァッセ』をタンクにかける。 範囲は……『ストーム・ストーム』かな」

「こんな地下で!?」

「範囲指定するから大丈夫……。 軸を横に向けるだけ」

「それだと僕が危ないんだけど……」


 ホワイトマジシャンボーイとヘルウインドは6段目だ。 魔法使いである2人は、全体攻撃魔法でもって最終防衛ラインを務める。

 『グラース・カノン』は任意のタイミングで爆発可能な氷結弾を撃ち出す魔法で、その範囲は『コールドヤリ』の3倍にもなる。 更に、純粋な氷というよりは『固める』魔法なので、クールタイムさえ無視すればとても優秀な魔法だ。 そのクールタイムが15分と、かなり長めなのだが。

 『ジン・ヴァッセ』は付与魔法だ。 フレンドリーファイアを起こさない、風の刃の衣を対象者に纏わせる。 効果時間は10分間。 切れ目を狙って掛け直せば延長される。

 『ストーム・ストーム』は風魔法の中でもかなりの広範囲魔法で、その名の通り竜巻を発生させる。 本来の用途としては囲まれた時などに使ったり、他のスキルの詠唱時間を稼ぐために使うのだが、ヘルウインドは竜巻の軸を真横に向ける事で『サンディーヴァの鳥達』をミンチにしようという魂胆だった。


『五』



「2、3,4!」

「あと三つ分岐上がったら、南へ800m直進ッス! その後吹き抜けを上がるッス! 覚えたッスね!? じゃあ先行くッスよ!」

「応!」


 セインとシュリは駆け抜ける。

 課金のスピードポーションも手元にあるが、今はまだ飲まない。 追いつかれそうになった時のための品だからだ。


『四』


 セインに確認を取った後、シュリは加速する。

 腕を後ろに流し、前傾姿勢で、全てを置き去りにする。

 小さな体からでる速度としては正に異様。 装備は全て速度上昇系。 攻撃の必要がないので、苦無や手裏剣にも速度上昇の付与をつけてある。


『三』


 彼女の走った場所の地面が砕ける。 上昇したステータス含め、凡そ900に達しているAgiのなせる業だ。 この速度のまま蹴りを出せば、『ライムストーン・ゴーレム』でも一撃で砕けかねない。


『二』


 エレインの声はどこまで離れても頭に響く。 だからこそ、焦燥を感じる。

 道は真っ直ぐではないのだが、普通なら減速しなければいけないカーブも身体を回転させることで強引に無視して進む。 右手をつき、左手をつき、腕を延ばす勢いでさらに加速している。

 この加速世界を見る事が出来るのは極少数の限られたもの達だけだ。

 極振りをしようにも、様々なテクニックを必要とするこのイリュオンの中で、シュリとあと2人だけがこれを見る事が出来る。


『一』


 全員の緊張が高まる。

 一番緊張しているのはサイバー太郎だ。 彼は1段目に居ながら、全てを把握しているのだから。

 即ち『サンディーヴァの鳥達』の脅威度を。


『零。始めるよ、お前たち!』


 直後、青が溢れだした。


ビッグフットラディッツ lv90


レイドボス。 見た目は超巨大なうさぎだが、本体及び弱点はその口に咥えているニンジン。 検証班によれば、ニンジンの形をした寄生体がうさぎに取りつき、巨大化させているとのこと。

一定時間ごとに高く跳びあがり、衝撃波で全方位を攻撃する。 強制ノックバック。


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