勘違い
楽しんでいただけたら嬉しいです。
翌日、なんだか夢見も悪くてぼんやりとベッドに起き上がったあたしに向かって爽やかな声が響く
「おはようございます。お嬢様」
執事風の小さなイケメンはにこやかに一礼する。
「おはようございます。えっと…セバスチャンさんでしたっけ。」
「はい、私、セバスチャンです。」
「えっと、セバスチャンさんはどこでお休みに?」
「お嬢様のお隣で寝かせていただきました。」
その言葉にあたしは赤くなった。いくら小さいとは言え、男の人と1つのお布団で寝てしまった。
「お嬢様ってのやめてもらえませんか?あたし結衣って言います。」
「結衣様、良いお名前ですね。では、私からもひとつ、さんはいりませんので、セバスチャンとお呼びください。」
「はぁ、呼び捨てって慣れないんですけど…しかも初対面の人を…まぁ、努力はします。ってか、そんなことよりあなた誰ですか?一体なにしにあたしのとこへ来たんですか?まさかエイリアン…地球人を小人化して侵略を…」
「結衣様は想像力豊かでいらっしゃる。」
想像力でしか実在しなさげな存在がなにをおっしゃる…
「昨日も申し上げましたが、私は花の精、ただの妖精です。」
「そのただの妖精さんはなにか目的があってあたしのとこへ?
で、一応聞きますが、妖精って願いをかなえてくれるとかって特典はないの?」
「なにか叶えてほしいことでもおありなのですか?」
「叶えてほしいって言うわけではないのだけど…勇気がほしい…かな。」
「勇気?」
「卒業式に先輩に告白する勇気が。」
はしっと手を組み、祈るようにセバスチャンを見つめた。
これでサイズが普通の人だったら文句なしのイケメンなのになぁ。
セバスチャンはふっと微笑み、
「わかりました、あなたに勇気をさずけましょう。当日は私もお連れください。」
「はい、よろしくお願いします。」
あたしはいつものように制服に着替え、下へ降りようとして気がついた。
「セバスチャン、朝御飯は?」
「私は花の精、水だけで大丈夫です。」
「じゃぁ、一緒に朝御飯食べにいこう、ミネラルウォーターいれてあげる。」
あたしはセバスチャンに手をさしのべると素直にあたしのての平に乗り、バランスを崩さないためか、方膝をついた格好であたしのてに収まった。
なんだかかっこいいぞ。
あまりゆらさないように気をつけながらしたへおりるとおかあさんのへやへ行き、ドールハウスの食器をいくつか拝借した。
ちいちゃなカップを洗い、冷蔵庫からペットボトルをだして、お水をいれると彼にカップを差し出した。
「これはちょうど良いサイズですね。」
「お母さんが趣味で集めてるドールハウスの食器、ベッドとかもかりてあげるから」
そういうとちょっと残念そうな顔をした。
「一緒に寝る方が暖かいのに。そんなにお嫌ですか?」
「嫁入り前の娘なんですからね、男の人と一緒に寝るのはだめです。ってか、なんだか踏み潰しそうで怖いし。」
いつもの朝御飯、でも今日は一人じゃなくてなんだか楽しい。
「セバスチャンは水だけでいいの?パンとか食べない?」
「私は水だけで結構です。結衣、そろそろ急がないといけないのでは?」
「きゃぁ」
いつもよりゆっくりご飯をたべてしまったので、すでに時間がやばい。
セバスチャンは家にいる?」
「ご一緒してもよろしければ、お連れください。」
家に一人でおいておくのもなんだかかわいそうな気がして、鞄の隅に空間をつくるとそこに入ってるようにいうとちょこんっと鞄に鎮座した。
「いそぐから、酔ったらごめんね。」
あたしは猛ダッシュで学校へ急いだ。急がなくても遅刻はしないんだけど、先輩に会えない。
必死で駆けたかいがあって、今日も先輩に会うことができた。
「おはようございます。」
「おはよう。今日も元気だね。」
「よぅ、今日はうさぎじゃないな。」
「あ、下柳先輩、これ、ハンカチ ありがとうございました。」
「鼻かまなかっただろうな。」
「そんなことしてませんし、ちゃんと洗濯もしました。きれいです。」
「あはは。」
先輩はハンカチを受け取って笑っていた。
学校へ入るとセバスチャンが鞄から顔を出した。
「さっきの人が告白の相手ですか?」
「うん、そう」
「なかなかカッコイイ人ですね。」
「でしょでしょ。優しくて、カッコヨクて。」
「ふむふむ」
「結衣、こんなとこでなに一人で悶えてるの?」
「亜豆記…先輩とちょっとだけどお話できたぁ。今日は良い日だ。」
