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カエンタケというキノコ

ちょっと変わった書き方のテストというか、練習的な。

地の文が一切なく、全て会話で進行する形式です。

 恐ろしいキノコが存在するそうです。

 月のように白く、天使のように儚く美しい身体で見るものの好奇心を煽る。そして美味でありながら食べたものを例外なく血反吐を撒き散らせ天へと送り出す毒を持つ『死の天使』

 それとは正反対に、炎のように赤く禍々しい身体を持ち、触れるだけで火傷をする。一口でも口に運ぼうものなら全身のありとあらゆる場所を破壊しつくし、身体を悪魔の様な外見に変化させ、どれだけ手を施しても死は免れない、『獄炎の悪魔』

 上記の二つとはまた別に。元々は美味な食用キノコであったが突然変異により太くたくましい肉体を持ち、二本の足で歩きまわり、両手は愚かにも彼らの縄張りに立ち入った者達の血で赤く染まっている、『通称親分』


~ある教授が白板に書いた文章より~



 皆さん、今日はこの案山子屋の講義に参加していただき誠にありがとうございます。本日お話するのはあまりよく知られていないキノコ人という種族について。では、はじめましょうか。


 今日は白板に書いてある、獄炎の悪魔について話をしますよ。


 見た目の特徴は、書いてある通りです。数あるキノコの中でもかなり個性的ですので聞くだけでも想像するのは容易だと思いますが、実際に見たほうがわかりやすくていいと思い資料を用意しました。ケチな学校のせいでカラーコピーが使えなかったので、コンビニで金を払って用意したカラー印刷ですよ。ありがたく思いながら、ページを捲りなさい。貴方方が今見ている写真は、先ほど話したカエンタケと、それに非常によく似た食用のベニナギナタタケというキノコです。どちらがどちらか、わかりますか? わかりませんか。わかりませんよね。実を言うと私にもわかりません。


 BOOO!! BOOOOO!!!


 静かに! 静かに!! 確かに貴方方に教える身でありながらわからないというのは、怒られて当然です。しかし、しかしですね。わからないものはわからないのです。じゃあどうやって見分けるのか? 素晴らしい質問です。あなたの受講者番号は? 124番。よろしい、あとで評価に加点しておいてあげましょう。触ったらいいんです。カエンタケは肉質が固く、ベニナギナタタケは柔らかいそうですよ。実際触ったことはないので、どれ位の硬さかはわかりませんが。

 

 まあともかく、『彼女』と出会ったのは一年前の今日。私は偶に得た休日ということで、山に登ってキノコを探していた時です。あの時は本当危なくて、うっかりそのキノコを別の食用キノコと間違えて素手で採取しようとしていたんです。あの時に彼女に止められていなければ、ひょっとすると私はこの世にいなかったかもしれんません。ええ、本当です。あの時はキノコのことをよく知ったつもりでいましたが、キノコとはとても奥の深い世界で、あの時の私は世界の入り口から一歩入っただけの無知同然の状態だったとよくわかりましたよ。


『彼女』とは誰か? ああ、彼女と言ってもあなた達は見てないからわかりませんね。度々失礼。なんと言えばいいんでしょう。最近街で個性的な格好の人たちをよく見かけるようになりましたよね。彼女たちはキノコの妖精というか、なんというか。説明が難しいですね。要するにキノコという菌類が、どういう理屈か魔法か知りませんがヒトの形を取って、我々人類と意志の疎通が可能になっているのですよ。キノコ人、今のところは女性体しか見たことがないのでキノコ娘でもいいかもしれませんね。

 そんな投げやりな説明をするな? そんな事を言われても、そうとしか言いようがないんですからしょうがないでしょう!


 あー……コホン。失礼、取り乱しました。ともかく、私の言う彼女とは、そのキノコ人の内の一人です。


 私がこれからお話しするのは、獄炎の悪魔ことカエンタケのキノコ人です。名を火群カエン。見た目も言葉遣いも元が元ということでかなり『派手』というか『威圧的』でした。第一声が「おい、そこのオッサン」でしたし。服装はホットパンツにブーツ、へそ出しのシャツにジャケット、あと赤いサングラスで。髪も目も赤くて、おまけに足から頭にかけて炎の刺青が走ってて。振り向いてその姿を見た時には腰を抜かしましたよ。ヤバイ人に目をつけられた、身ぐるみ剥がされてポイされるってね。ところが実際はそうじゃなく、このキノコはカエンタケっていって、危ないから触っちゃダメだぞと。

 まあその後は色々とあって優しい人? ということがわかったので、今でも月に一度は会ってキノコについて話をしますね。どこまでの付き合いかって? それを詮索するのは野暮ですよ。彼女、キツそうな格好してる割にサングラスを取ったらタレ目で可愛らしい顔をしてて、おまけに下着は白の大人しめな物しか持ってない純情派なんて口が裂けても言えません。


 ……あ、しまった。


 今のは聞かなかったことにしておいてくださいね。もしここ以外で喋ったら全員問答無用で単位を落とすことになると思ってくださいよ。やると言ったらやりますからね私は。


 では、今日の講義は短いですがこれでおしまいです。次回はもう少し静かに授業を聞いてくださいね。

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