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森の魔女 共通①・クッキー魔女、師匠は大魔女

あるところにとても恐ろしい噂のある魔女が住んでいました。

あくまで噂ですが人を拐い、家に閉じ込めたり

人を喰らうと噂されていました。

魔女の噂は次第に町を震撼させました。


その噂は町だけでは留まらず、貴族、やがては王族の耳にも入りました。

民のために魔女を倒すべく王子は不気味な森へ行くのでした。


王子は従者や白魔道士を引き連れて魔女の隠れ家を見つけ出すのでした―

――

「このクッキー美味しいわね」

ローブを巻いた女は本を読みながらクッキーを食べていた。

女は本に食べ滓が落ちるのも気にせずだらしなくソファに寝そべる。


「ですね」

彼女に同じくクッキーを貪っている長い白髪の男が言葉を返す。


「お前達、よくそんな甘そうなの食えるな」

赤毛の男はクッキーを食べる二人を見てため息をついた。


「甘くはないわよ?」

女はクッキーを赤毛の男に渡そうとする。

だが男はそれを拒否した。

白髪の男が女からクッキーを取る。

その直後赤毛の男の口元に食べろと言わんばかりに押しつけた。

赤毛の男は仕方なくクッキーを口に入れた。


「ああ、甘くはないなむしろしょっぱい」

男は嫌そうに感想を言った。

クッキーには砂糖ではなく塩が入っていたのだ。


「塩クッキーだもの」

「普通クッキーは甘いだろ。もはや固いパンじゃねえか」

「クッキーは必ず甘いと言う偏見は困りますね」

「例えにパンはないわー」

「塩と砂糖を間違えた言い訳じゃないのか?」

「レシピなんて飾りです凡人にはそれがわからんのですよ」


下らない会話をしていた最中、家の近くから会話が聞こえて来る。


「何だか外が騒がしいですね」

窓際にいた男が、長い髪をさらりと靡かせて言う。


「客でも来たんじゃね」

短髪の男が長髪の男とローブの女に言う。


「こんなところにあなた意外の客人なんて珍しいわね」

「まるでオレが変わり者みたいな言い方だな」


「事実ですよ」

「そうねここに住んでいる私もね」


「言えてらあ」

―――――――――――

一方その頃、森の中心部に、赤い屋根の家があった。

いかにも魔女らしく屋根の上を蝙蝠が飛び交っていた。

家の周りに木はなく、庭が人工的に作られていた。


「隠れていないがこの家だな…」

王子は魔女の住まいを見て従者に確認をする。


「そのようですね」

辺りには白い骨が散らばっていた。


「なんつーかベタな雰囲気…

あれ?なんか張り紙がありますよ」


「『森から出ていけ魔女』『早く消えろ疫病神』だそうです」

「うわ…魔女さん嫌われてますね」


「噂の真偽は把握出来ていないが、民が怯えているのではな」

「取り合えず会えばわかるっしょたのもー魔女よ覚悟!」

白魔道士は勢いよく扉を開けた。


「あ"?」

「なんだこらやんのかワレェ」

すると屋内で待ち構えていた男二人が王子一行を震え上がらせた。


「おっと…いけない、私は知的でクールなキャラだというのに。

こんな不良と同じ言葉を使ってしまった」

「恥的の間違いだろこの露出狂」

「絵もないのに露出具合なんてわかるわけないわ」

「「ですよねー」」


「落ち着こう話せばわかる!」

「調子に乗りましたすいませーん!」

王子と白魔道士が土下座をして謝っている。

あまりの情けなさに三人は立ちつくす男を哀れむ目で見るのだった。


「まあ…泣くな」

「泣いていません」


「貴方は差詰め国民の平和を脅かす魔女を退治しに来た王子ってとこかしら?」

魔女は強そうな男に尋ねる。

「いいえ私は従者です」

「俺が王子だ!」

魔女はどちらが王子なのかは知っていたが、あまりの残念さにまともそうな方が王子であってほしい。と云う願いから敢えて間違えたのである。


「あっそ。で、何しに来たの」

「先ほどそなたが言った通りだ!魔女よ覚悟!」

「!」

王子は白髪の男を魔女と呼んだ。


「まさか…」

従者は王子が変装を見破り、白髪の男が魔女でローブの女はカモフラージュだったという事が起きる何ともありきたりな予想をした。


「ないない。生まれた時から男だし」

「ですよねー」

「つまり王子の目は節穴ということね」

「それは置いておくとして、魔女!覚悟」

「恥を置くなよ」


「待ちなさい、何故私が魔女だって決めつけるの?」

「魔女の家に住んでいるし、魔女みたいな格好しているしこの期に及んで言い逃れはできないぞ!観念しろ魔女」

「何故ここが魔女の家だって決めつけるの?

