初デート
楽しんでいただけたら嬉しいです♪
土曜日の夜、亜豆記が遊びに来ていた。
亜豆記と明日の服を選びながらパジャマパーティー。
ウーロン茶をのみながらお菓子をばりばり。
「結衣、あんま食べると太るよ。」
「もう太ってもいいもん。」
「明日はデートだろ。」
「相手悟先輩だしなぁ」
「だから太っても良いと?」
「ん~そういうわけでもないけど…」
「可愛い服着れなくなるよ。」
「それは嫌だ。」
「まぁ、あたしとしてはもう少しくらい肉ついてた方が好みだけどね。」
「きゃぁ」
脇腹をつままれてこそばゆくって笑い転げた。
「よくもやったな」
あたしは反撃して、亜豆記の脇腹をつまんでやった。
はしゃぎまくってじたばたして、落ち着くとまた良い月夜だった。
明るい月の光が怖いくらいで。
あたしたちは二人で外を眺めた。
翌朝、亜豆記は家に帰り、送るついでにあたしも外へでた。
そのまま先輩と待ち合わせの場所へ行く。
5分前についたのに、先輩はもう来ていた。
「待たせました?」
「いや、今来たとこ…」
「何ですか?」
じっと見られてなんだか恥ずかしい。
「いや、私服ってはじめて見たけど、私服も可愛いなって。」
真っ赤になって照れるあたしをみて先輩も照れて…余計に恥ずかしいじゃないか。
映画どれにしようとポスターの前をいったり来たりしながら、上映中一覧を眺めた。
「あれ、なんだろ?」
そこにはHANAとタイトルが書かれていた。
一日1回しか上映してない?
「こんな映画やってたの?出演とか誰も知らないね。どんな映画なんだろう?」
ポスターかチラシを探したがそれもなく、どんな映画かまったく検討もつかない。
それもまた楽しいよねっと、なぜかわからないうちにそれをみることに決定してしまっていた。
映画館に入ると開演前のはずなのに、もう客席はライトが落とされ、足元が見えないくらい暗かった。
動けないので、一番手近な席が2つあいていたので、そこへ先輩と二人座った。
「結構人入ってますね。誰か有名な人の映画なのかな?」
「まぁ、始まればわかるだろ。」
その映画はファンタジーもので、知っている役者さんは誰もでていなかった。
しかし、映像は神秘的で異世界感がとてもリアルで思わず引き込まれた。
それは花の妖精の国のお話。
妖精の国を守っていたはずのシンボル的な花が枯れてしまったところから話は始まった。
妖精王は嘆き、花の代わりになるべく乙女の妖精を選び出し彼女を人柱のように拘束して、妖精の国の安泰を導くみたいな?しかし、その乙女は王子の好きな人で二人は自分達の運命だと、別れることを受け入れ。彼女は花になってしまう。王子は嘆き悲しみ。毎夜彼女のもとに通うそんな悲恋の物語。
結局、最後は王子も悲しみが深すぎて病に倒れそのまま死んでしまい。
彼女を犠牲にしたことを悔やむ王さまの後悔で話は終わってしまった。
なんか、重くて疲れた。暗すぎてデートで見る映画ではなかったな。あたしは好きだったけど。
会場の明かりが付き、先輩をみると先輩もなんだか心配そうにあたしを見ていた。
きっと同じようなこと考えてるな。
あたしたちは愛想笑いをして、面白かったねと心のこもらないありきたりな会話を交わし、映画館を後にした。
外にでると太陽の暖かさにほっとるす。
映画館寒かったんだ。とその時になってはじめて気がついた。
あそこまで冷房聞かせなくてもよかったのにね。
冷えた体を暖める意味もこめて、あたしたちはファミレスに入って暖かい飲み物を飲んでいた。
「なんだか不思議な映画でしたね。悲しかったし。」
「そうか?俺は面白かったけど。あの格闘シーン結構迫力あって面白かった。」
格闘シーン?そんなのなかったけど…
「え?悲恋ものでしょ?そんなシーンありました?」
「悲恋?アドベンチャーだろ?格闘シーンとか戦いのシーン満載だったじゃん。」
あれ?先輩隣にいたよね?
「もしかして、夢とか…」
同じ映画みたつもりで、違う映画をみてたとか…
「あたしがみたのは王子と犠牲なった妖精の女の子の悲恋ものでしたよ」
「俺がみたのは王子が悪と戦うみたいな?王子の剣のふるい方、フェンシングっていうより、剣道っぽくてよかったなぁ」
同じものみたはずなのに、なんでこんなに違う?
不思議に思いながらあたしたちはファミレスをでて、夕方の中央公園をふたりで歩いた。
中央公園はここらでは一番大きな公園で公園のなかにふるい洞窟とかもある。
とても広くて一部は森になっているため、夜は入ってはいけないと言われている。
夕方のまだ早い時間で人も結構歩いている、ジョギングをしている人も何人かいて、いぬの散歩をしている人や、芝生で寝転がってる人など、のどかで良い感じ。
そんな中を歩いていると目の端になにか跳び跳ねるものをみた気がした。
うさぎ?
