五話
遅くなってしまってすいません!
期末テストのことをすっかり忘れてました!
これからはハイペース(自分にしては)で行きます!
めざせ、年内完結!
これは、俺が中学二年より前の、唯一覚えている記憶、その断片……。
物心がついた頃、昔住んでいた家の近くの公園で一人の少女と出会った。
当時の俺は人見知りが激しく、母親に公園に遊びに連れて行ってもらっていたが誰も仲のいい友達はいなかった。
その時から能力は目覚めていて、親からは「絶対にお友達の前で使ってはいけない」と言われていたので、無意識に距離をとっていたのかもしれない。
やっと声をかけて遊びだす頃にはもうすぐ帰る時間。
そんな毎日で、もっとみんなと仲良くしたいと思っていた。
そんなとき、その女の子は現れた。
おさげと笑顔の似合う、当時から小さかった俺よりも少し小さい女の子。
少女は俺を一人から救ってくれた。
「ボクたちもまぜて!」
少女は俺に言葉を教えてくれた。友達が増える魔法の言葉を。そして、その言葉をかける勇気も。
その子のおかげで俺は友達ができたし、今では人見知りもなくなった。
たぶん、その少女のことを俺は好きだったと思う。
それは、大人にならないとわからないような、小さな恋心。
「ずっといっしょにあそぼう!」
「うん! これからもいっしょだよ!」
そう、ずっと一緒だったはずだった。
でも、小学校入学を目前に控えたある日。
親の仕事の都合で引っ越すことが決まった。友達とは離れ離れになる、ということだった。
たくさん泣いた。たくさん悲しんだ。
でも現実は変わらなかった。
いつもの遊びに行く時間。
俺はその日、家から出なかった。
悲しかったから。きっと俺と遊べないと知るとあの少女は他の友達と遊ぶと思ったから。
……一人はいやだったから。
でもそんな日はずっとは続かない。
引っ越しの日が近づいて、やっと俺は気付いた。
(やくそく、そうだやくそくをしよう。ぜったい、またあうって、あってまたあそぶって、やくそくを!)
母親といっしょじゃないと遊びには行けないという言いつけを破り、俺は一人で家から出た。
公園までは毎日行ってたし、道も覚えていた。
公園に着くなり、あの女の子を探した。
その子はすぐ見つかった。
いつものおさげで、いつもの笑顔で遊んでいた。
話かけられなかった。今までの、少女と出会う前の俺なら。
でもその日は違った。
あの子に教えてもらった言葉がある。
あの子にもらった勇気がある。
俺は精一杯大きな声で言った。
ボクもまぜて! と。
もう一人ではなかった。みんなが友達だった。
それでも、あの女の子は特別だった。
みんなが帰った後、少女は不安そうな顔でこっちを見ていた。
しばらくここに来なかったから、何かあったのだと思ったのだろう。
俺は正直に話した。
ひっこすんだ、と。
ひっこしをしても、ともだちでいてほしい、またあそんでほしい、と。
少女は驚いたような顔で、それでもいつもの笑顔でうなずいてくれた。
そして、約束をした。
「ぜったい、わすれないでね! わたしもわすれないから!」
「うん! ボク、ぜったいにわすれない!」
と。
家に帰ってから母親にばれてすごく怒られたけど、俺はあの子が笑ってくれて、それがうれしくて、笑った。
それから引っ越すまでの一週間、俺はずっとその女の子と遊んだ。
引っ越しが決まる前みたいに。
前よりももっと仲良くなって。
これからも友達でいるために。
そして、ついに引っ越しの日になった。
最後にちょっとだけ、と両親が公園に行っていいと言ってくれた。
公園に来るまで迎えに行くから、一人で行って公園で待っておいて、と。
俺は走った。一秒でもあの子と長くいるために。
公園に着くと、いつも遊んでいたみんながいた。
驚いた顔をして俺を仲間に入れてくれた。
それからは、遊んだ。
めいっぱい遊んだ。
引っ越してもさみしくないように、みんなの笑顔を焼き付けた。
そのはずだった。
時間になり、親が車で公園まで迎えに来た。
「みんな、またあそぼうね!」
そう言って車に乗り、窓から必死に手を振った。
みんなも手を振ってくれた。
もう、俺は一人ではなかった。友達がいた。
車が走り出し、みんなと離れていく。
みんな追いかけていてくれた。でもだんだんと離れていく。
それでも、あの女の子だけは最後まで追いかけてくれた。
俺は嬉しかった。
でも、それは突然に起こった。
信じられない出来事だった。
車の後ろを、手を振りながら走ってついてくる女の子。
交差点に差し掛かり、そろそろ本当のお別れだと思った。
信号は青だったはずだった。
少女が視界から消えた。
代わりに黒い鉄の塊が映った。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
走っていた車は急停車し、黒い鉄の塊である車はすぐに視界から消えた。
車が通った道を逆に目で追っていくと、何か赤いものが見えた。
よく見るとどこかで見たことがある服だった。さっきまで元気に走っていた少女。
血まみれの姿で道路の真ん中に横たわっていた。
信号無視による、交通事故。
俺は何が起こったかわからなかった。
信じたくなかった。
車を止めた親はすぐに救急車を呼び、少女を病院へ運んだ。救急車の中から、ずっと少女に意識は戻らなかった。
緊急手術室に入ると同時に少女の両親が病院に駆け込んできた。
医者がすぐに怪我の具合を説明する。
声を出して泣いていた。
俺の両親も泣いていた。
俺だけが、黙っていた。
状況を理解していなかった。
それでも、無意識に頬を伝う雫はあった。
数時間後、手術は終わり集中治療室に運ばれた。
そして、手術を担当した医者は言った。
持って今夜だ、と。
泣いていた。
みんな泣いていた。
それを見て、俺は決めた。
何があっても助ける、と。
その日は俺の家族も少女の家族も病院に止まることになった。
そして、その日の夜中三時。
少女の心臓は止まった。
みんなが泣きながら部屋を出ていく。
看護師や医者も両親と話をしながら部屋を出た。
部屋には俺だけ。
覚悟を決めた。
ボクをすくってくれた、このおんなのこを、こんどはぼくがすくう、と。
両親に止められていた、『力』を使って。
「……能力はつどう、……『巻き戻し』……、たいしょうは、この女の子!」
救った。
怪我をする前まで少女の時を巻き戻して、助けた。
だが、救った『代償』は大きかった。少女と遊んだ内容、公園の位置、公園で遊んだ友達、誰一人思い出せなかった。そして、女の子の顔も。
目の前にあるのに、わからない。
ちゃんといきをしている。せいこうしたんだ!
そう思った瞬間、意識は途切れた。
次に目を覚ました時、何をしたかは覚えていたが、誰としたか、どこでそれをしたのか、そういうことはすべて忘れていた。……少女のことだけではなく、今まで自分が体験してきたことすべて。
誤字脱字や、ここおかしいぞ?と思う点がありましたら遠慮なくどうぞ!