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余の名は課金王  作者: 劇鼠らてこ
課金王と仲間達
14/56

課金王との攻略

ネーミングセンスはこのゲームの運営にいってください!!!!


「でも良かったんスか? バラさないで」



 息を飲むような美しさを誇るこの場所は、『ゼーラーゴの湖』だ。

 その湖岸に、湖の水と似た色を含む白い光が集束する。

 パァ、と輝くその光の中から出てきたのは3つの人影。大中小の並びは、左から課金王、セイン、シュリである。

 今日は、以前約束した『ゼーラーゴの湖』攻略の日なのだ。


「いいだろ別に。あいつ変なとこで勘鋭いから、勝手に気付くと思うぜ」


 

 そう嘯くセインの背中には、新調したのであろう透き通るような青色をした槍が一本、担がれている。


「その槍……なんの素材ッスか? ヤマタノレイク・サーペントの牙?」



 当たりを付けて問うシュリも『ヤマタノレイク・サーペント』から新しい苦無を造りだしていた。名称を『ヤマタノ・苦無』。そのまんまである。

 最も、名称こそふざけたようなものだが性能は折り紙つき。『レイク・サーペント』に噛まれた時に受ける状態異常『出血毒』――検証班の努力でわかった効果からつけられたもの。未だエリクシール以外での解毒方法がわかっていない――を必ず(・・)付与するというステキな苦無である。

 何故か持ち手部分が蛇の皮のような感触で、初めて触った時に悲鳴を上げてしまったのはシュリと武器屋だけの秘密である。

 セインも『ヤマタノレイク・サーペント』から同じドロップを得ていたはずだと思い聞いたというわけだ。


「ん? 違う違う。あれはまだ強化先見つかってないから倉庫だぜ。こいつの色と表面、見覚えないか?」



 答えは出さずにほれほれと槍を見せてくるセイン。そういう当てて見な、みたいな言動をめんどくさいと感じるシュリはすぐに青筋を浮かばせる。


「カジキ・ザ・グングニルの素材であろう。レアドロのようでな、数を倒さぬと中々素材が出てこないのだ」

「そゆことー」



 課金王がフルフェイスだというのによく通る声で答えを言う。ちなみに課金王の武器はいつもの水晶大剣だ。

 このゲーム、Illusi-Onlineでは道中の雑魚敵のドロップというものが基本的には無い。

 稀にアイテムをドロップするものがいて、しかしそれがドロップする確率はボスのドロップ率より格段に低い。アイテムドロップする雑魚敵が全くいないダンジョンの方が多いので、今回『カジキ・ザ・グングニル』がアイテムをドロップするということを知れたのは他プレイヤーへの大きな貢献だったりする。


「名称は『ハタウオノヤリ』。貫通効果と攻撃力も大したもんだが、なにより『出血』の状態異常付与がついてる。ギザギザが刺さったら血が止まらないってことだな」



 『出血』。一定時間毎にHPの最大値が減っていくという状態異常だ。レベルがあがるごとに減少量も上がっていく。プレイヤー側はアイテム『バンソーコー』やエリクシールで治すことができる。


「ほーん。そりゃあ良かったッスね」

「うわ興味無さそー! お前が聞いてきたんだろうが!」



 ぎゃいぎゃいと喧嘩する2人を余所に、課金王はメニューを操作する。開くページは課金アイテム購入画面。使おうが使わなかろうが、毎週購入するのが課金王である。

 耐久ポーション、各種ステータスポーション、ワープ結晶を30個ずつ購入。計7万8千円。

 更にエリクシールとワイドエリクシールを50個ずつ購入する。計8万円。

 総計15万8千円だ。確実に一度に使っていい額ではない。

 ちなみにゲームの1か月の最高課金額――これ以上は課金できませんという額――は、なんと70万。最もそんなに課金できる者はほとんどいないのだが。一応、20歳以下のプレイヤーにはかなり低い制限額が設けられているのは蛇足だろうか。


「……俺の月給の約2分の1が今の一瞬で消えたのかと思うと……」

「アタシのお小遣いの約30倍っすか……いや31倍……」



 何度見ても慣れない。2人の心中はシンクロした。










「んー、なんもないッスねー」



 準備を終えて、いざ探索! と張り切った3人だったが、その湖岸を一周――3分の1は崖になっているのだが――して一度立ち止まった。

 真白の湖岸は綺麗だが、何もないのだ。湖から何か敵が出てくるかとも思ったのだがそれもない。


「やっぱ湖の中なんじゃねーの? それかこの崖の上」

「いや崖の上だったらダンジョン名『ゼーラーゴの湖』じゃないッスよ。崖の上の……やめとくッス」



 崖の上を見上げるセインとシュリ。反対に、課金王はしきりにフルプレートの顎部分をさすりながらシュネクレーヴェの雪山方面を見遣っていた。


「なぁ、2人とも。

 あの山……あぁ、手前にある山だ。何か動いている気はせぬか?」



 言われてその山を見る2人。言われてみれば、動いているように……見えなくもないような、見えるような。


「動いてるかどうかはわかんないッスけど……あの山だけ遠近感が変ッスね。巨大な山がすぐ近くにあるように見えるッス」

「あー、それだそれ。俺もそう思ったわ。遠くの雪山と背丈が同じだから背景っぽく見えてたけど。アレ結構近いな。とりあえず投擲してみる?」



 『ハタウオノヤリ』とは違う、量産品の槍を取り出して構えるセイン。射程はそれなりに長いのだ。


「……まぁ、悩んでいても致し方あるまい。頼むぞ、セイン」

「りょーかい。……すぅ……オオオォオォォオラアアッ!」



 軽い返事とは裏腹に、強い呼気と共に砲弾のような槍が放たれる。それは真直ぐに山へと突き進んでいき――。


 ガィン、という硬い音と共に弾かれた。


「うぇええ!? 量産槍とはいえ結構威力出てるはずなんだが……」

「ただの山なら刺さるはずッスね……ということは……」



 地形であるならば、セインの槍は中ほどまで刺さるほどの威力が出ていた。

 それが弾かれたということは、何か別の硬いものであるということ。


「来るぞ。戦闘準備ぞ!」



 課金王の声と共に、辺り一帯を揺るがす地響きが鳴り始める。

 その唸りの中心は、やはり槍の当たった山。


 セインは槍を構え、シュリは苦無に手を伸ばし、課金王は地に水晶の大剣を突き刺す。

 

 震える山が、その身を浮かした。


「は?」

「で……」

「でかい亀ぞ!」



「オオオオオオオオオオオオォォォォォォオオオ!!」



 呆然とするセイン、言葉が出ないシュリ。そしてどこか嬉しそうな課金王という三者三様を見せる3人の眼前で、巨大な亀が目を覚ました。


魚編に羽でカジキでもよかったんだけど、多分表示されない端末があるのでやめまちた。

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