「そか、良かったな。でもいい加減教室はいらないと先生くるよ?」
「そだね。」
セバスチャンはなにをしているのかおとなしかった。
ってか、いなかった。いつの間にか鞄から抜け出して学校を回っていた。
放課後、いないことに気がついて、放って帰るわけにもいかず探すと中庭の花壇のところにいた。
「なにしてるの、探したよ。」
「ちょっと情報収集を。」
「はぁ、で、ここの花にもあなたみたいな精がいるの?」
「いますが彼らは弱くてあなたの目では見えないと思います。」
「そうなんだ。」
「結衣、こんなとこで独り言?」
亜豆記の声にセバスチャンはそっと花の茎に隠れた。
「え、いや。まぁ最近はちょっと花に愛着が。」
苦しい言い訳だったが亜豆記はそれ以上は追求してはこなかった。
そうこうしてるうちにあっという間に明日はもう卒業式。
「明日だぁどうしよ、お花渡して、告白して、緊張してきたぁ」
「おぉ、ついに明日ですか、では今日は早く休んでお肌の体調も整えないとですね。」
にっこりと笑うセバスチャンにあたしは祈るように言った
「明日大丈夫だよね?あたしに勇気くれるんだよね?」
「そうですねぇ、とりあえず言えなかった時のためにお手紙でもかかれてはいかがですか?手紙くらいなら私がお届けしてもいいですし。」
「そ、そだね。」
手紙かぁ。
あたしはお気に入りの便箋をだし、ペンをとった。
「拝啓大里様…固すぎるな。」
便箋をくしゃくしゃと握りつぶしぽいっとゴミ箱へ放り投げた。
「なんて書こう…好きです!直接的すぎるな。先輩のことずっと見てました…ストーカーかって。ちょっとセバスチャン、どうしよう。」
セバスチャンはおかあさんのところから借りてきたドールハウスの食器で優雅にお茶を楽しんでくつろいでいた。
「もう協力してくれるんじゃないの?」
「私は結衣のバックアップですよ。そういうのは自分で考えないと意味がないでしょ?」
セバスチャンが冷たい…
あたしはつくへに向かい直し必死で何度も書き直しながら手紙を書いた。
結局何度も書き直した末、書けたのは高校へ言っても頑張ってください…告白になってない。
しかし、もう書き直す気力もない。
でも告白のための手紙だし、ともう一枚の紙に大きく好きですと書いた。
封筒にいれ、後ろに小さく自分の名前を書いた。
「できた」
お花と手紙をかわいい紙袋にいれ。明日の準備はできあがり。
今日はゆっくり寝れそう。セバスチャンも借りてきたベッド気に入ったみたいでもう布団に入ってるし。
あたしも寝よう
大きく延びをしてベッドに飛び込んだ。
「先輩、この手紙読んでください。」
差し出した手紙を読んだ先輩はあたしを抱き締めて耳元でささやいた
「うれしいよ、俺も君のこと…」
あたしのこと…どきどき、じりりりり…?
あたしの心臓のおと、やたらとうるさい…
と目が開いた。
耳元でうるさくなる目覚まし時計、
あんたの音か…せっかく良い夢みてたのに。
そして、覚醒。「きゃぁ」
「セバスチャン、なんで起こしてくれなかったのよ。」
慌ただしく準備をする私をみながらセバスチャンが笑う
「とても幸せそうにおやすみだったので、お起こしするのに忍びなくて」
えぇ、確かに良い夢みてました。とても素敵すぎて起きたくなかったけど、でも今日は大事な日なのよぉ
あたしは必死で準備をして、鞄をひっつかみ家を飛び出した。
「おはようございます。」
「おはよう」
今日の予定を思い、恥ずかしさにあっさりと先輩を追い越しながら挨拶だけして、勢いよく通りすぎた。
学校へついて、亜豆記がやってきた。
「もってきた?」
「え?」
「花、この間買ったやつ。それ渡して告白するんでしょ。」
「うん、もって…きてない…忘れた」
あたしは絶望で泣きたくなった。
もうダメだ。
「え?忘れたのか?マジか…取りに帰れば?」
「でも、昼休みまで帰れないよ。どうしよう。卒業式終わっちゃう。昼休みに帰ってたら先輩も帰っちゃう…もうだめだぁ」
「花はあきらめて、後日でもいいじゃん。告白だけしなよ。仕方ないだろ。」
「う、うん…」
がっくりと肩を落とすあたしを亜豆記が慰めてくれるけど、今のあたしに優しい言葉はつらすぎる。
あたしは卒業式の卒業証書を受けとる先輩をみながら落ち込みまくっていた。
なんでこんな肝心な時にポカするかな…
「私が取りにいってきましょうか?」
「セバスチャン、もってこれるの?サイズ的に無理があるんじゃない?」