黒いローブが魔女専用の服なんて誰が決めたの?

そして、もし私が恐ろしい魔女だったら今頃貴方は死んでるわね」

ローブの女が淡々とした口調で王子を捲し立てる。

「それは…」

ローブの女はもっともらしい事を言って王子に納得させた。


「上手く言いくるめられている…」

「まあ私は魔女なんだけどね」

「自分で言うのか!」


先ほどの会話は何だったのだろう。とその場にいる全員が思った。


「うわああああ」

「これは白魔道士の声か!?」


白魔道士の身に何が――――――。

----


つい先程まで王子の傍いたはずの白魔道士が外で叫んでいる。


「どうした白魔道士、魔物でも出たのか!?」

「魔物なんているわけないでしょ」

家を飛び出す王子に続いて魔女も外へ出た。


「虫が出たんです!!」

白魔道士は木を指差しながら騒ぎ立てた。


「あっそう」

拍子抜けした魔女は家の中に戻ろうとする。


「メルティーナさん、メルティーナさん」

賢者が小さな声で魔女の名を呼びながら手招きする。

「なによ」

メルティーナもつられてヒソヒソ声になる。


「あの王子、怪しいことこの上ないのですが」

賢者は目を皿のようにして観察した。


「ただのバカな旅芸人でしょう。何かの練習に巻き込まれたに違いないわ」

メルティーナがキャラメルを食べながら紅茶を飲む。


「まさか、旅芸人が演劇など洒落た真似を?」

賢者は失笑して、鼻で笑った。


「あなた、旅芸人に恨みでもあるの?」

聞いておいて、興味がないといいながらクッキーをむさぼるメルティーナに、返す言葉がない。


「微塵もないですが、賢者ですから自分意外は馬鹿だと思っているだけです」

ヤケになり、投げ槍な返答をする賢者。


「正直ね。でも敵意や嫌味をむき出しにして相手を不快に思わせるのは、あまり賢いとは言えないと思うわ」

メルティーナはあくまで冷静に、お茶を飲む。


「はあ…やはりお兄さんとは似ていませんね」


―――――



「やっほ~元気してたぁ~?」

「コスネィル」

相変わらずけばけばしい白のファッションだ。

それにキツい香水は入る前から漂っていた。


「誰そのチンチクリン」

「ティーコレットの王子たる者に、なんと無礼な!!」

「ハイハイ黙って」

コスネィルが指で王子の額を弾くと、事前に開いていたドアからぶっ飛んだ。


相変わらずわけのわからない馬鹿力。


「誰だコイツは」

「戦士は初対面だったわね」

「彼はコスネィル=パルフュエ、あれでもメイキシェナ公国の公爵の長男ですよ」

賢者が代わりに開設する。


「まじでええええええ!!?」

「ええええええ!!?」

戦士と王子は同じ反応、王子の側近等も目を見開いていた。


「公国の公爵長男ってことは王子なのかよ…後継ぎがこんなとこきてる場合かよ」

「悪かったわねこんなところで」


「後継ぎは正統な後継者の姉がなるからダイジョウブ~」

「メイキシェナは化粧品を扱う国ですから、女系なんですよ」

「とりあえず安心した」

「意外と細かいこと気にするタイプなのね」


―――


『あの子、魔女最強のマデェールの姪でなんだって~』

『へぇ…だから弟子になれたのね』


魔法使いの暮らす場所で、家族と暮らしていたころ。

規格外にすごい力を持つ、偉大な魔女が私の叔母だった。


魔女といえば彼女、魔道を心得る誰もが知っている。


神出鬼没、長い年月を他者の年を喰らいながら生きる。


人を越えた存在。


『強い魔法を使えるのに薬学を学ぶなんてわたし達に当て付けかしら』



そんな凄い存在が身近にいて、私には良いことなんてなかった。


男ならともかく同じ魔女として比べられるのだ。

期待されることは、私には重荷だった。


だから静かな森で、暮らすことにした。


そんなとき、賢者や戦士が偶然森に訪れてきた。


一期一会、と思っていたが、彼等は不期的に訪ねてくる。


孤独に生きようとしていたが、何度か会う内に、人恋しくなった。



永遠のものは存在しない。

いつまで私がここにいるか、いられるかはわからない。


だけど、彼等とはこれからも良い話相手でいたい。

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