しかし、跳び跳ねるものが消えた方向は昼でもなんだかほの暗い森の中。
「先輩、うさぎ。」
「うさぎ?誰かが散歩につれてきたのかな?」
「森に入っていったけど。」
あたしは森に向かって走り出していた。
茂みを掻き分けるともうそこは公園ではなくて、木漏れ日がきれいな森の中。
うしろを振り替えると先輩がいない。
あたし夢中で一人ではいってきちゃったか?
前方をみると、わずかに白いふわふわしたものが跳ねていく。
うさぎ?なんか違うような?
あたしはそれをおいかけてどんどん森の深くへ足を踏み入れていった。
なんだか不思議の国のアリスな気分。
きっとあのうさぎは燕尾服を着て、時計もってるな。
そんな想像に一人クスクス笑いながら追いかける。
「こんなとこまできて、危ないですよ。」
ふいにセバスチャンの声が聞こえた気がして立ち止まった。
「セバスチャン?」
「ほら、気をつけないとフェアリーサークルが。」
「フェアリーサークル?」
足元をみると木の根本に小さな輪が光っていた。
それはよくみるとくるくると光を放ちながら回っていた。
「なにこれ」
「それにつかまると違う世界に落ちちゃいますよ。」
「違う世界に落ちる?」
どきっとした。違う世界へ行っちゃう輪っか?」
「今宵も月が明るい。ほら、あちこちにフェアリーサークルが。」
言われてみると、かすかな光がそこら中でくるくると回っている。
「なんかきれいだねぇ」
「そうですね、あれは命の灯ですから。」
「命の?」
「そう、妖精たちの命の灯です。一生に一度だけ妖精はフェアリーサークルを作ることができるんです。」
「あれ作ったら死んじゃうの?」
「死ぬというのは少し違いますが、消えてしまいます。」
なんだかどきどきする。
「セバスチャンはなんでここにいるの?」
「フェアリーサークルを作るために。」
「セバスチャンも消えちゃうの?」
「私は結衣を迎えにきたんです、私が作るフェアリーサークルに入ってくださいますか?」
「それに入ると違う世界へ飛ばされちゃうんだよね?」
「そうですね、でも必ず私がお守りしますから。」
「でも、フェアリーサークル作ったらセバスチャンも消えてしまうんでしょ?どやって守ってくれるの?」
「もともと私の本体は向こうにいるのです。本体の私がお守りしますよ。」
そういうとセバスチャンの体が淡く光り始めた。
「え、いやだ。セバスチャン、消えないで。」
あたしは急に寂しくなって、セバスチャンにてを伸ばした。
ちょうどセバスチャンの輪郭がぼやけて、くるくると回る輪になっていた。
伸ばした手が飲み込まれる。
指先から手首までが消えた。
「うそ…」
呆然とそこで止まってしまったあたしはその輪に引っ張られるように飲み込まれた。
しかし、飲み込まれた先は空高い空中。
「やだ、落ちる~」
子のままいけば地表にぶつかりあたしは粉々に…恐ろしい予想に背筋に冷たい汗が流れていく。
でも、パラシュート部隊みたいで、空中を滑空していくのはちょっと気持ち良い。
なんて言ってる場合じゃない。
「セバスチャン、守ってくれるんでしょ、助けてよ、あたし死んじゃう。」
声を残し、あたしの体はどんどん加速して、地面に向かって落ちていく。
向こうに太陽が上ってくるのが見えた、いきなり世界が明るくなる。
とてもじゃないけど、日本ではなさげ。
どこまでも続く森の緑と湖?緑と青の世界。
空の青とそれを写す湖の青。そして七色の雲。
きれい。こんな状況だけど、とてもきれいだった。
これがあたしの見納めの景色かぁ
まぁきれいだし、良いか。
すでにあたしは諦めていた。
これで生還できたら奇跡だよね。
七色に光る雲の向こうからなにかがこっちへ向かってやってくる。
ばさばさっと突風のような風に巻かれた瞬間あたしはふわりと誰かに抱き抱えられていた。
翼竜?プテラノドン?
「セバスチャン!」
「やぁ結衣、無事にこれてよかった。」
「無事、まぁ無事。かなり無理矢理なご招待だったけど。」
「ごめんごめん、でもなかなかの体験だっただろ。」
セバスチャン…だよね?
そのまま方向転換して、七色の雲に向かって翼竜はあたしとセバスチャンの恐らく本体だろう人をのせて飛び続けた。あたしこれからどうなっちゃうんだろう?
先輩放ってきちゃったけど、どうしてるだろ?とんだ初デートになっちゃった。
先輩ごめんね…
誤字脱字、変換ミスてんこ盛りかもですが、速やかに訂正していきたいと思っておりますので、長い目で見てやってください(>_<)