「花は無理でも、昨日書いた手紙ならもってこれますよ?」
「あ…じゃぁ、お願い。」
お花はまた渡せば良い。もし告白がうまくいけば会う機会もあるだろう、失敗すればあたしからの記念なんていらないだろうし。
そう思いあたしは祈る気持ちでセバスチャンを待った。
しかし、式が終わる頃戻ってきたセバスチャンは手紙を持ってはいなかった。
「やっぱ無理だった?」
「いえ、私からお渡ししてまいりました。」
「え?先輩に?渡しちゃった?」
「はい。ちょうどいらっしゃったので。」
あたしたちの間を通り、先輩が講堂を出ていく。
外では記念撮影やなんやで人がいっぱいだった。
先輩も下級生や同じ卒業生の女の子に囲まれている。
ふと肩を叩かれ振り向くと下柳先輩が照れ臭そうにたっていた。
「手紙読んだ。俺でいいのか?」
「え?」
「お前は大里が好きなんだとおもってたけど、手紙嬉しかった。」
「えぇ…」
ま、まさか…セバスチャン…もしかして。
あたしはセバスチャンの姿を探した。
「俺と付き合う気あるのか?」
「え…あの」
「いや、いいんだ。やっぱ間違ったんだな。そうだと思ったよ。でも手紙はもらっておいても良いか?未練だとは思うけど、俺の記念にしたいんだ。」
「えっと…ご、ごめんなさい。」
「いいさ、わかってたから。でもちょっと喜んじまった。もしかしてって俺、一応アピールしてたつもりだったんだけど、お前大里ばっかみてたもんな。大里に声かけられたら嬉しそうだったし。わかってたんだけど、ちょっと夢みちまった。あっ、健吾ー」
「ふぅ、捕まった。」
先輩の学生服のボタンはもう全部なかった。
「先輩ご卒業おめでとうございます。」
「ありがとう、えっと。ごめん、俺君の名前しらなかった。」
「結衣ちゃん、幸坂結衣ちゃんだろ。」
「あぁ、ごめんね。君の友達、伴野さんだっけ?いる?」
「おい。」
わかってしまった、先輩が好きなのは亜豆記なんだって。
「結衣」
ちょうど亜豆記がこっちへくるところだった。
「下柳先輩、ちょっと。亜豆記、先輩が話があるって。」
「え?結衣?」
先輩と亜豆記を残し、あたしは下柳先輩の腕をひっぱってその場を離れた。
「おい、いいのか?健吾にちゃんと言わなくて。この手紙健吾宛だったんだろ?俺渡してやろうか?」
「いいんです、それ、先輩がいらないなら破っちゃって捨ててください。」
強い口調でいうと下柳先輩はあたしの頭を抱き寄せて胸を貸してくれた。
「強がんなくて良い。泣きたいなら泣けよ。俺も泣く。」
え…俺も泣くって…それはダメでしょ…
「泣いちゃだめです。先輩、あたし、大里先輩がすごく好きでした。でももう過去形です。あたしは今から別バージョンになります。大丈夫。泣きません。」
「やっぱ女の方が強いな。俺もじゃぁ泣かない。ふられてもあんまりカッコ悪いとこはみせられないしな。」
「先輩はいつからあたしのこと好きになってくれたんですか?」
「ずっと気にはなってたよ。毎朝挨拶だけだけど顔あわせてたら。気になるだろ。」
「作戦的には成功してたんですね。」
「そうだな。確定したのはこの間のうさぎ目のときかな?」
あたしが泣きすぎて目赤くしたまま登校したときか。
「どきっとした。目真っ赤にして、誰が泣かせたんだって、すごく気になった。健吾がだめだったからってわけじゃないけど、俺と付き合ってみる気ないか?」
「え…でもそれじゃぁなんだか先輩に悪いし。」
「俺はあいつを忘れるための気をまぎらわせるためでも嬉しいんだけど。だめか?」
「本当にそれでもいいんですか?あたし当分は大里先輩のこと忘れられないですけど。」
「俺はかまわない、そのうち俺のことをみてくれるかもしれないだろ?このまま別れたくない。」
その気持ちはよくわかる。
あたしは考えて考えて、慎重に返事した。
「じゃぁ、1ヶ月猶予もらえますか?1ヶ月付き合って、あたしが大里先輩のこと忘れられたら。」
「1ヶ月のお試し期間ってことだな、俺はそれで良い。じゃぁ、明日からデートするか。お前どこかいきたいとこあるか?」
結構強引だな。OKしたとたん、お前って…
「お前っていわれるの好きじゃありません、ちゃんと結衣って呼んでください。」
「結衣って呼んで良いのか?じゃぁ、俺も悟で。」
「結衣はどっかいきたいとこあるか?」
「いきたいとこ…」
「ないなら、明日、映画でもみにいかないか?」
「映画?なんの?」
「今やってるの俺も知らないから、調べとく。携帯番号とアドレスとか交換して、夜にでも連絡するから。」
あたしたちは携帯のデータを交換して、その場は別れた。
その後亜豆記と合流した。
「ごめん、結衣。」
「いや、良いって亜豆記が悪いわけじゃないし。で、亜豆記は先輩の告白OKしたの?」
「するわけないじゃん。あたし大里先輩なんてアウトオブ眼中だし。」
「そうなんだ…先輩ふられちゃったのか。」
「それより、結衣は?先輩に告白したのか?」
「できるわけないじゃん、亜豆記に告白するって知ったのに、あたしが告白したってしかたないし。」
「そうだよな。ごめん、無神経だった。」
「いいよ、亜豆記が気にしなくても。あたしは大丈夫。それよりこまったことに下柳先輩と付き合うことになっちゃった。」
「なんでそうなる?」
「なりゆき?」
「そうか、だからそんなにおちこんでないのか?」
「そうなのかな?ちょっと慌ただしくて落ち込んでる暇がなかったって気もするけど。あれよあれよという間に明日デートの約束しちゃったし。」
「そうか、結衣がおちこんでないなら、よかった。」
落ち込んでるけどね…
それよりセバスチャン。
あたしは中庭へ急いだ。きっとあそこ。
案の定セバスチャンは中庭にいた。
「セバスチャン、手紙、一体誰に渡したのよ。」
「結衣が好きな先輩に渡しましたが?」
「あたしが好きなのは大里先輩、あんた下柳先輩に渡したんでしょ。」
「あれ?そういえば2人いましたっけ。私は間違えたのですか?」
「うん、間違ってた。でも間違えてくれて良かったかもしれないけど。間違わなくて渡したとしてもふられるだけだったし。」
「そうなんですか?」
「うん、大里先輩は亜豆記が好きだったんだって。一緒にいたのにあたしじゃなかった。先輩が見てたのは亜豆記だった。」
あたしはその場にしゃがみこんだ。さっきは平気だったのに、目頭が熱い。
やだ、泣く。
そっとハンカチが出てきた。
顔をあげると亜豆記がいた。
「亜豆記…」
「ごめん、一人になりたかったら向こうへいくよ。」
「ううん、一緒にいて。」
亜豆記に肩をかりてあたしは大声で泣いた。
「2年間ずっと好きだったんだ。」
「うん。」
「笑顔が好きだっったんだ。」
「うん。」
「でも先輩が見てたのはあたしじゃなかった。」
「うん。ごめん。」
「亜豆記は謝らなくて良い。あたしは亜豆記も好きだよ。」
「うん、あたしは結衣が一番好きだよ。」
「うん、ありがと。亜豆記ぃ」
あたしは亜豆記に抱きついて思いきり泣いた。
泣きすぎるくらい泣いて、すっきりして家へ帰った。
セバスチャンはずっと申し訳ないを繰り返していたけど、本当に反省しているようには見えなかった。
あたしの初恋はあっさりと玉砕してしまった。
夜になって電話がかかってきた。
「明日、なにみる?」
「先輩、明日あたしはまだ平日授業あるんですけど。」
「そか、ごめん、じゃぁこんどの日曜。いまだとジュラシック・ワールドとか進撃の巨人とかミッションインポッシブルとか?」
「どれもみてみたいけど…」
「ポケモンとかアンパンマンもあるぞ。」
「先輩…」
「いや、間がもたなくて。」
あははっと笑いながらあーでもない、こーでもないと結局どれにするかはきまらず、映画館へ行って決めようということになった。
「とりあえずデートだぁ」
楽しそうに叫ぶ先輩の声になんだかこっちも楽しくなってくる。
「楽しみにしてます。」
結局わたせいなった花、あたしはアクリルケースにいれられたガラスの靴を出す。
夢を叶えるガラスの靴。これを持ってたら王子様が迎えに来てくれる?
でもこれ渡しそこなったら迎えにはきてくれないよね。
でも、まぁこれも失恋記念かなっとセバスチャンが出てきた花の鉢の隣に飾った。
直射日光はまずいからっとカーテンの影に隠すようにした。
「お役にたてませんでしたね。すみません。」
「ううん、セバスチャンもありがと。朝、忘れていったあたしが悪いから、気にしないで。これで良かったんだよ。セバスチャンが渡しまちがえてくれたから、下柳先輩の気持ちもきけたんだし。」
昼間あれだけ泣いたからか、それとも下柳先輩と楽しかったからか、そんなにもう落ち込んではいない。
それどころか初デートが少し楽しみな気がしていた。
誤字脱字、変換ミスてんこ盛りかもですが、速やかに訂正していきたいと思っておりますので、長い目で見てやってください(>_<)